☆つる姫の星の燈火☆

バブルとマイケルとわたし~黒い小さな悪魔~

真っ黒な悪魔は

おれさまは、マイケルだと言う事に気づき

おれさまが、この世で一番だと思っている。

 

彼の缶詰と、ビールを抱えて部屋の前まで戻ると

玄関の内側に来て、にゃあにゃあ鳴いている。

鳴くな~、ばれるから。

 

ドアの内側の金具が、縦に回転してからドアが開き

そこから、人が入ってくるのを覚えて

回転する金具に、前足を伸ばし

後足で立って、扉にもたれかかっていた様子だった。

 

猫缶を買うために、不経済な出来合いのお総菜はやめて

料理らしきものを作るようになった。

こいつを、食わせて行かねばならん。

 

マイケルは、おれさまの部屋の中を、縦横無尽にうろつきまわる。

時には、作動中の炊飯器の上に飛び乗って

熱い蒸気の出てくる穴をふんづけて

アッチィニャア!と大声を出して落ちてくる事もある。

テレビの中で飛んでいるカモメを追って

あらぬ方向にジャンプする事もある。

 

洗濯物を畳んだとたんにやってきて

その上で眠り始める。

けっこう毛だらけである。

 

一番のお気に入りの場所は、夜が更けてからの出窓。

まずベッドに飛び乗り、弾みをつけて出窓の淵にジャンプする。

遠くの灯りや隣の屋根。

ときどき首を伸ばして、窓の下の方を観察している。

その下にあるベッドで、私が眠りに落ちようとすると

決まって、どん!と鳩尾あたりに落ちてくる。

うぐっ・・・何故に鳩尾。

 

おれさまより先に、寝るんじゃねえぞ!

 

夜中、息苦しくて目が覚めると

小さなマイケルが、私の首にマフラーのように巻きついて寝ている。

わざわざそこで寝るかなあ。

 

朝は朝で、眠っている私の胸に上ってきて

一応爪を立てないように気を遣って、私の顎をツンツンつつく。

あろうことか、時には鼻をガブリと噛む。

最強の目覚ましなのだ。

 

さて、この黒い小さな悪魔、マイケルさまは元気いっぱいだが

私は、簿記の勉強しなくてはならない。

休みの日、夏はテーブル代わりの炬燵の上で勉強していると

マイケルの大運動会が始まる。

普段いないから、遊んでほしいのだろうか。

勉強の邪魔をしているとしか思えない、暴れようである。

 

キッチンの方から走ってきたかと思うと

短パンを履いた私の太ももに飛び乗り

その太ももに爪を立ててターンして、キッチンに走り去る。

足は生傷だらけだ。

 

獲物でも捕まえるように、腰を低くし

物陰からさっと出てきて、

手に持っているシャーペン目がけ、テーブルの上まで飛び乗ってくる事もある。

 

ロッククライミングよろしく

Tシャツや、長い髪に爪を引っ掛けて、背中から肩まで上ってくる。

おまえは、オウムかインコか。

 

わかったわかった!

仕方がないので遊んであげるハメになる。

脳の回路は、苦手分野の勉強でショート寸前だ。

これじゃあ、試験に受かるはずない。

 

悪魔くんをもらった事を後悔する日もあったが

もはや、マイケルのいない生活など考えられなかった。

かつて、街灯の白い灯りだけが待っていた小さなワンルームに

今は、マイケルが待っていてくれる。

留守電の点滅を気にする事もない。

 

とある日曜日。

マイケルにお留守番をさせて、簿記の検定試験の会場に座っていた。

試験が始まっても、今回は頭の引き出しが開かない。

開いたとしても、中身はほとんど入っていない。

マイケルの奴め!

マイケルのせいにしてみる。

 

時間ぎりぎりまで、鉛筆を握りしめていた私。

鉄仮面ヤマダの顔が浮かぶ。

 

最後の授業の日に

「試験の結果はまとめてスクールに届きます。

皆さん一人一人に話もあるし、電話では教えませんから直接来てください」

と言われていたのだが

どうせスベッた。

そうよ、せんせーのギャグみたいに。

わざわざ嫌味を言われに出向くのは嫌だったので、放っておいた。

 

そんなある日の夕方。

少なくとも、受験の重圧からは解放されて

マイケルにおもちゃを噛ませて遊んでいたら

おもちゃに血がついている。

え?どこか怪我した??

彼の口を、むりやり開けて覗き込んだ。

小さな歯がぐらぐらしている。

あらら~あんた、何に噛みついたの?

でも、次の瞬間気がついた。

ぐらぐらの歯の奥に、新しい歯が生えている。

 

猫も、歯が抜け変わるのだと、その時初めて知った。

 

感動も冷めやらぬその時に、滅多にならない電話が鳴る。

一体何事?

 

 

 

つづく

 

 

今日も読んでくださりありがとうございます。

 

感謝をこめて                                つる姫

 

 


私の好きなものは笑顔。笑顔は世界を救うと信じるつる姫のブログです。

コメント一覧

つる姫
SEIRO_NAKAIさん
ひまつぶしになってよかったです。
うなぎなら、ひつまぶし。

人間に対するのと、100%飼い主に依存するペットに対する想いは違いますね。。

そうそう。クロネコ、あったっけかなあ。
SEIRO_NAKAI
彼との暮らし。
まだ、キックオフまで3時間もあるので・・・つい、次を読んでしまいました。

彼との甘くて激しい暮らし・・・つっこみが浮びません。
つる姫さまが、彼を心から愛していたのだけはわかりました。愛すればこそ、どのような仕打ちも、無理難題も受け入れられるんだなあ、と、つくづく思いました。ところで、その頃、もう、クロネコはあったのでしょうか。
つる姫
はっ!
だから、これはフィクションだと・・。
つる姫
テバネさん
おはよう!
顔面よりはよかったですわ。
管理人のいないマンションで
4階には部屋が二つしかなかったし
お隣さんとは、仲良くさせていただいていたので
だいじょうぶ。
テバネ
鳩尾・・・・・顔面よりいいかもよ(爆)

しかし、飼ってるのバレないのかいな(汗)
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