南アルプス最南端の光岳(てかりだけ・2591m)に行ってきました!!
植物などの詳しい報告は、後日ギャラリーに掲載する(予定)として、まずは行軍報告をしたいと思います。
8月24日(金)
薄明るくなってきた、明け方5時、いよいよ2泊3日の行軍スタート。
今回の目標地である光岳への登り口まで、まずは林道を11km歩かなくてはならない。
出発の直前まで、林道はトレッキングシューズで歩いて、登山の際は地下足袋に履き替えようと計画していたが、この行軍の案内人であるAさんに「そんなに荷物を増やしてどうする!」と一括され、ALL地下足袋にて行動することとなった。
今回私の荷物は10kgちょっと。
愛すべきウイスキーも、ビンではなく小さなスキットルに詰め替えて軽量化を図ったけれども(おい)、まだ削る部分があったか…
この最初の林道歩きがむった~りとボディブローのように足に効くが、無理せず、ゆっくりと周りの景色を楽しみ、4時間程かけて登り口の吊橋まで到着。
ここはまだまだ、ゴールではなくスタート地点。
気を引き締めなおして、高低差約1,500mの登山口に立つ。
登り口最初の試練は、ヒルの襲撃。
吊橋をわたった直後にそびえるガレ地の急斜面では、ヒルが首をふりふり待ち構えている。
「とにかく、やつらのいなくなる標高まで、止まらずに登りぬける!」
力強いAさんの言葉に、一同気合を入れて行動開始。
吊橋をわたってすぐに、何度も現場で泣かされたヒルがうようよ足元に見える。
「うっひゃ~!!」
と心の声を上げつつ、慎重かつ素早く足を運ぶ。
ここでヘタに転ぼうものなら、首筋やわき腹に食いつかれかねない。
30分後、約250mの標高差を、一人の犠牲者も無くクリア。
一山登ったかのような達成感に満たされたが、どっこい登山は始まったばかりであった。
その後もしばらく登りが続いく。
ヒルの恐怖から開放されて、周りの木々を観察する余裕もでき、地下足袋の調子も上々。
調子に乗って、パーティ最速のEさんにくっついてがしがし進んでいたら、ふいにEさんがつぶやいた。
「あ、クマだ。」
「えっ?」
私の鈍い動体視力では、はっきりと確認できなかったが、確かに右手前方、黒い影が走りぬけた。
「俺、クマ寄せ付けやすいんだよね…。」
「そういうことは早く言ってくださいぃぃぃ!」
慌てて荷物から笛を取り出し、ピーピーと鳴らす。
普段野鳥が逃げるからと、クマ鈴を持たなかったのが仇になってしまった。
その後、急な登りと、なだらかな登りを繰り返す。通称「5段登り」を一気に駆け上がり(Eさん、鬼軍曹に見えました。私が勝手についてっただけですが。)
美味しい朴葉寿司をほおばったあたりで、出発前から懸案事項だった右股関節が痛み始めた。
早朝のマラソンと、日中の業務(主に山歩き)で痛めて、医者に少しは労わってあげなさいと呆れられた右股関節。
ここ1週間、なるべく無理をかけないように気を使ってきた右股関節。
それでも、中途に治った気になって、変なストレッチでまた痛めてしまった右股関節…
ここまで来れたんだ、もう少しもってくれ~!!
標高2,418mの百叉沢の頭へ続く約40分の急斜面は、最初の10分は何とか両足で登り、次の10分は、ストックを持った両手と左足で登り、最後の20分は痛みが心地よくなり始めて、Mっ気全開で登り切った。
よく頑張った、右股関節!
さぁ、ここまで来れば、ゴールは目前。
無事到着できそうと水で喉を潤していると、直後に到着した皆様より、
「あっ!飲んじゃったのか!」
とのお声。
そういえば、案内人Aさんより、
「百叉沢の頭を越えたら、旨いビールを飲むために、ゴールの山小屋まで水分は取らない。」
とアドバイスされていたのだ。
私以外の4人は、汗をたっぷりかいても、決して水分を取ろうとしない。
うわぁ!のんべぇとして失格だ。
100万円の味のビールが、50万円まで値下がりだぁ。
そしてその後、少しでも汗をかこうとがしがし歩き、さらに痛めるけられる右股関節…あわれ。
それから約1時間後、日本最南端のハイマツ群落を抜けた先左手に、真っ白な光岩が、右手に立派な山小屋が見えた。
林道をスタートしてから約10時間、本日のゴール地点だ。
山小屋に到着すると、経営者のHご夫婦が、すぐにビールを用意してくださった。
涙が出るほど旨い。
その後なんと、Kさんの荷物の中からは、私の故郷・北海道は富良野の最高級ワインとチーズ・生ハムが登場。
流石、山歩き長期経験者は装備が違う。
素晴らしい景色と達成感に包まれながら、皆で至福のひと時を味わった。
私も次回は、15kgの荷物を背負えるようになって、色々な山頂到達グッツをもって来ようと、決意も新たに1日目の夜はふけていった。
8月25日
昨日の疲れがまだ足に残っているが、本日は光岳山頂付近の植生調査。
木本は色々と勉強したが、草本はまだまだ勉強不足(木本もだけど)。
KさんやTさんに教えてもらいながら、メモと写真で記録をとっていく。
夏の花の時期は少し過ぎてしまっていたが、それでも人がなかなか踏み入れない場所に、高山植物たちは可憐な花を咲かせている。
きのこを見ているときにも毎回思うが、どうして植物や菌類は、子孫を残すための器官である花や子実体(きのこ)を、これほど芸術的かつ個性的に作り上げるのだろう。
物言わぬ生き物達が、力強く生きて子孫を残そうとする意思がそこに凝縮されている。
8月26日
あっという間に濃密な2日間が終了し、最終日は帰る1日だ。
早朝には、懐中電灯をもって、すぐ隣のイザルガ岳まで赴き、御来光を眺めた。
到着が早かったため、最初の10分は朝焼けに浮かぶ富士山、雲海に漂う南アルプスの山々を幸運にも独り占めできた。
やがて日も昇り、大変お世話になった山小屋のH夫妻に別れを告げ、帰宅の徒に付く。
行きの登りでは、到着する事で精一杯だったが、帰りは余裕があるので、標高を下がりながらの簡単な植生調査を行った。
データを取っていくと、標高によってモミ属、トウヒ属の種が入れ替わり、ある一定地点から広葉樹が出現するのがよくわかる(人為による影響もあるが)。
調査を終了し、何とか林道も抜けて、全員無事下山。
この3日間は、本当に濃厚な勉強ができた日々だった。
この幸運な機会に感謝して、今後しばらくは、今回の調査で得た情報をまとめる作業に入る。
植物などの詳しい報告は、後日ギャラリーに掲載する(予定)として、まずは行軍報告をしたいと思います。
8月24日(金)
薄明るくなってきた、明け方5時、いよいよ2泊3日の行軍スタート。
今回の目標地である光岳への登り口まで、まずは林道を11km歩かなくてはならない。
出発の直前まで、林道はトレッキングシューズで歩いて、登山の際は地下足袋に履き替えようと計画していたが、この行軍の案内人であるAさんに「そんなに荷物を増やしてどうする!」と一括され、ALL地下足袋にて行動することとなった。
今回私の荷物は10kgちょっと。
愛すべきウイスキーも、ビンではなく小さなスキットルに詰め替えて軽量化を図ったけれども(おい)、まだ削る部分があったか…
この最初の林道歩きがむった~りとボディブローのように足に効くが、無理せず、ゆっくりと周りの景色を楽しみ、4時間程かけて登り口の吊橋まで到着。
ここはまだまだ、ゴールではなくスタート地点。
気を引き締めなおして、高低差約1,500mの登山口に立つ。
登り口最初の試練は、ヒルの襲撃。
吊橋をわたった直後にそびえるガレ地の急斜面では、ヒルが首をふりふり待ち構えている。
「とにかく、やつらのいなくなる標高まで、止まらずに登りぬける!」
力強いAさんの言葉に、一同気合を入れて行動開始。
吊橋をわたってすぐに、何度も現場で泣かされたヒルがうようよ足元に見える。
「うっひゃ~!!」
と心の声を上げつつ、慎重かつ素早く足を運ぶ。
ここでヘタに転ぼうものなら、首筋やわき腹に食いつかれかねない。
30分後、約250mの標高差を、一人の犠牲者も無くクリア。
一山登ったかのような達成感に満たされたが、どっこい登山は始まったばかりであった。
その後もしばらく登りが続いく。
ヒルの恐怖から開放されて、周りの木々を観察する余裕もでき、地下足袋の調子も上々。
調子に乗って、パーティ最速のEさんにくっついてがしがし進んでいたら、ふいにEさんがつぶやいた。
「あ、クマだ。」
「えっ?」
私の鈍い動体視力では、はっきりと確認できなかったが、確かに右手前方、黒い影が走りぬけた。
「俺、クマ寄せ付けやすいんだよね…。」
「そういうことは早く言ってくださいぃぃぃ!」
慌てて荷物から笛を取り出し、ピーピーと鳴らす。
普段野鳥が逃げるからと、クマ鈴を持たなかったのが仇になってしまった。
その後、急な登りと、なだらかな登りを繰り返す。通称「5段登り」を一気に駆け上がり(Eさん、鬼軍曹に見えました。私が勝手についてっただけですが。)
美味しい朴葉寿司をほおばったあたりで、出発前から懸案事項だった右股関節が痛み始めた。
早朝のマラソンと、日中の業務(主に山歩き)で痛めて、医者に少しは労わってあげなさいと呆れられた右股関節。
ここ1週間、なるべく無理をかけないように気を使ってきた右股関節。
それでも、中途に治った気になって、変なストレッチでまた痛めてしまった右股関節…
ここまで来れたんだ、もう少しもってくれ~!!
