マイマイのひとりごと

自作小説と、日記的なモノ。

【自作官能小説】月明かりの下で~彼女たちの秘蜜~【R18】※百合

2017-09-12 15:38:52 | 自作小説
※このお話は女の子ふたりがいちゃいちゃする内容です。
百合とかGLとかレズビアンとかそっち系です。
苦手な方はご注意ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「じゃあ、またみんなで集まろうね」
「うん、元気でね」
「また連絡するから」
 新幹線の駅へと向かう道の途中。
 繁華街を抜けたところで大きく手を振る友人たちに笑顔で応じながら、真由(まゆ)は旧友と離れる寂しさとは別の理由で心が沈んでいくのを感じていた。
 数年ぶりに開かれた高校の同窓会。
 大好きだった仲間と過ごす時間は本当に楽しくて、学生時代に戻ったようにはしゃぎ、居酒屋では店員に注意されるほど大きな声で笑い転げた。
 だけど、もう高校生じゃない。
 みんな25歳になった。
仕事に夢中だったり、結婚して子供がいたり、素敵な恋愛をしていたり。
 中には海外で活躍して、真由には想像もできないような経験をしている子もいた。
 それぞれに幸せな人生を歩んでいて、それはとても喜ばしいことだと思うのだけれど。
 このまま年を重ねて、いったいどうなるというのだろう。
 真由はいつのまにか自分でもそれと気づかないうちに、何か大切なものをどこかに置き忘れてきてしまったような感情にとらわれていた。

「なに言ってんの? 真由は大切なもの、全部持ってるじゃない。地元から出て立派に仕事してるし、それに彼氏にプロポーズされたばかりじゃなかった?」
 そんな暗い顔しないで、心配になっちゃうから。
 隣を歩いていた莉乃(りの)が冗談ぽく笑いながら、軽く肘でこづいてきた。
 優しい声。
 莉乃はいつでも真由の味方になって励ましてくれる。
 高校で出会い、いまでも週に一度は連絡し合う一番仲良しの友達。
 親に言えないようなことでも、彼女にだけは何でも話せた。
 でも、いまの気持ちをうまく説明できる言葉が見当たらない。
 真由は拗ねたようにうつむき、歩きながらコツンと爪先で小石を蹴った。
「仕事っていっても、みんなみたいに凄いことしてないもん。毎日、電話受けたり簡単な資料作ったり、誰でもできるようなことばかりしてる。つまんないよ」
「そう? でもそのお金でひとり暮らしできてるなんて、それだけで偉いと思う。ほら、わたしなんて今でも実家で親のスネかじってるから」
 あはは、と莉乃が明るく笑った。
 莉乃は父親が大きな会社の経営をしているらしく、その手伝いをしながらいまは大学院に進んで最新技術の研究を続けていると聞いた。
 莉乃自身はさっぱりした性格で親しみやすく、いわゆるお嬢様というイメージからは程遠い。
 それでも初めて彼女の家に遊びに行ったときは、真由の家の何十倍もある敷地の広さと田舎には立派すぎる建物に驚かされた。
「莉乃はお金持ちのお嬢様だもん、わたしとは違うよ」
「あっ、そういう言い方はよくないと思うな。それに、わたしには彼氏なんていないし結婚の予定もないけど、真由にはカッコいい彼がいるでしょ」
「うん……」
 莉乃の視線は、真由の左手に注がれている。
 薬指にはめられているのは、小さなダイヤのついたプラチナのリング。
 彼からこれを受け取ったときには、嬉しいというよりも戸惑いのほうが大きかった。
「ねえ、なに落ち込んでんの? なんだか真由らしくない、さっきまで元気だったのに」
「落ち込んでるわけじゃない、けど」
「もしかして、彼氏と喧嘩でもした? それとも、仕事で何かあったとか?」
「ううん、そんなんじゃないの。彼とは喧嘩したことなんてない、すごく優しくて良い人で……ただ、わたし、これでいいのかなあって思って」
「いいに決まってるじゃない。何が気になるの?」
「気になるっていうか、ずっとわたし普通だから。普通に勉強して、普通の仕事して、結婚したらきっと普通の主婦になって……なんだか、それって」
