家族会議も終わり、新しい子猫を迎えると決まってから妹や弟たちは大喜びをしました。
祖母は、アカの匂いの付いた座布団では子猫が落ち着かないだろうと、
子猫用の新しい座布団を作り始めました。
そして、父はアカを譲り受けた同僚に今までの経緯を話し、
最後まで世話が出来なかった事を詫びてました。
すると同僚の方は恐縮しながら『オス猫には良く有る事なので気にするな』と
逆に励まされたと言って帰って来ました。
**************************
どんぐりはアカのお墓を作りながら、両親を説得した時の事を想い返していました。
『アカの亡骸は見つからないけど、今度来る子猫がきっとアカの生まれ変わりだから、
アカが引き合わせてくれたんだから、もしこの機会を逃したら、かえってアカは悲しむし』と、
でも、やっぱり少し早く決めすぎたかな・・・
そう思いながらも頭の中は、新しく迎える子猫の事でいっぱいでした。
************************
『コロッ、新しい座布団あげるよ』
どんぐりが持ってきたのは、アカの匂いがタップリ染みついた座布団でした。
半ば強制的に差し出された座布団でしたが、コロは暫くクンクン匂いを確かめたあと、
嫌がるでもなく、そのまま小屋の中にズルズル引きよせて行きました
**************************
長い放浪の旅から戻ったアカでしたが、窓越しに見知らぬ子猫がいるのを見て、
一体なぜ、このような事になってしまったのか、自分がいない間に何があったのか、
半分パニックになっていました。
しかも自分のご飯茶碗は、そのまま外に置き去りにされ、お気に入りの座布団までも
コロの物になっていたからです。
アカの心は怒りに震えていました。
サーッとその場を離れると茂みの中に潜み込み、今まで聞いた事の無いような
激しい唸り声をあげました。
『ぎゃ~ぎゃ~ぎゃ~ッ、ウ~~~ッ、ウ~~~~ッ!!』
半分野性に戻った状態になっていました。
いち早く異変に気付いたのは母でした。『アカが帰って来たッ!』
母はサンダルを引っかけると急いでアカのいる方に駆け寄っていきました。
『アカッ! 母ちゃんだよ、出ておいで、お前の事をずーっと待ってたんだよ。
いっぱい探したんだよ。みんなずーっと心配してたんだからね。
アカッ、頼むから出ておいで。早く顔を見せておくれ・・・』
母は、何度も何度も呼びかけましたがアカは全く応じず、無理に引き出そうとすると
『シャーッ!!』と今にも噛みつきそうな剣幕になっていました。
母が、アカを引き出そうと無理に手を伸ばすと今度は噛みついてきました。
母の手には子猫の匂いが染みついていたのです。
それでも母が必死になってアカを引きよせようとすると、
今度は逃げるようなそぶりを見せ始めました。
こうなったらもう誰も手が付けられません。
オス猫は、自分の敵と思えば例え子猫だろうと襲う場合があるからです。
ましてやアカは長い放浪生活で野性としての本能が芽生え始めていました。
今度は本当に姿を消してしまう事になるかもしれない。
そう思った母は、いったん家に戻ると家族の晩御飯用にと作って置いた、
肉じゃがの肉だけを別皿に取り、頭とはらわたを取った煮干しを添えてアカのいる茂みに
走っていきました。
(テーブルの上には、肉無しのジャガイモと玉ねぎだけが取り残されていました)
その後も、家族が代わる代わる説得に行きましたが、あんなに好きだった父さえも
アカは寄せ付けませんでした。
そのような状態が4~5日続きました。
この先、もし、家族が留守の間に子猫が襲われてしまったら・・・
家族みんなの決断は既に決まっていました。
アカをこのまま見過す事は出来ません。
3年前、初めて家に連れてこられた日、父のジャンバーの胸から顏を出した時の
ふぁふぁとした小さなアカのあどけない顔が、恐れを知らない無垢の瞳が、
つい昨日のように思い出されました。
私と母は、袋一杯の煮干しと、かつお節をもって
子猫を抱えて飼い主の元へ謝罪へ出かけました。
当時の田舎では、子猫はとても重宝がられました。
農家を営んいる家などは、ネズミやモグラの駆除に猫がとても役立っていたのです。
子猫は直ぐに引き取り手が見つかり二日後には新しい家族に引き取られて行きました。
一方、アカは、しばらく家の中をアチコチ嗅ぎまわっていました。
侵入者が去ったと分かった後も、アカの怒りは暫く収まりませんでした。
『まったくもうッ!!あのバカ娘のおかげでおいらは死人扱いにされた。
ばあちゃんは急いでおいら座布団を縫い始め、母ちゃんは新しいご飯茶碗を用意してくれたけど、
庭の隅に盛られてる、あのこんもりとした土の山が目障りだッ!!何とかしてくれッ!!』
やっと落ち着きを取り戻したアカは、ご飯のとき以外は、大の字になりイビキをかきながら、
寝入っていました。
そして、周りも気にせず堂々とオナラをまき散らしていました。
(ネコもオナラをします。俗にいう、すかしっぺというもので、音はしませんがものすごく臭いです)
※60年以上前の事で、画像も無く、皆さまにご覧いただくには説得力のない
拙いブログでしたが、最後までご覧頂きありがとうございました。
祖母は、アカの匂いの付いた座布団では子猫が落ち着かないだろうと、
