奥山舎 オウザンシャ

寺内はキリスト教とCharles Dickensの独立研究者。専門分野だけでなく広く社会問題に関心があります。

『キリスト教の発生――イエスを超え、モーセを超え、神をも超えて』

2025年02月15日 | 日記
『キリスト教の発生――イエスを超え、モーセを超え、神をも超えて』(奥山舎(オウザンシャ)、新装版、B5判(182×257)、282頁、ペーパーバック)
JANコード1920016012004 ISBN978-4-9910569-3-2 
売価 本体1,200円(税込)+送料200円=1,400円
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 著者寺内は本書で大要次の主張をしている。1.聖書で「神」は「天地万物」創造の「全能の神」と記されたが(創1・1-2・1、17・1)、「神」の実像はユダヤの民族神である(29-30頁)。 2.「律法」とは通例旧約聖書の最初の「5書」、つまり「モーセ5書」(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の5書を指す)をいい、モーセがシナイ山で「神」から授かったとされる掟である(13頁)。「律法」がイスラエル社会で絶対的な掟と定められるのは紀元前444年頃である(19頁)。以後イスラエル人は「律法」に呪縛されて存立し、紀元後66年、ローマ帝国の一属国でしかないイスラエルが、神の救いを信じて、律法を冒す世界の覇者たるローマ帝国に戦いを挑み(第1次ユダヤ戦争)、後70年惨敗。後132年再蜂起(第2次ユダヤ戦争)、135年大敗、ヘブライ人(前538年のバビロン捕囚解放後「ユダヤ人」)は亡国する。彼らが全能神と仰いだ「神」は民族神にすぎなかったのだ(19、29-30、164、172-190頁)。3.イエスは後30年ごろ磔刑死する。直後にイエスの弟子たちが原始キリスト教会(初代教会)を立ち上げ、ペテロやイエスの弟ヤコブらがヘレニスト信徒に転生、ユダヤ教徒パウロも回心しヘレニスト信徒に。前48年ごろ彼らは教会会議を開き、神が授け、モーセが受領し、イエスが維持した「律法」を廃棄する(13、21、23-28、207-216頁)。彼らはイエスを超え、モーセを超え、神をも超えたのだ。そして第一次ユダヤ戦争勃発(後66年)直前に彼らはローマ社会へ脱出し、激しい迫害に晒されながらもイエスの名を広め、392年、キリスト教は国教の地位を得る。つまり、ヘレニズムがヘブライズムを生んだのだ。これにより、ヨーロッパ思想の2大源流、すなわち物質界を代表する「ヘレニズム(ギリシャ精神・思想)」(Helenism)と精神界を代表する「ヘブライズム(ヘブライ精神・思想)」(Hebraism)とが屹立することになる(11、13-31頁)。4.ヤハウェ信仰は、イスラエル民族の祖・アブラハム時代(前1800/前1700年頃)から紀元前586年の、新バビロニア帝国によるユダ王国征服に至るまでの間、イスラエル社会で定まっていない。これが定まるのはバビロン捕囚時代(前587-前538)後の、前458/450年頃で、バビロン捕囚のユダヤ人の「筆頭祭司」エズラと、やはりバビロン捕囚でペルシア・スサの宮廷「献酌官」のネヘミヤとがエルサレムに一時帰還した後のことである(19、30、43-62、90-91頁)。5.律法、終末、メシアはすべて”空(くう)なり”の感あり。すなわち律法は後48年頃キリスト教徒に廃棄されたし(のち再び採用)、終末(この世の終わり)は来ていないし、終末とともに来るとされたメシアも到来していない(72-102、207-216頁)。6.マカバイ戦争(前166-141)は祭司のマカバイ(ハスモン)家が主導した対シリア独立戦争である。戦中の前150年ごろハスモン家の一員・ハシディームはパリサイ派とエッセネ派に分裂する(19-20頁)。前者は後年、ユダヤ戦争に突入して壊滅するのに対し、後者の筋からはイエスが現れ、弟子たちがキリスト教を開き、ヘブライズムの源流となる。有か無かの分岐点、それがマカバイ戦争である(130-139、154-164頁)。


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著者紹介
 寺内孝は定時制高校の出身でありますが、大学・大学院を了え、著書・論文執筆で世界的業績を上げています。homepage:< https://tera-u-chi.sakura.ne.jp/index2writings.html >をご参照ください。


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