 やっぱりうまく言葉がでてこない。
 胸の中でもやもやした灰色の煙のような感情が渦巻いている。
 莉乃は街頭の下でぴたりと立ち止まり、いまにも泣き出しそうな真由を見てにっこりと微笑んだ。
「ねえ、ちょっと散歩しよっか」
「散歩? だけどもうすぐ最終の新幹線が」
「そんな顔のまま帰せないでしょ? 新幹線に間に合わないなら、わたしの家に泊まっていけばいいじゃない」
「でも、そんな急に……ねえ、待って」
 真由の手を引いて、莉乃は駅とは別の方向へずんずん歩いていく
 まったく、強引なんだから。
 学生の頃からそうだった。
 莉乃はときどき、真由に理解できないようなことをする。
 真夜中に家を抜け出して花火をしようと言い出したり、星空が綺麗だからといって一晩中ずっと何もない野原でおしゃべりを続けたり。
 そして、そんな莉乃につきあって遊ぶのが何よりも楽しくて好きだったことをよく覚えている。
 一晩くらい、あのときのように莉乃と遊んでみるのもいいかもしれない。
 真由は莉乃に手を引かれるまま、人ごみから離れて山のほうへと向かう道を歩いていった。




 アスファルトで舗装された歩道を離れ、街灯の少ない砂利道へ。
 そこからしばらく歩いた先に大きな川が流れている。
 川幅が広く流れが穏やかで、周囲には芝生の広場も作られているため、昼間はこの河原で小さな子供たちがよく遊んでいた。
 ただし夜になると暗くて危険なこともあり、日暮れから後はほとんど誰もよりつかない。
 莉乃は河原に下りていく石の階段の途中で、ふいに真上を指さした。
「ほら、今日は綺麗に見えるよ。真由の大好きな満月」
「満月……?」
 莉乃につられて上を向くと、夜空は見たこともないほど大きな月が輝いていた。
 太陽とは別種の、白く穏やかな光。
 真由は思わず目を細め、息をのんだ。
 なんともいえない懐かしさが胸にこみ上げてくる。
 ふっ、と脳裏にひとつの光景が思い浮かぶ。
 莉乃と手を繋いで、まったく同じ月を見たことがある。
 濃紺の制服、おそろいの茶色い革靴。
 月明かりの下。
莉乃の真っ直ぐな黒髪がさらさらと風に揺れて、それがすごく綺麗で。
せつなくなるほど静かな夜だった。
 あれはいつのことだったのか。
 真由の心を読んだように、莉乃が小さな声で呟く。
「高2の文化祭の後にね、ふたりでここに来たの。覚えてない?」
「覚えてる、なんとなくだけど」
「あの日、クラスの出し物で劇をやったでしょ。それで、真由はヒロインだったんだけど台詞を少し間違えてね、誰も責めてないのにわんわん泣いちゃって」
 大丈夫、気にしなくていいって、みんなが慰めてくれた。
 ぼんやりとした記憶が、莉乃の言葉ではっきりとした形を持って蘇ってくる。
 温かな繭に守られていた、優しい時間。
「でも放課後になっても泣き止まないから、涙が止まるまで散歩しようって言ってここに連れてきたんだよ。だって真由は星や月を見るのが大好きだったから」
 人工的な明かりの多い街の中では、空のささやかな光などかすんでしまう。
 だけど、まわりに何もないこの河原に来れば。
 暗闇の中できらきらと輝く、見事な夜空を楽しむことができる。
 いつまで見ていても飽きなかった。
 でもこの数年、真由は夜空を見上げることなどすっかり忘れていた。
 やらなくちゃいけないことが多すぎる。
 年々、時間や約束に縛られて身動きが取れなくなっていく。
「わたし、何やってるんだろう」
 ぽろりと零れた言葉が合図になったように、涙が一筋流れ落ちた。
 莉乃の小さな手が、労わるように背中を撫でてくれている。
 その手があまりにも優しいものだから、ますます涙が止まらなくなる。
「真由、あのときと同じこと言ってる。たぶんね、頑張り過ぎて疲れちゃったんだよ」
「でも、わたしなんて全然頑張ってない」
「ほら、それもあのときと同じ。自分のことそんなふうに言わないで。疲れたって、苦しいって、ほんとのこと言っていいんだよ」