子猫用の新しい座布団を作り始めました。
そして、父はアカを譲り受けた同僚に今までの経緯を話し、
最後まで世話が出来なかった事を詫びてました。
すると同僚の方は恐縮しながら『オス猫には良く有る事なので気にするな』と
逆に励まされたと言って帰って来ました。
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どんぐりはアカのお墓を作りながら、両親を説得した時の事を想い返していました。
『アカの亡骸は見つからないけど、今度来る子猫がきっとアカの生まれ変わりだから、
アカが引き合わせてくれたんだから、もしこの機会を逃したら、かえってアカは悲しむし』と、
でも、やっぱり少し早く決めすぎたかな・・・
そう思いながらも頭の中は、新しく迎える子猫の事でいっぱいでした。
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『コロッ、新しい座布団あげるよ』
どんぐりが持ってきたのは、アカの匂いがタップリ染みついた座布団でした。
半ば強制的に差し出された座布団でしたが、コロは暫くクンクン匂いを確かめたあと、
嫌がるでもなく、そのまま小屋の中にズルズル引きよせて行きました
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長い放浪の旅から戻ったアカでしたが、窓越しに見知らぬ子猫がいるのを見て、
一体なぜ、このような事になってしまったのか、自分がいない間に何があったのか、
半分パニックになっていました。
しかも自分のご飯茶碗は、そのまま外に置き去りにされ、お気に入りの座布団までも
コロの物になっていたからです。
アカの心は怒りに震えていました。
サーッとその場を離れると茂みの中に潜み込み、今まで聞いた事の無いような
激しい唸り声をあげました。
『ぎゃ~ぎゃ~ぎゃ~ッ、ウ~~~ッ、ウ~~~~ッ!!』
半分野性に戻った状態になっていました。
いち早く異変に気付いたのは母でした。『アカが帰って来たッ!』
母はサンダルを引っかけると急いでアカのいる方に駆け寄っていきました。
『アカッ! 母ちゃんだよ、出ておいで、お前の事をずーっと待ってたんだよ。
いっぱい探したんだよ。みんなずーっと心配してたんだからね。
アカッ、頼むから出ておいで。早く顔を見せておくれ・・・』
母は、何度も何度も呼びかけましたがアカは全く応じず、無理に引き出そうとすると
『シャーッ!!』と今にも噛みつきそうな剣幕になっていました。
母が、アカを引き出そうと無理に手を伸ばすと今度は噛みついてきました。
母の手には子猫の匂いが染みついていたのです。
それでも母が必死になってアカを引きよせようとすると、
今度は逃げるようなそぶりを見せ始めました。
こうなったらもう誰も手が付けられません。
オス猫は、自分の敵と思えば例え子猫だろうと襲う場合があるからです。
ましてやアカは長い放浪生活で野性としての本能が芽生え始めていました。
今度は本当に姿を消してしまう事になるかもしれない。
そう思った母は、いったん家に戻ると家族の晩御飯用にと作って置いた、
肉じゃがの肉だけを別皿に取り、頭とはらわたを取った煮干しを添えてアカのいる茂みに
走っていきました。
(テーブルの上には、肉無しのジャガイモと玉ねぎだけが取り残されていました)
その後も、家族が代わる代わる説得に行きましたが、あんなに好きだった父さえも
アカは寄せ付けませんでした。
そのような状態が4~5日続きました。
この先、もし、家族が留守の間に子猫が襲われてしまったら・・・
家族みんなの決断は既に決まっていました。
アカをこのまま見過す事は出来ません。
3年前、初めて家に連れてこられた日、父のジャンバーの胸から顏を出した時の
ふぁふぁとした小さなアカのあどけない顔が、恐れを知らない無垢の瞳が、
つい昨日のように思い出されました。
私と母は、袋一杯の煮干しと、かつお節をもって
子猫を抱えて飼い主の元へ謝罪へ出かけました。
当時の田舎では、子猫はとても重宝がられました。
農家を営んいる家などは、ネズミやモグラの駆除に猫がとても役立っていたのです。
子猫は直ぐに引き取り手が見つかり二日後には新しい家族に引き取られて行きました。
一方、アカは、しばらく家の中をアチコチ嗅ぎまわっていました。
侵入者が去ったと分かった後も、アカの怒りは暫く収まりませんでした。
『まったくもうッ!!あのバカ娘のおかげでおいらは死人扱いにされた。
ばあちゃんは急いでおいら座布団を縫い始め、母ちゃんは新しいご飯茶碗を用意してくれたけど、
庭の隅に盛られてる、あのこんもりとした土の山が目障りだッ!!何とかしてくれッ!!』
やっと落ち着きを取り戻したアカは、ご飯のとき以外は、大の字になりイビキをかきながら、
寝入っていました。
そして、周りも気にせず堂々とオナラをまき散らしていました。
(ネコもオナラをします。俗にいう、すかしっぺというもので、音はしませんがものすごく臭いです)
※60年以上前の事で、画像も無く、皆さまにご覧いただくには説得力のない
拙いブログでしたが、最後までご覧頂きありがとうございました。