私たちを乗せたエレベーターは目的の階で止まりました。
シーンと静まり返った廊下。他に人は見当たりません。
廊下中央には『中央放射線部受付』があり、二人のスタッフが待ち受けていました。
どんぐり母ちゃんの左腕には、個人を認証するリストバンドが装着されてます。
リストバンドには患者の識別番号とバーコードが印字され、
小さなセンサーのようなもので読み取れるようになってます。
(入院から退院するまでの間、治療、検査、点滴、薬、体温、
血圧、等々、全てが認証番号で管理されます)
受付では口頭で自分の名前を伝えた後、リストバンドを提示しました。
万が一同姓同名の方がいた場合の誤認を防ぐ為です。
この事はどの場所においても徹底していました。
受付の横には、幾つもの長椅子が用意され、
家族が待機できるように部屋も用意されています。
どんぐり父ちゃんも、ここから先は行けません。ここで待つ事になります。
『母ちゃん、あの事シッカリ覚えたか?』
『大丈夫!シッカリ覚えてます』
※読者の皆さまの中には、お気付きの方もいらっしゃると思いますが
今日はまだ秘密です。
私も父ちゃんも、お互い心の準備はしておりましたが、見送られるよりも、
見送る父ちゃんの方が一番辛いのを分かっておりました。
私が感傷的になってはいけない。ここは敢えて明るく振舞いました。
***********************
広い廊下を進んだ先が『中央放射線治療室』です。
大きなドアが開くと同時に、目の前には主治医と多くの医療スタッフが
私の到着を待っていました。
手術台は踏み台を使わないと上がれないほどの高さがあります。
『寒いッ』カゼ引いたらどうしよう・・・。
なのに・・・たった一枚身を隠してた手術着をまたもや開かされ
胸のあたりに何本もの線をつながれました。
まるで、たこ足配線のよう・・・。
お願いだからヨダレとか汗水たらさないでね。感電死しちゃうから・・・。
心底そう思いました。
『どんぐりさん、心配しなくても大丈夫です。
喉への管は麻酔が効いてから通します。眠っている間に終わりますからね』
主治医と麻酔科の医師が、私の緊張をほぐすように軽く手を握ってくれました。
全身麻酔の為、自発呼吸が出来ないので、
麻酔が効いてから喉の奥へ管を通し肺に直接、酸素を送るようです。
しっかりと目隠しをされた後、何人かのスタッフに身体を支えられ、
頭を何かにすっぽり挟み込まれたような・・・そんな感じがしました。
そして右手に鋭い痛みが・・・麻酔の点滴が打たれたようです。
***********************
誰かの声がして、喉に激しい痛みを感じました。
後になって、この時の痛みは麻酔から目覚めると同時に酸素を
送り込んでた管を抜かれた事によるものだと知りました。
(痛みは5日間ぐらい続きました)
『どんぐりさん、どんぐりさん、分かりますか?
手術終わりました。良く頑張りましたね』
ぼんやりとした視界の中に、主治医と麻酔科の医師の顔が見えました。
もうろうとした意識の中で頷いたのは覚えていますが
また眠ってしまったようです。
次に気が付いた時は集中治療室の中でした。
そして私たちが予想してた事がズバリ的中したのです。
続く。
シーンと静まり返った廊下。他に人は見当たりません。
廊下中央には『中央放射線部受付』があり、二人のスタッフが待ち受けていました。
どんぐり母ちゃんの左腕には、個人を認証するリストバンドが装着されてます。
リストバンドには患者の識別番号とバーコードが印字され、
小さなセンサーのようなもので読み取れるようになってます。
(入院から退院するまでの間、治療、検査、点滴、薬、体温、
血圧、等々、全てが認証番号で管理されます)
受付では口頭で自分の名前を伝えた後、リストバンドを提示しました。
万が一同姓同名の方がいた場合の誤認を防ぐ為です。
この事はどの場所においても徹底していました。
受付の横には、幾つもの長椅子が用意され、
家族が待機できるように部屋も用意されています。
どんぐり父ちゃんも、ここから先は行けません。ここで待つ事になります。
『母ちゃん、あの事シッカリ覚えたか?』
『大丈夫!シッカリ覚えてます』
※読者の皆さまの中には、お気付きの方もいらっしゃると思いますが
今日はまだ秘密です。
私も父ちゃんも、お互い心の準備はしておりましたが、見送られるよりも、
見送る父ちゃんの方が一番辛いのを分かっておりました。
私が感傷的になってはいけない。ここは敢えて明るく振舞いました。
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広い廊下を進んだ先が『中央放射線治療室』です。
大きなドアが開くと同時に、目の前には主治医と多くの医療スタッフが
私の到着を待っていました。
手術台は踏み台を使わないと上がれないほどの高さがあります。
『寒いッ』カゼ引いたらどうしよう・・・。
なのに・・・たった一枚身を隠してた手術着をまたもや開かされ
胸のあたりに何本もの線をつながれました。
まるで、たこ足配線のよう・・・。
お願いだからヨダレとか汗水たらさないでね。感電死しちゃうから・・・。
心底そう思いました。
『どんぐりさん、心配しなくても大丈夫です。
喉への管は麻酔が効いてから通します。眠っている間に終わりますからね』
主治医と麻酔科の医師が、私の緊張をほぐすように軽く手を握ってくれました。
全身麻酔の為、自発呼吸が出来ないので、
麻酔が効いてから喉の奥へ管を通し肺に直接、酸素を送るようです。
しっかりと目隠しをされた後、何人かのスタッフに身体を支えられ、
頭を何かにすっぽり挟み込まれたような・・・そんな感じがしました。
そして右手に鋭い痛みが・・・麻酔の点滴が打たれたようです。
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誰かの声がして、喉に激しい痛みを感じました。
後になって、この時の痛みは麻酔から目覚めると同時に酸素を
送り込んでた管を抜かれた事によるものだと知りました。
(痛みは5日間ぐらい続きました)
『どんぐりさん、どんぐりさん、分かりますか?
手術終わりました。良く頑張りましたね』
ぼんやりとした視界の中に、主治医と麻酔科の医師の顔が見えました。
もうろうとした意識の中で頷いたのは覚えていますが
また眠ってしまったようです。
次に気が付いた時は集中治療室の中でした。
そして私たちが予想してた事がズバリ的中したのです。
続く。