6月1日(金)ヴィオラスペース2012 vol.21 ガラコンサート
紀尾井ホール
1.成田為三/エミール・ルドマーニ編/浜辺の歌
Vla:今井信子、川崎雅夫、鈴木 学、篠友美/Pf:関谷由美
2.バッハ/無伴奏チェロ組曲第6番BWV1012~アルマンド、ジーグ
5弦Vla:トーマス・リーブル
3.シューベルト/「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲D802(第1,3,5,6,7)
Vla:ジャン・シュレム/Pf:フランソワ・キリアン
4.シューマン/バロ・キム編/おとぎの絵本
Vla:川崎雅夫、今井信子、ジャン・シュレム、ガース・ノックス、トーマス・リーブル/Vc:辻本 玲/CB:佐渡谷綾子
5.ユングヴィルト/エレジー(2011)
5弦Vla:トーマス・リーブル
6.ノックス/Wild Animals(2011)

Vla:ガース・ノックス/Vn:藤田尚子/Vc:大宮理人/Fl:多久和怜子/バスCl:邦 篤志
7.細川俊夫/ヴィオラと弦楽のための「旅VI」(2002)
Vla:篠友美/原田幸一郎指揮 桐朋学園オーケストラ
8.エロード/ヴィオラ協奏曲Op.30(1980)
Vla:鈴木 学/原田幸一郎指揮 桐朋学園オーケストラ
今は「亡き」カザルスホールで始まったヴィオラスペース。普段はアンサンフルの内声担当が多く、ソロの曲も少なくてコンサートの表舞台に出る機会が少ないヴィオラに光を当て、様々な可能性を多角的に探り、極めて行くコンセプトと内容には当時からとても興味があったのだが、なぜか一度も聴いたことがなかった。その間にもヴィオラスペースは着実に回数を重ね、今回で21回目となる。地味な楽器を主役にしたシリーズがここまで定着したのは、このシリーズを引っ張ってきた今井信子をはじめとする日本を代表するヴィオリスト達と、カザルスホール消失にもめげず、支え続けてきたスタッフ達の熱意と努力の賜だろう。
近年、多くの若いヴィオリスト達が育ち、世界で目覚ましい活躍を遂げているのも、このヴィオラスペースの存在なくしては語れないのではないだろうか。また、ヴィオラの存在感を世の中に強くアピールし、この楽器の地位向上に一役買った功績も大きい。
さて、遅まきながら初体験となったヴィオラスペースは、ガラコンサートを聴いた。総勢7人のヴィオリスト達がソリストとして登場し、バッハから現代の最新作までを無伴奏ソロからフルオーケストラをバックにしたコンチェルトまで、常にヴィオラが主役の曲が次々と演奏され、まさしくヴィオラの饗宴という演奏会だった。前半でポピュラーな曲目を並べてお客をヴィオラの世界へ誘なったあと、後半では現代曲でヴィオラ音楽の醍醐味や可能性を聴かせるというのも、しっかりとしたプログラミングであると感じた。
前半のオープニングの「浜辺の歌」では、普段の演奏会では聴けないヴィオラアンサンブルで、ヴィオラの深くて甘い響きを聴かせたあと、リーブルがバッハの無伴奏で、求道者の趣きでひしひしと胸をふるわせた。続いて登場したシュレムは、リーブルの音とは随分違う濃くて滑らかな音色で「しぼめる花」を演奏し、ヴィオラの音色の違いを楽しんだ。そして、前半最後のシューマンでは、またヴィオラアンサンブルで柔らかく詩情溢れる調べを堪能した。
後半は全て20世紀から現代の作品。こちらはかなり刺激的で楽しめた。最初にリーブルが無伴奏で演奏した即興性に富んだユングヴィルトのエレジーも良かったが、なかでもノックスの"Wild Animals"が良かった。活きのいい拍節感のある部分とファンタジックな部分を巧みに織り交ぜ、ハーモニックスなども効果的に使い、スリリングで新鮮な音楽と演奏を楽しんだ。聴いているときは気づかなかったが、この曲はここでヴィオラを弾いていたノックス自身の作品だった。道理でノックスが乗りに乗っていたわけだ。イニシアチヴを取ったノックスのヴィオラに敏感に鋭く呼応する桐朋学園の学生ソリスト達の演奏も良かった。
続く細川作品では、篠崎友美が凝縮されたヴィオラ演奏で盛り上げたが、終始耳にまとわりつくレ(?)の音が、少々オーソドックスな現代曲という印象を与えた。現代の作品を集めた後半の締めということで、斬新な音を期待していたエロードのコンチェルトはロマンチックな調性音楽で拍子抜けした。ソロの鈴木学は存在感を発揮し、第3楽章の無伴奏の開始など、ダイナミックで説得力のある熱演を聴かせたが、オケが入ってからは曲想が急にロマンチックになってしまって、安っぽい映画音楽のようなエンディングになってしまった。少ないヴィオラ主役の作品のなかから隠れた名曲を発掘したり、優れた新曲を世に送り出すなどのヴィオラスペースの使命感は伝わってきたが。