 誰も怒ったりしないから。
 それに、いまは誰も見ていない。
 だから、たくさん泣いてもいいよ。
 固く凝り固まっていた心が、少しずつほぐれていくような気がした。
「わたし、このまま……普通のまま、オバサンになっちゃうのかな」
「え?」
「ごめん、そんなこと思うなんて変だよね」
「変じゃないよ。真由の思うこと、聞かせて」
「さっきも言ったけど、結婚して、子供産んで、仕事しながら育てて、それが嫌だってわけじゃないけど、でもそれで終わっちゃう人生って」
 決められたレールの上を、無理やり走らされているようで息苦しくなる。
 まわりが進学するから、それなりの学校に進んだ。
 親が安心するから大手の企業に就職した。
 同僚や友達に彼氏ができていくのを見て、自分も恋愛しなくちゃいけないと焦った。
 プロポーズされたから、そろそろ結婚しなくちゃいけないと思った。
 傍からは順風満帆にみえるのかもしれないが、そこには自分の考えなどほとんど関係なかった。
 もっと自分の意志で特別な何かをしてみたかったのに。
 普通じゃない、何か特別なことを。
 真由の話を聞きながら、莉乃はくすくすと笑っている。
「なんで笑うの、やっぱり変だって思った?」
「まさか。真由ったら全部、あの夜と同じようなことばかり言ってるんだもん。もちろん言い方は違ってたけど」
「そうなの? わたし、何て言ってた?」
「真面目に頑張るばっかりじゃつまんないって。いつも『普通の子』だから、たまには普通じゃないことしてみたいって」
「ほんとだ、わたし同じこと言ってる」
 馬鹿みたい、と泣きながら笑った。
 それに莉乃の笑い声が重なる。
「あはは、いいじゃない。ほんと、懐かしい」
「そうだね、高校の時に戻ったみたい」
 一瞬の間があった。
 ひんやりとした風が足元を吹き抜けていく。
「真由、その後のことは覚えてない?」
「覚えてないって、何を?」
「その後、わたしは『普通じゃないことしてみたい?』って真由に言ったの。それから」
「それから……?」
 どくん、と心臓が跳ね上がる。
 あのとき。
 真由は、してみたい、と返した。
 普通じゃない、特別なこと。
 そうしたら、真由の両手を握って莉乃は真正面に立った。
 すごく真剣な表情で。
 莉乃の顔が、ゆっくりと近づいてきた。
 何もかも、はっきりと覚えている。
 つるりとした白い肌の質感、長い睫毛にふちどられた大きな瞳。
 桃色の唇が、そっと頬につけられたことも。
 ためらうように、二度。
 少しくすぐったかったけれど、嫌ではなかった。
 特別なことをしている。
 そんな実感があった。
 頬にキスをされた後、真由は自分から莉乃の唇に口づけた。
 そうするのが自然に思えたから。
 温かくて、柔らかくて。
 ふたりの体が、ひとつに溶け合っていくような感じがした。
 なんだか、離れたくなくなった。
 一度だけのつもりだったのに。
 莉乃の両手を握りしめたまま、何度も、何度も。
 軽く触れ合うだけだったキスが、濃密なものに変わっていく。
 小さく開いた唇の隙間に、莉乃が舌先を差し入れてきた。
 何かを試すように、おそるおそる、ゆっくりと。
 心が震えた。
 真由はそれを受け入れ、自分の舌を絡めた。
 互いの唾液を分け合う口づけは、うっとりするほど甘い快感を連れてきた。
 少しも嫌だなんて思わなかったのに、なぜか悪いことをしているような気持ちになった。
 どのくらいそうしていたのか覚えていない。
 珍しく莉乃は泣いていた。
 真由も泣いていた。
『大好き、真由のこと、ずっと好きだった』
 涙交じりの声が聞こえた。
 真由は『わたしも』と返した。
 だけど、それ以上どうすればいいのかわからなかった。
ふたりともまだ子供だった。
その夜のことは誰にも話したことがない。
 ふたりの間で話題にしたこともないし、触れてはいけないことのような気がしていた。
 口に出してしまうと、大切なものが壊れてしまいそうで怖かった。
 その後。
