大島康紀☆雪月花

Artist COKY.OSHIMA
Painting,Drawing
Arts & Essay

青春の一頁

2015-11-02 | Essay
悠然と泳ぐ深海の鮫を描いた青い絵
二十代半ばの作、当時グラフィックデザイナー、イラストレーターの仕事を生業としていた頃、
新宿の外れに小さなアトリエを構えてポスターやカレンダーの仕事に勤しんでいた。
注文仕事に追われる中で唯一描き上げた依頼のない自分仕事。
我が心情は自由に大海を泳ぐ魚のイメージと重なり
シュールリアリズムの影響を受けながら好んで描いたものだった。

この青い鮫の絵が先日手元に帰って来た。
所蔵していただいていた恩人が山のアトリエに絵を届けに訪ねてくださった。
当時クライアントとしてお世話になっていた服部さんとはプライベートのおつきあいもあって
夜の町にもしばしば繰り出した記憶がある。
しばらく疎遠になっていた交流もNetのおかげで再会が叶い昔の話に花を咲かせた。
服部さんがこの絵は作者の元に置いた方が良いだろうというのだ。
絵が邪魔になりましたか、なんてうそぶきながら
数十年の歳月を越えて再会した作は傷一つなく
額装されたまま大事に持っていてくれたのだと思うと嬉しかった。
君の原点でもあるよね。
服部さんの言葉が心に響いた。





やがて、デザインの仕事から徐々に遠ざかり
油絵の心象風景などを中心に描く画家としての一本道を歩いてきた。
画風やモチーフは時代とともに移っても
心の底の理想の世界を追い求めて描く画家であり続けたいと願うばかりだ。