チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「モーツァルトのレクイエム(モツレク)の祖先を尋ねて」

2010年12月05日 00時49分32秒 | 説くクラ音ばサラサーデまで(クラ音全般
鳥居坂や麻布十番方面から家に戻るときは、
暗闇坂を登って一本松を通るのだが、毎年12月になると、
年末に猟銃自殺した俳優田宮二郎のことを思い起こす。
当時、フジTVで「白い巨塔」が放映中で、役の上でも、
自分の得意分野である胃の噴門部癌で死ぬというもので、
最終回で財前=田宮の遺体がストレッチャーで運ばれる場面には、
カール・ベーム&ヴィーン・フィルハーモーニカーによる
モツレクの「ラクリモーサ(涙の日)」がBGMに採られてた。
あと2回で放送が終わりになる昭和53年12月28日、
43歳の田宮は妻子を青山のマンションに住まわせ、
一本松の自宅(現在、元麻布ヒルズが建ってる近く)で
自殺したのである。どんな縺れ苦があったのかは不明である。

さて、
そのモーツァルトは1791年の12月5日の1時頃に35歳で死んだ。
死因は解ってない。上記「涙の日」の8小節までの声部のみ
書き込んだところまでが絶筆とされてる。ただし、
その部分が最後に作られたというわけではない。
それはさておき、
モーツァルトの最後の作品にして未完成に終わった
"Requiem(レクィエム=安息)"の諸曲は、
イントロイトゥス(入祭唱)第1曲の、いわゆる「レクィエム」である。
弦の伴奏に乗って、ファゴットが、そしてその5度上をバセット・ホルンが、
【ラ>♯ソ<ラ<シ<ド>シ】
という主要動機を吹いて開始される。
この6音のうしろ4音を動機として、
弦の伴奏に乗ってファゴットが吹き始めるのが、
チャイコフスキーの"Symphonie Pathetique(悲愴交響曲)"である。
***♪[ラ<シ│<ドー・>シー・・ーー]、[シ<ド│<レー・>ドー・・ーー]♪
が、この動機はさらに遡ることができる。

その前に、
"楽聖"ベートーヴェンもこの動機を自作に採り入れてる。
「交響曲第3番」="Sinfonia Eroica(英雄交響曲)"である。
その第1楽章。第1主題でもなく第2主題でもなく、
展開部の途中と結尾部の途中に、浸潤なく現れる。
***♪【ラー・>♯ソー│<ラー・ー<シ・<ドー、│
   >シー】・<ミー>♯レー│<ミー・ー>レ・>ド>シ、│>ラー♪
(この実質ホ短調次いで、4度上げてイ短調で繰り返される。
結尾部ではヘ短調で吹かれ、変ホ短調で繰り返される)

それから、
ベートーヴェンと少なからぬ関係があったハイドンについて。
Hob.(ホーボーケン番号)XXII/2(22-2)と整理されてるミサは、
4声部とコンティヌオ(通奏低音)で書かれてる。
[Adagio、2/2拍子、1♭(ニ短調)]
***♪【ラ(Ky-)ーーー・ーーーー│ーーーー・・ラ(ri-)ーーー│
    ラ(e)ーーー・・>♯ソ(e-)ーーー│<ラ(lei-)ーーー・・<シーーーー│
    <ド(son)ーーー・・ド(e-)ーーー│>シ(lei)ーーー・・ーー】>ラー♪
とバスが歌い出す。そこにテノールが4小節めから5度上のカノンをかぶせる。
***♪●●●●・・●●●●(3小節全休)│
   ミ(Ky-)ーーー・・ーーーー│ーーーー・・ミ(ri-)ーーー│ミ(e)ーーー・・>♯レ(e-)ーーー│
   <ミ(lei-ーーー・・<♯ファーーー│<ソ(son)ーーー・・ソ(e-)ーーー♪
モツレクはまるでこれを切り絵のようにして切り取ったように重なる。つまり、
まったくおんなじだった、ということになる。が、
いかに「5度のカノン」が常套なフーガだったとはいえ、
1768年に作曲されて行方知れずになってたのが1982年に発見された、
というこのハイドンのミサ曲の断片は、かなり疑わしい。このミサは、
キリエとグローリアの途中までが見つかった、ということになってるのである。
タイトルは"Sunt bona mixta malis"というなのだそうであるが、これは
アンジェリーナ・ジョリーが素肌にジョリジョリと彫り入れそうなラテン語の諺である
"Sunt bona mixta malis, sunt mala mixta bonis"
(スント・ボナ・ミクスタ・マリース、スント・マラ・ミクスタ・ボニース)
「悪しきことに混ざって善きことあり、善きことに混ざって悪しきことあり」
(の前半分)というのもまた、胡散臭い。