初めての彼氏ができてキスをされたときも、処女を失ったときにも、あの夜ほど心が震える経験はできなかった。
あれは、あの時間、あの場所で、莉乃が相手だったから感じられたことなのかもしれない。
だけどそれは考えることすら許されないことのように思えて、ずっと記憶の奥底に閉じ込めていた。
 


「思い出した?」
 いつのまにか石段に座っていた莉乃が、立ったままの真由を見上げている。
 屈託のない、あの夜と同じ笑顔で。
 だけど今夜は制服じゃない。
 体のラインにぴったりと沿った、タイトなシルエットの青いワンピース。
 真由は同じ色の、フレアスカートに白いブラウス。
 そして踵の細いハイヒール。
 ふたりとも大人になった。
 そう思うと、なんだか悔しくて悲しくなった。
 真由は隣に並んで腰を下ろし、莉乃の肩にもたれながらため息をついた。
「どうして大人になんかなっちゃったんだろう」
「大人になるのは悪いことじゃないよ」
 莉乃が髪を撫でてくれるのが心地よかった。
 でも、落ち着いた話しぶりに腹が立ってくる。
「あれは、子供だったからできたんだもん。大人になっちゃったら、もうあんなことできない」
「あんなことって?」
「だから、女の子と……莉乃と、キスしたりできないってこと」
「どうして?」
「だって、もうすぐ結婚するんだし、そんなの普通じゃないもの」
「普通じゃないことがしたいんでしょ?」
「それは、そうだけど」
 莉乃は相変わらず楽しそうに笑っている。
 なんだか馬鹿にされているような気になってくる。
「笑わないでよ、もう」
「ねえ、わたし真由に言ってみたかったことがあるんだ」
「え? なに」
「でも言ったら、もう会ってもらえなくなるかも」
「そんなわけないよ。気になるじゃん、言って」
 莉乃は笑うのをやめ、真由の肩に手を置いて内緒話をするように唇を耳に寄せてきた。
 そんなのはべつにたいしたことじゃないのに、おかしくなりそうなくらい心臓がドキドキしている。
 なんだろう、この感じ。
「真由、彼氏のこと好き?」
「う、うん。どうして急にそんなこと」
「わたしと彼氏、どっちが好き?」
 莉乃の声は震えていた。
 胸が痛くなった。
 答えは最初から決まっている。
 返事をするより先に、莉乃が言った。
「結婚しないで。わたし、真由が他の誰かのものになっちゃうなんて我慢できない」
「莉乃……」
「ごめんね、こんなこと言うつもりじゃなかったのに。真由は平気? わたしが誰かと結婚しても」
「そ、そんなの」
「いま、お見合いの話がたくさん来てるの。だけど、わたしがずっと一緒にいたいのは真由だけ。どうしたらいいのか、本当にわからない」
 莉乃は真由の腕にしがみつき、顔を伏せている。
 ついさっきまでは真由をリードしてくれるお姉さんのような態度をとっていたのに、いまはまるで頼りない少女のように見えた。
 こんなのは彼女らしくない。
 莉乃はいつだって凛として、みんなの先頭を歩いていく素敵な女性なのに。
 どう声をかけてあげたらいいのか。
 何も思いつかない。
 真由にできるのは、黙って莉乃を抱きしめることだけだった。
 腕の中にいる莉乃の体は思ったよりずっと細い。
 実際は真由も莉乃も同じような体格をしているのだけれど、彼女がこの世の何よりも弱々しい存在に思えてくる。
だからもっと強く抱き寄せたくなって困ってしまう。
「泣いてるの? 泣いちゃだめって言ったのは、莉乃のほうなのに」
「真由が悪いのよ、わけわかんないこと言って泣いたりするから。真由が泣くのは嫌なの、わたし本当に」
「ごめん、ごめんね、莉乃」
「どうしよう、真由に嫌われちゃう。こんなわたし、見られたくなかった。カッコ悪いよね、それにすごく気持ち悪いって思われちゃう」
「思わない、そんなこと。だって、わたしも」
 同じこと思ってた。
 考えないようにしようとしていただけで。
 莉乃が他の誰かのものになるなんて、絶対に許せない。
 押し隠してきた言葉が、次々に流れ出てしまう。
 だって、あまりにも今夜の月は綺麗だから。
