こんな夢をみた。
休日の早朝、目が覚めた僕は二階の自室から、一階の居間に降りると甥っ子の祥一郎がテーブルに向かって座っていた。
小五から不登校になり、中学は一度も通うことなく卒業し、今年で二十一になる。
そんな事もあってか、折り合いの悪くなった祥一郎の母親である僕の姉は、祥一郎を残して家を出て行き行方不明になってから五年になる。
祥一郎は部屋に閉じこもってはゲームとテレビで一日を過ごしている。
過去に一度だけ知り合いのいるラーメン屋にアルバイトで働きに出た事があったが、二月と持たずに元の生活に戻っていた。
そんな祥一郎が珍しく居間に降りてきて来ていた。
「どうした?」
「おう、叔父さんか。小説を書いているんだよ。小説家になろうに投稿しようと思って」
見てみるとノートにボールペンで何か書いていた。
基本、小学校も満足に卒業していないので、平仮名ばっかりで書いている文字も汚い。
「とりあえず、下書きを書いているんだ」
そう言って祥一郎はノートを僕に見せた。
最初に目に入ってきたのはその小説のタイトルである。
「スナック ふぃんふぃん」
「……なかなか渋いタイトルだな。ところで祥一郎はスナックに行った事があるのか?」
「アルバイトに言ってた時に、店長が連れて行ってくれたんだよ」
「そうか……で、どんな話なんだ?」
「異世界でスナックを開店する主人公と、店にやってくる異世界住人のお客さんとの鮮烈なるバトル?」
祥一郎は真面目な顔でそう言った。
「もうそんな話はあるんじゃないか? で、鮮烈なるバトルなんだ。交流じゃなくて」
「今年二十歳と言い張るエルフのチーママとの世代間バトルぽいのとか」
「まぁ、エルフだからいいだろ?」
「正確は良い、女ドワーフの新人さんへのチェンジの応酬とか」
「チェンジとか、もうスナックのシステムじゃないだろ」
「おお、勇者よ。死んでしまうとはなさけない」
「そもそもスナックの業務じゃないし」
「閉店間際のチークダンスの相手はオーガのママさん」
「モンスターじゃん」
他にもいろいろと細々としたアイディアを書きためているようだけど、僕はある事に気が付いた。
「とりあえず、ストーリーラインを考えないと」
僕は祥一郎に言った。
ストーリーライン十ヶ条
・異界に辿り着く(自分の意志、もしくは他人の意志)
・異界に定住し、生活するための行動をする
・異界の住人相手にスナックを経営することにする 酒場はあっても女性が会話の相手をするシステムがない?あっても、性的な意味合いが強くなるので、それはNG.
・こちらの世界のものを持ち込む(カラオケ・酒・テレビ・DVDなど)
・バトル
・以外と繁盛
・利権を求めて妨害が入る
・抗争
・客も見方にして総力戦
・勝利し、閉店間際のチークダンス(曲はメリージェーン)
そんな事を書いた紙を祥一郎に渡すと、彼は言った。
「これで印税がっぽりだ!!」
僕は心の中で無理だろうと思った。
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