桜花大樹(oil/canvas s12)N氏蔵
ある年の個展の初日、会場に入るとNさんご夫妻が待っていてくれた。
いつも個展の案内を楽しみにしていてくださり
奥さまのお気に入りの作をお買い上げいただいた。
早春の枯れ野に花を咲かせる桜の木に魅せられて・・・などとお話にも花が咲いた。
その奥さまが数年前に亡くなられ縁が途切れてしまうかと思いきや
ご主人が引き継いで懇意にしていただいてきた。
そして昨日、ご主人の訃報を知った。
いつも見ない地方紙のお悔やみ欄にNさんの名前があった。
葬儀の会場に駆け付けた時はすでに告別式が済んだ後だった。
喪主の長女さんにお会いすることができ、遅ればせながらお焼香もさせてもらうことができた。
Nさんのお宅には何度かお訪ねしたこともあり
玄関、居間、客間どの部屋にもわが愚作が飾ってあった。
とてもお世話になった恩人なのである。
桜の絵、素敵よね。
個展会場の絵の前で頬を染めながら語っていた奥さまの笑顔が思い浮かぶ。
浅間山麓の山中にアトリエを移したり
「桜のオオシマ」といわれるようになったのもNさんのおかげだと
心より感謝して、ご冥福を祈ります。(合掌)