 月の光の下で、本音を隠し通すことなんてできない。
 莉乃が顔を上げた。
 涙に濡れた瞳が、すがるように真由を見つめている。
 もしかしたら、自分も同じような目をしているのかもしれない。
 こんなところ、誰にも見られたくない。
 でも大丈夫。
 夜はすべてを隠してくれる。
 真由は莉乃の頬に手を添えて、そっと優しく唇を重ねた。



 あのときと同じ、柔らかで温かい感触。
 だけど、あのときよりもずっとドキドキしている。
 唇を触れ合わせているだけで、ぞくぞくと背筋が震えた。
 どちらからともなく、お互いの舌を吸い合い、唾液を絡めた。
 いつまでも続けていたくなるようなキス。
 髪を撫で合い、口の中を探り合う。
 はあ、はあ、とふたりの息遣いが荒くなっていく。
 体の芯が燃えるように熱くなってくる。
 絹糸のように美しい莉乃の髪はいつまで撫でていても飽きることがない。
 だけど、これじゃ足りないと思った。
 どうにかして、もっと莉乃に近づきたい。
 もっと莉乃のことを知りたい。
 ほっそりとした肩を両腕で抱きながら、赤く染まった頬や、真っ白なうなじにも口づけた。
 唇の位置をずらすごとに、莉乃がびくんと体を震わせる。
 それがたまらなく愛おしく思えた。
 何もかもが作り物のように綺麗な莉乃の体。
 口をつけるだけでは足らず、首筋から鎖骨のくぼみに舌を這わせた。
 しっとりと甘い汗の味がする。
 莉乃が小刻みに震えながら、小さな声を漏らし始めた。
「あ、あっ……真由……」
「やめてほしい? だったら、そう言って」
「違うの、真由にならいい……何をされても……」
 掠れた声。
 莉乃が背中に爪を立ててくる。
 心臓が破裂しそうな勢いで鼓動を打っている。
 莉乃の声を聞いているだけで、両脚の間がじゅんと熱く湿っていく。
 もっとこの声を聞きたい。
 背中のファスナーに手を掛け、一気に引き下ろした。
 ワンピースの布地を押し下げ、ブラジャーのホックも外した。
 カップの下から、ほっそりとした体形には不似合いなたっぷりと量感のある乳房がこぼれ出て、ふるん、と重そうに揺れた。
 ぎゅっ、とつかんでみると、餅のようにやわらかくてすべすべしているのに、指を跳ね返してくるような強い弾力もある。
 その先端にある薄桃色の小さな乳首は、ぽっちりと丸く尖って突き出ていた。
 莉乃が恥ずかしそうに、いやいやと首を振る。
「あ、あんまり見ないで。恥ずかしい」
「莉乃の胸、大きいのね。それにすごく柔らかい、もっと触りたい……だめ?」
「いいけど……あ、んんっ……」
 やんわりと乳房を揉み、硬くなった乳首のまわりをねっとりと時間をかけて舐めた。
 乳輪の周囲から突起の先端まで、たっぷりと唾液をまぶしながら。
 口の中に咥えて強く吸ってやると、莉乃は背中をのけぞらせて小さな悲鳴のような声をあげた。
「あぁっ……! だ、だめ、これ以上は」
「どうして? さっきは何をしてもいいって言ったのに」
「だ、だって、止められなくなっちゃう……こんなの、良くないでしょう?」
「良くないことがしたいの。普通じゃない、特別なこと。莉乃と一緒に」
 きつく歯を立てて乳頭の根元を噛みながら、ちろちろと先端を舐めまわした。
 そうしながらもう片方の乳首を指でつまんで捏ね回すと、莉乃はもうだめだとは言わなくなった。
 真由にされるがまま、淫らな声をあげ続けている。
 そのうちに、莉乃がもじもじと太ももを擦り合わせているのに気が付いた。
 めくれ上がったワンピースの下からのぞく、白く長い脚が妙にいやらしく見えた。
 太ももの内側に指を滑り込ませ、そろりそろりと焦らすように撫でてやると、莉乃は反射的に両脚を閉じようとした。
「そ、そこはだめ、本当に」
「なんでそんなこと言うの? わたし、莉乃の全部が知りたいのに」
「でも……」
 屋外で脱がされ、親友の手で犯されていく。
 その羞恥に身を震わせる莉乃の姿は、狂おしいまでに美しく愛おしい。
