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北極海開発に対する抗議に寛大な判決 byオランダ

2012年10月17日 21時14分26秒 | Weblog
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英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル社(以下、シェル社)をはじめとする大手石油メジャーは、気候変動の影響で夏場に氷が急激に減少する北極圏で、石油の採掘を開始しようとしている。

北極圏での石油採掘はリスクが大きく、もしメキシコ湾の事故のような原油の流出事故が起これば、厳しい環境下での復旧作業はほぼ不可能となる。それゆえに生態系への影響は甚大と予測されている。

北極海の公海域を南極大陸と同じように保護区にしようと活動を始めたのがグリーンピース。ポール・マッカートニーなど世界中のセレブも賛同して始まったこのキャンペーンには、現在世界中から200万人以上の署名が集まっている。

しかし、シェル社は、北極圏での採掘を強行しようとしていた。

十分な議論が行われていないと考えたグリーンピースは、世界中でシェル社に対する抗議活動を展開。オランダやイギリスなどでは、白熊の着ぐるみでシェル社のガソリンスタンドを封鎖して、給油に来た客には他のガソリンスタンドに行ってもらうように伝えるとともに、シェル社の北極圏での石油採掘開始について情報を提供した。

オランダのシェル本社には、大きな「STOP SHELL, SAVE THE ARCTIC(シェル社を止めて、北極圏の保護を)」との垂れ幕もぶら下げた。

この抗議活動を受けて、シェル社はすぐにこのような抗議をやめるようグリーンピース・オランダを相手に差し止め裁判を起こした。

ところが、裁判の判決は「抗議活動はご自由に」となり、シェル社側の訴えが棄却されたのだ。

判決では具体的に「ガソリンスタンドを使用不能にさせるような行為も1時間以内であれば許可される」という記述まである。


なぜそのような判決を下したのかは、判決文を見るとよくわかる。

「北極圏の開発」という地球規模の重大事項を始める時には、異なる意見が存在するのは当たり前だとした上で、反対の意見はしっかりと企業に伝えられ社会的な議論が喚起されなくてはいけないとしている。そして議論喚起のためには、ある程度の抗議は許容範囲とみなされるべきとしたのだ。

裁判所も、あらゆる抗議活動がOKであるとしたわけではない。権利を主張する限り、抗議活動をする側にも義務が生じる。

そのカギとなる言葉が判決文にも示されている「Objective(目的)」「Subsidiarity(補完性)」「Proportionality(均衡性)」の3つだ。

「Objective」とは「目的」という意味で、抗議の目的が「公共の利益」に寄与するかが問われている。つまり、抗議が個人的な逆恨みだったり、ライバル企業を陥れるためだったりする場合には、目的が公共の利益のためではないとされ、抗議活動を正当化する基準はクリアできない。

今回のグリーンピースの行為は、「北極圏の開発」という地球規模に関連する分野の議論を喚起することだったということで「公共の利益」として認められた。

「Subsidiarity」とは、直訳すると「補完性」という意味だが、相手に損害が生じる可能性のある抗議活動については、考えられる他の手段が実行された後に行われなければいけないということを意味している。

グリーンピースは、シェル社に以前から、署名や直接的な交渉など、様々な訴えを行ってきていたのでこの条件も満たしていた。

次に「Proportionality」だ。直訳すると「均衡性」と訳されるが、抗議対象の行為が及ぼす影響の大きさに、抗議活動の方法が見合っているかということだ。

今回の件は、「北極圏の開発」という地球規模で市民が影響を受ける可能性のある行為に対しての抗議活動だったので、ガソリンスタンドを数時間平和的に封鎖するなどの抗議活動であれば、均衡性のあるものとみなされた。

ここまで読めば、むしろ抗議活動がシェル社に与える影響が、北極での原油流出事故の可能性の大きさよりも圧倒的に小さい問題だと感じてくれる読者もいるだろう。

これらの抗議活動が効果的だったのか、シェル社は今年の北極圏での石油採掘を断念している。

【以上、ニュースの紹介でした。】

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