枕詞 あしひきの 大津皇子生誕1350年
今年2013年は、
天武天皇の第3皇子、
大津皇子(おおつのみこ、西暦およそ663-同686)の
生誕1350年にあたる年である(誕生日は不詳)。
父帝天武崩御後突如、謀叛の罪をきせられて
死を賜った(自殺するように命じられた)。
大津皇子の母は、のちの持統天皇の実姉である。
持統女帝は、天武天皇の第2皇子である
草壁皇子(くさかべのみこ、西暦およそ662-同689)を
産んでるのである。
天武天皇には兄天智天皇と額田王をめぐっての
一悶着があったが、この
草壁と大津にも、石川郎女をめぐって何かあったようである。
石川郎女は石川内命婦(いしかはのうちみゃうぶ)のことであり、
のちに大伴安麻呂(おおとものやすまろ)の妻となり、
大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)を産んだ。
義理の息子が大伴旅人である。
【万葉集巻02 0107-0110】
0107=大津皇子贈石川郎女御歌一首
[足日木乃 山之四付二 妹待跡 吾立所沾 山之四附二]
(あしひきの やまのしづくに いもまつと われたちぬれぬ やまのしづくに)
「(拙大意)大津皇子が石川郎女に贈った御歌一首
『疋』という字の下の部分(足首から先)のような形をした山の
木の葉の雫に、あなたを待っていると私はずぶ濡れになってしまったことですよ。
山の木の葉の雫にね」
(「立ち」は「stand」の意味ではなく、連なる動詞の「強意」を表す)
枕詞「あしひきの」の原義に関する私の推測である。
「山」を簡易的に描くと「への字」のようになる。それはまた、
足首から先の部分を横から見た形である。そして、
「疋」という語はまた、中国で用いられた長さの単位に基づくらしい。
それが日本では絹織物「2反」を表す語として使われた。
大津皇子の時代のことは、
PM2.5の健康被害と江頭2:50の芸の毒々しさと
水俣チッソの水銀毒の程度の差がいまいち解らない
拙脳なる私には知るよしもないが、
反物「2反分」ということから、スーツ的な服を表した語だったかもしれない。
「山之四付二」という言葉をそっくり最後に繰り返すその
「四附二」という万葉仮名がただ音を充ててるだけではないと推測できる。
「へ」という文字のような形がわずかに横にずれて重なった形は、
男女の足先が絡み合ってるさま、つまり、性交を意味するのである。つまり、
「あしひきの」が「足を引きずる」くらい歩いて疲れる山、などというのは
見当違いであるといえる。
「あしひきの」という枕詞の「原義」は文字どおり「枕」ことばなのである。
0108=石川郎女奉和(こたへたてまつる)歌一首
[吾乎待跡 君之沾計武 足日木能 山之四附二 成益物乎]
(あをまつと きみがぬれけむ あしひきの やまのしづくに ならましものを)
「(拙大意)わたくしを待って、あなたさまのお召し物が水に濡れてしまった
『疋』という字の下の部分(足首から先)のような形をした山の木の葉の雫に
なれてたらどれだけよかったことでしょう」
つまり、「山」というのは比喩で実際は山で逢瀬の約束をしていたわけではなく、
どこかで密会することになってたものの、結局、女性のほうは行かなかった、
ということなのである。
0109=大津皇子竊婚石川女郎時津守連通占露其事皇子御作歌一首
[大船之 津守之占尓 将告登波 益為尓知而 我二人宿之]
(おほぶねの つもりがうらに のらむとは まさしにしりて わがふたりねし)
「(拙大意)津とは大船が碇泊する港のことであるが、
住吉津(すみのえのつ)に本拠を置く住吉社神主津守氏の
津守連通(つもりのむらじとほる)の占いに出るだろうとは
必ずわかってたから、私たち二人はネタのだ」
(「婚」=「性交」。「竊(窃)婚」=不義密通)
0110=日並皇子尊贈賜石川女郎御歌一首 女郎字曰大名兒也
[大名兒 彼方野邊尓 苅草乃 束之間毛 吾忘目八]
(おほなこを をちかたのへに かるかやの つかのあひだも われわすれめや)
「(拙大意)おほなこを、遠くはなれた野原で刈る茅を束ねたものの
そのわずかな隙間ほども私は忘れることがあるだろうか、いや、ないことだ」
(日並皇子=草壁皇子。女郎字曰大名兒也=この女性の通称は「おほなこ」である)
石川郎女=オホナコが草壁皇子の思い人、あるいはさらに愛人だった、
という説明のためにことさら附記されてるものと思われる。いずれにしても、
束ねた茅の隙間ほども忘れたことはない……
それほどオホナコのことが好きですきでたまらなかったということは判る。つまり、
モテ男、優秀なミスターAwesome(オミゴト青年)大津皇子は政治能力面ばかりでなく、
草壁皇子の「男」としての尊厳も傷つけてた、
ということなのである。それが命取りとなった。
歴史は夜作られる?
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