 もっと恥ずかしがらせてやりたい、もっと泣かせてやりたい、気が狂うまで感じさせてみたい。
 そうして莉乃の体を全部、自分の思い通りに操ってみたい。
 莉乃をわたしだけのものにしたい。
 自分でも思いもしなかったような欲望が、次から次へと湧き上がってくる。
 強引に下着を引き下ろし、莉乃の陰部をまさぐった。
 ざらりとした陰毛の感触。
 その奥に隠されていた秘密の割れ目は、溢れ出てくる蜜液にぐっしょりと熱く濡れていた。
 莉乃は真由にしがみつき、怯えるように震えている。
 体の奥が疼く。
 理性が消え失せ、脳が欲望だけに支配されていく。
 真由は指先でいやらしい裂け目を押し広げ、その中央を指の腹でなぞりながら、莉乃の耳元に囁いた。
「莉乃のここ、びちょびちょになってる。ねえ、どうして?」
「だ、だって、真由が」
「おっぱい舐められて感じちゃったんだ? 莉乃がそんなエッチな子だなんて知らなかった」
「こ、こんなの初めてなの……わたし、真由のこと、ひとりでずっと考えて……」
「わたしのこと?」
「わかるでしょう? ひとりで、ね……してたの……」
「自分で触ってたの? わたしのこと考えながら?」
「ご、ごめんね。でも、真由じゃないと、感じないの。だから、ずっと」
 莉乃のささやかな告白に、心が躍った。
 自分の中の足りなかったものが満たされていく。
 でも、まだ。
 莉乃の体の奥まで、触れてみないと気が済まない。
「わたしに触られたかったの? ここも」
「そう……全部、真由に……あっ、あぁっ……!」
 指先で、膣の狭い入り口を探った。
 ゆっくりと力を入れ、指を沈み込ませていく。
 熱く潤んだ肉襞が、指の侵入を悦んでいるようにきゅうきゅうと締め付けてくる。
 触っているのは自分のほうなのに、ぞくぞくするような感覚が止まらない。
 指をもう一本捻じ込み、へその裏側あたりを思い切り擦りたててやった。
「いやあっ! そんなにしたら、いやっ、真由っ……!」
 莉乃が顔を真っ赤にして、腰を揺らしながら喘いでいる。
 きっと、ここが一番弱いところ。
 背中に食い込んでくる爪の感触が快感に思えた。
 いく、いっちゃう、と莉乃が声にならない声で喚いている。
 それでも指を突き入れる速度を緩めなかった。
 石段に大きな染みができるほど、愛液がたらたらと流れ落ちていく。
 やがて膣の中が大きく痙攣し、莉乃が泣きながら絶頂に達したとき、真由はこれ以上ないほどの満足感を手に入れることができた。
 半裸の莉乃が照れくさそうに微笑みながら、真由の胸元に頬ずりをしてくる。
「ひどいよ、真由。いきなりあんなこと」
「嫌だった?」
「ううん、すごく良かった。だから、ね?」
 真由にも、してあげる。
 莉乃が顔を上気させたまま、真由の胸のボタンをひとつひとつ外していく。
 吹き抜けていく夜風が、素肌にひやりと冷たく感じた。
 胸元がはだけられ、ブラジャーが押し上げられた。
 莉乃とは違う、ささやかな胸のふくらみ。
 なんだか急に恥ずかしくなってくる。
「わたし、莉乃みたいに綺麗じゃないの。だから」
「真由は綺麗よ。わたしより、ずっと綺麗で可愛い」
 莉乃は小さな乳房をやわやわと揉みながら、痛いほど硬く隆起している乳首に口を押し付けてきた。
 上下の唇で優しく挟まれ、味見をするように舌先だけで舐められていく。
 ぞわりと肌が粟立ち、胸の芯がじんじんと痺れていく。
 彼氏に同じことをされたときには、何も感じなかったのに。
 真由にとってセックスは、退屈を耐えるだけの時間だった。
 でも、今は違う。
 肌が過敏なほどに反応し、莉乃に触れられているところから蕩けるような快感が染み込んでくる。
 考えられないほど体温が上昇していく。
 毛穴から流れ出す汗が止まらない。
 ほんの少し愛撫を受けただけで、真由はもう昇り詰めてしまいそうになっていた。
「ん、んっ……莉乃、そこ……」
「どうしたの? 痛い?」
「ち、ちがう……感じちゃう、すごく……」
「もっと感じて。真由のこと、いっぱい気持ちよくしてあげたい」
