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les 60 ans

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  (60歳を前にして 日々思うこと つれづれに:改題)
 小型AT二輪免許とその周辺の話

小型AT限定二輪免許の話 (048) 「卒業検定 受験(04)」

2022-09-20 20:22:44 | バイク

 

乾坤一擲.

 「けんこんいってき」と読みます.(知ってる? ごめんなさい)

 天と地とを入れ替えるほどの大勝負をする意味です.豊橋競輪場で午後4時半ごろの最終レースの前に,「この金がなくなったら,もう終わりじゃ」と言っているオジサンの心境を表しています.

 そんな単純な言葉なわけはない.

 

 ただ,いま検定に臨む私は「大勝負」に向かっている心境です.

 車校に向かうタクシーの中では「落ちて当たり前」というような楽な気持ちです.しかし,私の前に大型/普通二輪を受験している方々を見ていると「自分も合格するのではないか」という欲が出てきます.「私だって大丈夫さ」.

 前の125ATの方が平均台から落ちた時には「これが5分後の自分だ」という気持ちです.この気持ちの変遷.落差.17歳にもつらいでしょうが59歳であっても落ち着いてはいられません.

 

 私は学校卒業後,ある国家試験に落ちた経験があります.その時は「もう一生この試験には受からないんじゃないか」と考え込んで一年間過ごしました.

 結局合格できたのですが,若い時は「これが一生続くんだ.もう自分に未来はないんだ」と思ってしまいます.逆にそれが「若さ」だといえます.

 

 トシヨリは違います.「落ちたか.ふー-ん」という心境になることができます.単にデリカシーがなくなっているだけです.

 落ち着いてはいなくてもいまの私は,「私も落ちるだろう.でもそれがどうした」という60年の人生経験による開き直りがあります.これは17歳の方にはない心がけでしょう.

 ただ,17歳のかたは400cc二輪にあたりまえに合格しているのです.私は125ATです.大関という立場の人に対して,前頭筆頭リード125を相手に苦戦している私がいう資格はありません.

 とにかく大勝負です.

 

 ゼッケンの色が今までの教習(赤や黄色)でなく白地に「検定」というものに変わります.プロテクターの上からかぶります.

 落ちたら再び前の色のゼッケンになります.

 

 雲一つない季節外れの青空.気温と湿度が上昇しています.緊張している私にはなにも感じられません.ヘルメットをかぶり,グローブをはめてスタートのポールの位置に向かいます.

 もう1か月一緒に稽古の相手をしてもらっている前頭筆頭リード125が左に首をまげてたたずんでいます.

 「さあ,かかって来なさい」 相手がそういっています.二輪車は生き物です.

 

 土俵たる二輪コースのスタート地点に立ちます.

 高校の時にグラウンドに向かって一礼したのと同じ.まず頭を下げます.

 スクータに手をかける前に右,左,右と大きく首を振ります.そのあとで両手をハンドルにかけて,再び首を左右にブンブン振ります.

 この試験の5分のあいだに,首が腱鞘炎になるほど動かしています.

 

 これから本当に二輪車に乗るために,検定車にまたがるのです.検定車を走らせるのです.

 そしてこの検定車とともにポールの位置に再び戻ってくるのです.

 



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