紀尾井ホール
1.成田為三/エミール・ルドマーニ編/浜辺の歌
Vla:今井信子、川崎雅夫、鈴木 学、篠友美/Pf:関谷由美
2.バッハ/無伴奏チェロ組曲第6番BWV1012~アルマンド、ジーグ
5弦Vla:トーマス・リーブル
3.シューベルト/「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲D802(第1,3,5,6,7)
Vla:ジャン・シュレム/Pf:フランソワ・キリアン
4.シューマン/バロ・キム編/おとぎの絵本
Vla:川崎雅夫、今井信子、ジャン・シュレム、ガース・ノックス、トーマス・リーブル/Vc:辻本 玲/CB:佐渡谷綾子
5.ユングヴィルト/エレジー(2011)
5弦Vla:トーマス・リーブル
6.ノックス/Wild Animals(2011)


Vla:ガース・ノックス/Vn:藤田尚子/Vc:大宮理人/Fl:多久和怜子/バスCl:邦 篤志
7.細川俊夫/ヴィオラと弦楽のための「旅VI」(2002)
Vla:篠友美/原田幸一郎指揮 桐朋学園オーケストラ
8.エロード/ヴィオラ協奏曲Op.30(1980)
Vla:鈴木 学/原田幸一郎指揮 桐朋学園オーケストラ
今は「亡き」カザルスホールで始まったヴィオラスペース。普段はアンサンフルの内声担当が多く、ソロの曲も少なくてコンサートの表舞台に出る機会が少ないヴィオラに光を当て、様々な可能性を多角的に探り、極めて行くコンセプトと内容には当時からとても興味があったのだが、なぜか一度も聴いたことがなかった。その間にもヴィオラスペースは着実に回数を重ね、今回で21回目となる。地味な楽器を主役にしたシリーズがここまで定着したのは、このシリーズを引っ張ってきた今井信子をはじめとする日本を代表するヴィオリスト達と、カザルスホール消失にもめげず、支え続けてきたスタッフ達の熱意と努力の賜だろう。
近年、多くの若いヴィオリスト達が育ち、世界で目覚ましい活躍を遂げているのも、このヴィオラスペースの存在なくしては語れないのではないだろうか。また、ヴィオラの存在感を世の中に強くアピールし、この楽器の地位向上に一役買った功績も大きい。
さて、遅まきながら初体験となったヴィオラスペースは、ガラコンサートを聴いた。総勢7人のヴィオリスト達がソリストとして登場し、バッハから現代の最新作までを無伴奏ソロからフルオーケストラをバックにしたコンチェルトまで、常にヴィオラが主役の曲が次々と演奏され、まさしくヴィオラの饗宴という演奏会だった。前半でポピュラーな曲目を並べてお客をヴィオラの世界へ誘なったあと、後半では現代曲でヴィオラ音楽の醍醐味や可能性を聴かせるというのも、しっかりとしたプログラミングであると感じた。
前半のオープニングの「浜辺の歌」では、普段の演奏会では聴けないヴィオラアンサンブルで、ヴィオラの深くて甘い響きを聴かせたあと、リーブルがバッハの無伴奏で、求道者の趣きでひしひしと胸をふるわせた。続いて登場したシュレムは、リーブルの音とは随分違う濃くて滑らかな音色で「しぼめる花」を演奏し、ヴィオラの音色の違いを楽しんだ。そして、前半最後のシューマンでは、またヴィオラアンサンブルで柔らかく詩情溢れる調べを堪能した。
後半は全て20世紀から現代の作品。こちらはかなり刺激的で楽しめた。最初にリーブルが無伴奏で演奏した即興性に富んだユングヴィルトのエレジーも良かったが、なかでもノックスの"Wild Animals"が良かった。活きのいい拍節感のある部分とファンタジックな部分を巧みに織り交ぜ、ハーモニックスなども効果的に使い、スリリングで新鮮な音楽と演奏を楽しんだ。聴いているときは気づかなかったが、この曲はここでヴィオラを弾いていたノックス自身の作品だった。道理でノックスが乗りに乗っていたわけだ。イニシアチヴを取ったノックスのヴィオラに敏感に鋭く呼応する桐朋学園の学生ソリスト達の演奏も良かった。
続く細川作品では、篠崎友美が凝縮されたヴィオラ演奏で盛り上げたが、終始耳にまとわりつくレ(?)の音が、少々オーソドックスな現代曲という印象を与えた。現代の作品を集めた後半の締めということで、斬新な音を期待していたエロードのコンチェルトはロマンチックな調性音楽で拍子抜けした。ソロの鈴木学は存在感を発揮し、第3楽章の無伴奏の開始など、ダイナミックで説得力のある熱演を聴かせたが、オケが入ってからは曲想が急にロマンチックになってしまって、安っぽい映画音楽のようなエンディングになってしまった。少ないヴィオラ主役の作品のなかから隠れた名曲を発掘したり、優れた新曲を世に送り出すなどのