☆つる姫の星の燈火☆

霊山へ

下北駅から乗ったバスを降りて、恐山菩提寺の総門をくぐると、急に空気が変わりました。

背筋がぞくぞくし、鳥肌が立ちました。

それは「怖い」というものではなく

違う世界の風に全身を包みこまれたような、初めての感覚でした。

少しだけ青空がのぞく空には、ところどころに黒い雲が流れて行きます。

この日この辺りには、雷雨注意報が出ていました。

私は、実は敢えて雨の予報が出ているこの日を選んで旅に出たのです。

 

山門に向かって歩くと、別世界に入って行く感覚が強まりました。

五感が研ぎ澄まされていき、身体の表面がピリピリします。

本尊安置地蔵殿にお参りをしてから、岩山の中に足を踏み入れました。

あちこちから水蒸気や火山性のガスが噴出しています。

バスを降りる少し前から鼻をついて来た硫黄の匂いのもとはここです。

この霊場を訪れて気分を悪くしたり頭痛をおこす人がいるそうですが、これは霊的現象ではなく

この火山性の有毒ガスによる軽い中毒症状なのだそうです。

幸い私は気分が悪くなることはありませんでした。

恐山には資料に残された噴火記録はありませんが、地質調査の結果から最後の噴火は1万年以上前と

みられているそうです。

ここが噴火する可能性もゼロではないだろうな、と思い、それが今ではない事を祈ります

 

順路に沿って行こうとして手元のガイドマップを見ると「奥の院不動明王」というのが目に入りました。

奥の院・・・険しい山を登らなければならないのだろうか、とふと巡礼の時のことが頭をよぎります。

また、下北に戻る数少ないバスの時間までは、一時間弱しかありません。

それでも、せっかくなので酉年の私の守護本尊である不動明王さまに会おうと

山の上を目指しました。

山のかなり上の方にあるなら、時間的にも途中でギブアップだな。

とりあえず行ってみようと思い、上り始めるとサラリーマン風の男性が下って来ました。

どの位かかるか聞いてみると、すぐそこだと教えてくれました。

その言葉通り、森に入って曲がるとすぐに不動明王さまがおられました。

忿怒の顔でこの世を救おうとしてくださる不動明王さまは、大日如来さまの化身とも言われています。

急にそれまで聞こえなかった何ものかの鳴き声が響いてきました。

まるでこれ以上中に入るなと警戒しているかのような、トゲのある鳴き声です。

セミのような鳴き声ですが、季節柄そんなはずはないでしょう。

青葉を揺さぶる風の音と、辺りに響く正体のしれない生物の声。

わずかな恐怖を感じた時に、突然雲の間から日が射し

一陣の風が、上着の裾を翻してその恐怖を何処かへ運んで行きました。

この岩肌の一帯は「地獄」にたとえられています。

足元の土は白く細かくて、まるで人骨の灰のようにも感じました。

そのあちこちに石が積み上げられています。

>>
子どものうちに亡くなった者は、両親を悲しませ、成人して孝行
できなかったので必ず地獄に落ちてしまう。
子どもたちは、功徳を積むため石を積むが、
地獄の鬼がやってきて、その石を崩す。それを泣きながらまた積む>>

そこに地蔵菩薩が現れて子どもたちを救って下さるという事らしいですが

あなたももしここを訪れたら、そんな子どもたちのために石を積んであげてください。

私も小さな石の山を作りました。

ひとつは父のため…ひとつは母のため・・・

再び、別の風が髪を舞い上げて通り過ぎて行きました。

風車は、幼くして亡くなった子どもが喜ぶようにと親御さんが置いて行かれるものだそうです。

時がとまっているかのような錯覚に陥る灰色の景色。

幾つもの風の塊が通り過ぎて赤い風車を回し、ここが色をなくした動かぬ一枚の絵の中ではない事を教えてくれます。

地獄を抜けていくと、眩しく青い湖が見えてきました。

つづく

 

合掌

つる姫


私の好きなものは笑顔。笑顔は世界を救うと信じるつる姫のブログです。

コメント一覧

つる姫
Yoshicoさま
PC版読みにくいですね。
それらしく色を変えてみたのですが・・。

今回の記事は書くのにとても苦労します。
感じたものを言葉に変える難しさ。
ありがとうございます。
20代の頃の美子様が何を思い石を積んだのか
想像してみました。

Yoshico Hino
http://dimples.main.jp/
20代のころ一度行って、賽の河原で石を積んだのを思い出しました。
「幾つもの風の塊が通り過ぎて赤い風車を回し、ここが色をなくした動かぬ一枚の絵の中ではない事を教えてくれます。」・・・なんてすてきな表現なのでしょう!
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