標高2,418mの百叉沢の頭へ続く約40分の急斜面は、最初の10分は何とか両足で登り、次の10分は、ストックを持った両手と左足で登り、最後の20分は痛みが心地よくなり始めて、Mっ気全開で登り切った。
よく頑張った、右股関節!
さぁ、ここまで来れば、ゴールは目前。
無事到着できそうと水で喉を潤していると、直後に到着した皆様より、
「あっ!飲んじゃったのか!」
とのお声。
そういえば、案内人Aさんより、
「百叉沢の頭を越えたら、旨いビールを飲むために、ゴールの山小屋まで水分は取らない。」
とアドバイスされていたのだ。
私以外の4人は、汗をたっぷりかいても、決して水分を取ろうとしない。
うわぁ!のんべぇとして失格だ。
100万円の味のビールが、50万円まで値下がりだぁ。
そしてその後、少しでも汗をかこうとがしがし歩き、さらに痛めるけられる右股関節…あわれ。
それから約1時間後、日本最南端のハイマツ群落を抜けた先左手に、真っ白な光岩が、右手に立派な山小屋が見えた。
林道をスタートしてから約10時間、本日のゴール地点だ。
山小屋に到着すると、経営者のHご夫婦が、すぐにビールを用意してくださった。
涙が出るほど旨い。
その後なんと、Kさんの荷物の中からは、私の故郷・北海道は富良野の最高級ワインとチーズ・生ハムが登場。
流石、山歩き長期経験者は装備が違う。
素晴らしい景色と達成感に包まれながら、皆で至福のひと時を味わった。
私も次回は、15kgの荷物を背負えるようになって、色々な山頂到達グッツをもって来ようと、決意も新たに1日目の夜はふけていった。
8月25日
昨日の疲れがまだ足に残っているが、本日は光岳山頂付近の植生調査。
木本は色々と勉強したが、草本はまだまだ勉強不足(木本もだけど)。
KさんやTさんに教えてもらいながら、メモと写真で記録をとっていく。
夏の花の時期は少し過ぎてしまっていたが、それでも人がなかなか踏み入れない場所に、高山植物たちは可憐な花を咲かせている。
きのこを見ているときにも毎回思うが、どうして植物や菌類は、子孫を残すための器官である花や子実体(きのこ)を、これほど芸術的かつ個性的に作り上げるのだろう。
物言わぬ生き物達が、力強く生きて子孫を残そうとする意思がそこに凝縮されている。
8月26日
あっという間に濃密な2日間が終了し、最終日は帰る1日だ。
早朝には、懐中電灯をもって、すぐ隣のイザルガ岳まで赴き、御来光を眺めた。
到着が早かったため、最初の10分は朝焼けに浮かぶ富士山、雲海に漂う南アルプスの山々を幸運にも独り占めできた。
やがて日も昇り、大変お世話になった山小屋のH夫妻に別れを告げ、帰宅の徒に付く。
行きの登りでは、到着する事で精一杯だったが、帰りは余裕があるので、標高を下がりながらの簡単な植生調査を行った。
データを取っていくと、標高によってモミ属、トウヒ属の種が入れ替わり、ある一定地点から広葉樹が出現するのがよくわかる(人為による影響もあるが)。
調査を終了し、何とか林道も抜けて、全員無事下山。
この3日間は、本当に濃厚な勉強ができた日々だった。
この幸運な機会に感謝して、今後しばらくは、今回の調査で得た情報をまとめる作業に入る。