ともあれ、
ベートーヴェンがある意味手本にしてたヘンデルの作品には、
確かにこの【動機】が使われてる。1737年、
ドイツから乗り込んできたハノーファー朝
第2代英国国王ジョージ2世の妃キャロライン、
Wilhelmina Charlotte Caroline of Ansbach(1683-1737)
の死に際して委嘱されて作曲した
"Funeral Anthem for Queen Caroline"
(フューネラル・アンテム・フォー・クウィーン・キャロライン)
「キャロライン王妃を悼む葬送歌」、HWV264である。
[Larghetto、4/4拍子、2♭(ト短調)]
***♪【ラ(The)ー・ーー│ラ(way)ー・ーー・・>♯ソ(of)ー・ーー│
    <ラ(Zion)ー・ーー・・<シ(do)ー・ーー│
    <ド(mourn)ー・ーー・・ーー・ーー│
    >シー・ーー・・ーー・ーー】│
    >ラー・ーー・・ーー・ーー│ーー・ーー♪
とアルトが歌い出す。

ヘンデルといえばタメドシなバッハである。
そのカンタータのBWV113、
"Herr Jesu Christ, du ho(ウムラオト)chstes Gut"
(ヘル・イェズ・クリスト、ドゥ・ヘヒステス・グート)
「(邦題)主、イエス・キリスト、汝、こよなき宝」
とBWV131、
"Aus der Tiefen rufe ich, Herr, zu dir"
(アオス・デル・ティーフェン・ルーフェ・イッヒ、ヘル、ツ・ディーア)
「(邦題)深き淵よりわれ汝に呼ばわる、主よ」
に、この
【ラ>♯ソ<ラ<シ<ド>シ】
動機がしかと使われてる。その他、
テレマンをはじめとして17、8世紀のドイツの作曲家に
この動機を用いてる者が10人ほど確認されてるらしい。

そして、
肝腎なのは、
Bartholoma(ウムラオト)us Ringwaldt
(バルトロモイス・リングヴァルト、1532あるいは1530-1599)
という、オーデル河畔のフランクフルトに生まれ、
ブランデンブルクのゾネンベルク近郊で死んだ、
ルター派の牧師・神学者である。同人は、
音楽をはじめとする芸術に親しかったルターのためかどうかは、
「レクイエム」と「エグイM」を聞き分けれない
拙脳なる私には解らないが、
聖歌(コラール)の作曲者でもあった。そして、
バッハが採った
"Herr Jesu Christ, du ho(ウムラオト)chstes Gut"
(ヘル・イェズ・クリスト、ドゥ・ヘヒステス・グート)
「(邦題)主、イエス・キリスト、汝、こよなき宝」
というコラールを作ったのである。それが、
【ラ>♯ソ<ラ<シ<ド>シ】
だった。

ちなみに、
いわゆる「ヴィターリのシャコンヌ(ト短調)」と呼ばれてるvn曲は、
メンデルスゾーンがホ短調のvn協奏曲を献呈したゲヴァントハオスのコンマス、
フェルディナーント・ダーヴィトによる偽作であるが、ともかく、
***♪【ラー>♯ソー・<ラー<シー・<ドーー│>シーーー】・>ソーーー・>ミーーー♪
というように、この【動機】が主要主題として使われてる。また、
この【動機】は20世紀の日本でも引き継がれる。
ハンガリー大使だった故都倉栄二の倅にして
歌謡曲作曲家都倉俊一が、「ひと夏の経験」で、
***♪【ラー・>♯ソー・・<ラ<シ・ー<ド│ーー・>シー】・<ド<レ・ー<ミ│
    ーー・ミー・・ミ>レ・>ド<ミ│ーー・……♪
(これは、音源から私が拙耳で採譜したカタカナ音符なので、
原曲とは異なると思うので悪しからず了承いただきたい)
と、山口百恵元歌謡歌手に歌わせた。
♪【あー>なー<た<にー<おーー>んー】
  <な<のー<こーーのー♪
温故知新を略していうと温知というのかどうか、
三浦祐太朗とチャ・テヒョンを見分けれない拙脳なる私は
知るはずもない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「チャイコフスキー『眠れる... | トップ | 「シンジる者は救われる式馬... »

コメントを投稿

説くクラ音ばサラサーデまで(クラ音全般」カテゴリの最新記事