何年振りだろうか。
11月で20歳になる。
木馬は、40年以上前のお正月に初売りで娘に買ったものである。
初売りに木馬というのも……。
2人の子どもたちが工夫を凝らして一緒に遊んだ木馬。
この木馬にもストーリーがある。
夫の友人に息子が生まれた時、もう子どもたちも大きくなったから木馬をその友人に「あげる」と夫が言った。
その夜、私はお風呂に入りながらさびしくなって急に涙が溢れてきた。
私の思い入れのぎっしり詰まった木馬だったから。
初売りに夫と街まで出かけて買ったことや子どもたちの良い遊び相手であった木馬だったから。
思い入れのない?夫の言葉にとても悲しかった。
木馬をどうしても手放したくなかった私は、夫に交渉した。
一度「あげる」と言った約束は重い。
夫の友人には籐蔓でできた新しい木馬をプレゼントすることにしてことなきを得た。
しばらく私の部屋に置いた木馬。
息子が結婚をし、ハルが生まれた時に我が家から息子の家へと出かけて行った。
そこで白木の木馬はペイントされた。
ハルが3歳の頃に息子は離婚。
木馬はそのままハルの元で暮らした。
木馬は家庭の事情で何度か引っ越しをした。
漸く落ち着いたハルと木馬。
ハルが中学生の頃に木馬を返してくれるように言うと「木馬に腰掛けてると落ち着くから」の言葉に、要らなくなるまで貸しておくことにした。
ついにその約束の日が来た。
ピカピカに磨かれて大事に使われていた事がわかる木馬がハルの左手に抱えられ我が家に帰って来たのだ。
子どもの頃のアルバムを見たりして我が家で過ごし、ハルは帰って行った。
木馬を私の部屋に連れてきた。
どこから見ても可愛い💕
なんだかとてもうれしい気分にさせてくれる木馬に
見るたびにニコッと微笑んでしまう私。
長いこと旅をしてようやく戻ってきた木馬にはハルの命が宿っているようでなんともうれしい。