 じゅるっ、と唾液の音を鳴らして、乳首が莉乃の口に吸われていく。
 ねろねろとしゃぶられながら、軽く歯を当てられるのがたまらない。
 息が弾む。
 はしたないほど子宮が疼いている。
 ぴちゃぴちゃと胸を舐めながら、莉乃の手が真由のスカートを捲り上げていく。
 下着の上から、あの恥ずかしいところを撫でられた。
 莉乃が小さく笑う。
「真由のここも、めちゃくちゃ濡れてるじゃない。わたしのこと触りながら、感じちゃったんだ?」
「だって、莉乃が……あっ、いや、いやっ!」
 濡れた下着を脇によけて、莉乃の指が直接秘部に触れてくる。
 陰裂を押し広げられ、その内側を上下にじっくりと摩られた。
 指はすぐに小さな一点を探り出し、そこだけをこりこりと引っ掻くように責め立ててくる。
 剥き出しの陰核を責められるのは、乳首を舐められるよりもずっと強烈だった。
 電流を流し込まれるような衝撃が、何度も何度も繰り返し襲い掛かってくる。
 真由は腰を捩って身もだえしながら、だめ、だめ、と泣き声をあげた。
「莉乃、だめぇ……そこだけは、だめえっ!」
「クリトリス、こんなに勃起させちゃって。真由の感じてる顔、可愛い。もっといっぱい虐めたくなっちゃう」
「だ、だめだったら……あ、あぁっ……!」
 小さな肉粒が指先で挟み込まれ、きゅっ、きゅっ、と押し潰されていく。
 気が変になるほど気持ちいい。
 勝手に腰が揺れてしまう。
 真由は息を荒げながら、発情期の雌犬のように涎を垂らして喘いだ。
 耐えられないほど恥ずかしいのに、もっと莉乃に虐められたい。
 その思いに応えるように、指で秘部を弄りながら莉乃が顔を下半身の方へと下げていく。
 石段に真由を座らせ脚を開かせたまま、莉乃はその正面に屈みこんで真由の両脚の間に顔を埋めた。
「や、やだ……しなくていい、そんな」
「したいの。きっと、指よりもっと気持ちいいよ」
 気持ちいい声、聴かせて。
 そう言って、莉乃が秘裂の狭間に舌を差し入れてくる。
 ぬるついた舌先が、ぺちゃぺちゃと音を鳴らしながら溢れかえった蜜液を舐めとっていく。
 淫らな粘膜はさらなる愛撫を求めるように、ひくつきながら莉乃の舌を受け入れていく。
 皮膚も、骨も、体を構成するすべての細胞が崩されてしまいそうな快楽。
 もっと欲しい。
 どうしてこの悦びをいままで知らなかったんだろう。
 普通じゃないこと。
 特別なこと。
 求めていたものは莉乃との行為の中にある。
 ぬちゅっ、と真由の入り口に舌が沈み込んできた。
 体内で蠢く舌の感触に、感覚神経が弄ばれていく。
 溶ける、溶かされてしまう。
 もう、戻れない。
 真由は喘ぎと泣き声に紛れさせながら、莉乃を呼んだ。
「莉乃……」
「真由、気持ちいい?」
「いい、頭が変になっちゃうくらい……でも、もう莉乃がいなくちゃ生きていけない……」
「わたしも。真由が一緒じゃないなんて嫌」
 当然だといわんばかりの返事が嬉しかった。
「毎日、ずっと一緒にいたい。それで、いっぱいキスして、エッチなこともしたい。全部、莉乃が相手じゃなきゃだめなの」
「じゃあ、ふたりで逃げちゃうか。誰も知らないところまで」
「うん、逃げたい」
 仕事も、彼氏も、家族も捨てて。
 それは素晴らしい考えのように思えた。
 くだらない人生に別れを告げ、明日からは自分に正直に生きる。
「本当にそんなこと、できると思う?」
「真由と一緒なら、どこにでも行くよ。なんだってできる」
 ふたり一緒なら、怖いことなんて何もない。
 莉乃の言葉が、真由の背中を押した。
 何十年も先まで敷かれていたレールから外れた道を選び、自分の足で歩くときがきたのだと思った。
 月はまだ真上にあり、静かに輝きながらふたりを照らしている。
 真由は莉乃の乱れた髪を指できれいに梳かしてやった後、薬指に嵌められていた銀色のリングをそっと外した。

(おわり)


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