雄大な浅間山を背にしなの鉄道の電車が往く。
かつての信越線が碓氷峠で分断されてしなの鉄道に替わったのは
長野オリンピックの頃だったろうか。
新幹線が開通し、長野・東京間のアクセスは便利にはなったが
浅間山の雄姿を眺めたり、ホームに飛び降りて釜めしを買ったりする
旅の楽しみは遠い昔話になってしまった。
どっかりと野にイーゼルを据えて浅間山を描く。
大自然の空気と山の威圧観を肌で感じながらcanvasに向かう。
東京からアトリエを移したのもこのためだった。
絵に自然の息吹を吹き込むために。
文人墨客も好む軽井沢、多くの画家たちが浅間山を描いたことだろう。
私にとっても浅間は少年期から見慣れた心の山だ。
これまで何点描いてきたか、定かではないが
「浅間百景」「信濃春秋」の個展を重ねて発表してきた。
しなの鉄道の電車を入れた浅間の絵の評価は悲喜こもごも
「電車がなければ買いたい。」と云う人。
「いろんな人の人生を運ぶ電車がいい。」と云う人。
ローカル線の電車が走る風情に趣きを感じて描いた作だから
「電車を消します。」とは言えなかった。
(画像:「しなの鉄道」F20 油彩・canvas/東京都・K氏蔵)