ぺるちえ覚書

兎追いしかの山… 懐かしい古里の思い出や家族のこと、日々の感想を、和文と仏文で綴ります。

息子の学校

2020-06-15 18:49:05 | 日記/覚え書き

今日は息子の通っているパリの学校をご紹介します。


我が家の中3息子がいま通っているのは、パリの16区にある中・高一貫の公立マンモス校。全校生徒数は1300人程になるそうです。 こちらでは中学をCollège(コレージュ)と言ってSixième(小6)からTroisième(中3)までの4年間、高校がLycée(リセ)でSecond(高1)からTerminale(高3)までの3年間となります。 この学校、ちょっと特色のある学校で音楽学科、ダンス学科の他に東洋語学科があり、中国語、ベトナム語そして日本語が学べます。 特に日本語科にはインターナショナルのバイリンガル・クラス(OIB・日本語母国語クラス)が設置されていて、OIB中学部は日本政府の海外補習校の認定も受けています。 公立なので本来授業料は無いのですが、OIB中学部の日本語授業(国語・社会)のみはフランス教育省(アカデミー)の対象外なので、生徒の保護者で作るアソシエーション日仏友好協会(AAFJ)が日本人教諭の雇用も含めて運営しているので有料です。 それでも実質、保護者が負担するのは国語と社会の授業を担当される日本人教諭陣にお渡しする授業料のみで、会の運営自体は保護者自身が持ち回りのボランティアで行なっているので、パリの他のインターナショナル校に比べるとずっと学費がやすく、こちらで子育てをしている日日家庭、日仏家庭にとっては大変ありがたい学校なのです。


なのでパリで子育て中の日本人の親御さんには、お子さんをこの学校に入れたい!と思っている方がけっこういらっしゃいます。フランスで生まれ育ってもルーツ(のひとつ)である日本の言葉と文化は学んで欲しい!と、親としては自然と思うもの。。。 海外駐在のご家庭で数年間の限られた期間の滞在ならば、普通の現地校でその国の言葉と文化を経験させる、もよいかも知れませんが、我が家のようなこちらに定住の日仏家庭では、それだけだと子供の中身は純フランス人に仕上がってしまいます(半分はフランス人だし…)。 その場合、日本語力も日常会話はOKだけど読み書きはムリ、という辺りに落ち着くのが常。 もちろんそれでも子供は元気にスクスク育ってくれれば基本OKなのですが、我が子が母国日本の言葉と文化を受け継がないのは残念すぎるし勿体無い!と私もあのころ思ったのか。。。


そこまで深く考えたり思った記憶も無いのですが、息子が幼稚園に通う年になったら当然のように、現地校がお休みの水曜日に通わせるためにパリの日本人幼稚園を探して入園手続きをし、小学校に上がる時も同じで特に考えるまでもなく現地校に通わせながらパリにある小学生向け日本語教室の水曜日クラスに息子を入れました。


夫も私もぜんぜん教育熱心なタイプではないので、それまで特に息子の学校の勉強を見てあげたことも無かったのですが、小学校4年生の頃に日本語教室のママ友さんから今の学校の日本語科国際コースの話を聞いて、現地校で日本語教育も受けられてしまうなんて一石二鳥ではないか!と感動。 ただし入学試験があってハードルは高いと聞いて、そこから本人よりも親のモチベーションで息子の受験勉強を開始〜。 まさかパリで自分の息子にお受験させる事になるとは思ってもいなかったのですが、家庭教師の先生を紹介してもらったり漢検を受けさせたりと猛ダッシュ。 それまでのんびりと週一回のお教室で学年より1~2年遅れのペースで日本語の勉強をさせていたので、受験までの2年間で遅れを取り戻すために息子は本当に頑張って勉強しました。 幼稚園からずっと仲良しだった親友も一緒に受験したので、仲間と二人だったからあそこまで頑張れたのかもね。 まだ小さかったのにあんなに頑張れて偉かったなあ、と我が子ながら思います。


