チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「絵に描いたような海老蔵の二枚目ぶりと三津五郎の幇間ぶり/歌舞伎座6月興行(第3部)助六」

2013年06月30日 20時53分47秒 | 歴史ーランド・邪図
本日、2013年6月30日をもって、
銀座松坂屋が閉店するらしい。
小学・中学時代には、
7丁目の日本楽器(YAMAHA)に行くついでに、
この百貨店の書籍売場でよく本を買ったものだった。
現在は廃刊してないかぎりネットで何でも手に入るが、
当時の百貨店の書籍売場は他の書店に置いてない
ニッチなものがあったりして、私にとっては、そこや
日本橋高島屋書籍部や渋谷東急本店書籍売場などが
貴重な存在だったのである。

海老蔵が新装なった歌舞伎座に、
父故團十郎の代役ながら、
6月興行で初登場した。
初日か楽日が好きなのだが、
松竹にコネのない私は、人気の
海老蔵の初日も楽日もチケットが取れなかったので、
金曜日に観にいってきた。
幸四郎と梅玉の「鈴ヶ森」は予想どおりつまらなかったが、
海老蔵の「助六」は充分に楽しめた。
出端の傘回しは、海老蔵であって海老一ではないので、
「6月ですから、いつもより、たくさんまわしてますぅ~~~」
とはさすがに言わなかったものの、
顔の端正さは間近で観ると圧倒されてしまう。
芸能レポーターのみといせい子女史もウットリである。
指の美しさも際立ってた。
その隈取りを施した顔に江戸紫の鉢巻の粋な姿は、
現世海老蔵が最高である。つくづく、
役者はみてくれが第一だと痛感した。が、
海老蔵は芝居のほうも巷で言われてるほどにはヘタでない。
声も心地好く、台詞回しもセンスがある。

いっぽう、
海老蔵(助六=曾我五郎)と菊五郎(その兄曾我十郎)に
因縁を付けられて股の下をくぐらされるという
屈辱を受ける通人・里暁(リギョウ。さとあきでも近藤サトでもない)
というチョイ役で出演した三津五郎は、
城廻りというよりは白塗りだった。
ベタながらもその道化っぷりで、
花道の照明が点滅しても舞台方面ばかり観てる
あまり歌舞伎を知らない客が多い当日の客席を沸かせた。
海老蔵に股をくぐれと言われた三津五郎は
「じぇじぇ!?」
とNHK朝の連ドラ「あまちゃん」の小ネタで
城内ならぬ場内はドッカーン。
ローラ女史の実父の国際指名手配で、
「オッケー! いいよー!」は封印したようであるが、ツカミはオッケー。次いで、
「いったい、いつ、くぐるの?」
と振って、自らに
「やっぱり、いまでしょ……うか」
と自虐的にハヤシ立てると場内は大笑い大拍手。ちなみに、
今回の公演はお囃子や三味線の音がデカすぎて、とくに
「鈴ヶ森」のセリフが聞き取りずらかった。ともあれ、
三津五郎は懐から「三枡」紋の布巾を取り出して頭に被り、
ここでまた場内大爆笑。さらには、
跪いて海老蔵の股の前に顔を置くと、
海老さまのアソコを拝んで二拍手。ここでまた、
場内は大喜び。そして、
やっと股をくぐる。が、
そこにまた海老蔵を真似て兄役の菊五郎が
三津五郎に股をくぐれと命令する。
「再びの、じぇじぇじぇっ!」
これでさらに場内がドッと沸く。
「また、またまたまたまた……いま
くぐったばかりなのに……」
と狼狽したふりをみせてからの、
「兄さんの奥方の名前はたしか……藤……
フジさん……世界遺産登録、おめでとうございます。
それからご子息もこの間お嫁さんが……しかも、
くわんぺら(=吉右衛門)さんのとこから……
また、お祝い贈らせていただきます」
戯れ言で場内を笑いにわらわせる。ちなみに、
くわんぺら役吉右衛門に絡まれる福山のかつぎ役を、
その娘婿菊之助がやってた。
「股くぐり、パート・ツーっ!」
そして、重ね扇に抱き柏紋の布巾で頭を覆って股くぐり。
こんなところで二度も股くぐりさせられるとはなどと
ボヤキながら三津五郎はさらに
「こんな珍しいめに遭ったんだから、
ちょいとつぶやいておこうかしら」
と花道に帰りかけて懐からスマホを取り出してまた場内大爆笑。
「つぶやいたついでにちょいと、海老蔵さんのブログでも
覗いてみようかしらん」
と、これでさらに場内大喝采。
「今日は何なに……今日もまた朝、お散歩にいらして……
とまってる蝶々の写真までアップして、ようござんしたね」
とその日の舞台でないと意味がないネダで披露した。実際、
当日朝の海老蔵はブログで自宅近所の西郷山公園に出かけて
そこで蝶々がやってきたことを書いてたのである。
揚羽蝶でも揚巻蝶でもなく紋白蝶であるが。
「でもね……昼の蝶はかわいらしくていいけれど、
夜の蝶にはお気を付けくださいよ」
これで場内の笑いは頂点に達し、
舞台上の海老蔵もつい相好を崩してしまったのである。
「なにせ、おぼっちゃんもお生まれになったことですしね。
このおぼっちゃまの成長とお前様のご精進を、
大きなおおきなお星様となってる12代めさんがきっと、
見守っていてくさだいますでしょう。
ぼうやが初舞台を踏むその日が来るまで、いえいえ、
もっともっと大きく成長されてこの助六をつとめるその日が来るまで、
いついつまでも末永く歌舞伎をご贔屓に願い奉ります」
と、きれいにまとめにかかる。
「とまあ、こうお願いしておけば安心だ。そうだ、それじゃあ、
近頃評判のあの木挽町広場にでも行って、
揚巻ソフトでも舐めながら帰ることにしよう。
それでは皆様、お先に失礼……おっほん」
ここで大拍手と掛け声の雨あられ。私も
「大和屋!」
と言うべきところ、つい、
「松坂屋っ!」
と掛け声を発してしまった。それにしても、
昨今の掛け声はずいぶんとヘタになったものである。
これから夏場の公演はくそ面白くないものばかりなので、
またしばらくは歌舞伎座からも銀座6丁目からも
足は遠のくことだろう。
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