この中学の日本語科OIBクラスはひとクラス10~15人なのですが、日本語を外国語(LV)として学ぶ生徒達と一緒に30人弱のひとつのクラスに編成されていて、フランスの一般教科はクラス全員で受けて、LVの生徒達の日本語授業の間、OIBクラスの生徒は別れて日本の教科書で国語と社会を勉強する、と言うような仕組みです(正確にはちょっと違いますが)。 LVのカリキュラムと比べるとOIBのカリキュラムは週に数時間、授業量が多くなります。 勉強が比較的苦にならない子供でないとOIBについてゆくのは大変なようで、その点でもOIBクラスへの入学テストは意味があるようです。


受験させた親としては、このくらい早い時期(10~11歳)に受験勉強をガンバレタことは本人の自信にも繋がって、勉強がやり甲斐のある楽しいコトに思えるようになったのではないか?と見ています。 もちろんそういう受験勉強に向いていないお子さんもいると思うので、本人が無理をし過ぎずに頑張れるかどうかが一番大切だと思います。


そして息子がこの中学に入学して付いてきたオマケが、先ほどもちょっとお話ししたOIBの運営と学校内での日本文化活動を運営している生徒の保護者によるアソシエーションAAFJでの活動です。


OIB中学部の運営を担当している会のOIB事務局の役割は、学校側との様々な交渉や補習校としての日本政府との交渉、また日本人教師陣の雇用や入学テストの準備、助成金の申請など多岐にわたり、会長、書記、会計、教務担当、その他、ヘビーウエイトなお役ばかり。 完全なボランティア活動ですし、理想はOIB保護者全員が持ち回りでお役を引き受ける事なのですが、OIB事務局の仕事を実際にできる人はいつも限られてしまい、長期に渡って決まった人に負担が掛かってしまう傾向があるのが難しいところ。 それに保護者にも色々な考えの人がいますから、皆さんの意見をまとめるのも実に大変なこと。 お役に付いて下さっている方達には本当に頭の上がらない思いです。


かく言う私も息子の卒業までにはいつか一度はお役をお引き受けしなくてはと思いながらも、ヘビーウエイトなお役には覚悟も力も足らないので、息子が入学した年からずっと文化活動のアトリエ運営のお手伝いをさせて頂いてます。 毎年、学年度末に「日本祭」と呼ばれる日本語科の卒業生を送り出す卒業式典と在校生のパフォーマンスによるお祭りを会が主催してきたのですが、卒業式典に出席する卒業生の希望者に和装の着付けをしてあげる着物アトリエのほか、当校の卒業生の保護者でいらっしゃる池坊流の先生がみて下さる生け花アトリエ、フランス囲碁大会元チャンピオンのフランス人先生がご指導下さる囲碁アトリエ、その他にも新春かるた大会や俳句コンクールなど様々な文化活動を会で運営しています。


子供ができる前はこちらの日本人社会と特にご縁のない生活をしてきたので、息子のお陰で先祖返り?とでも言うのでしょうか、私自身がルーツに戻って母国日本の文化を再発見したような、嬉しいオマケを頂いた感じなのです。 息子の学校のお陰で振袖の着せ付けを習ったり、生け花を習ったり、子供達のかるた大会の練習にかるたを詠んだり(下手くそ~ 笑)、日本文化の素晴らしさを今頃になってパリで楽しませて頂いてます。 


母国日本の言葉と文化を、こうしてフランスの公立の学校で息子に学んでもらえるなんて、なんて幸運でありがたいことか!とつくづく思います。 息子はいま中3ですが、毎年のクラス替えがないOIB。 かれこれ4年来ずっと変わらないクラスメート達とは大の仲良し。 特にクラスの男子5人組はまるで兄弟のようです。 


COLLEGE ET LYCEE  JEAN DE LA FONTAIN


https://www.ac-paris.fr/serail/jcms/s6_224591/fr/en-savoir-plus-sur-le-japonais-a-la-fontaine


パリで子育てされている方のご参考になれば嬉しいです。


皆さまどうぞご自愛下さい。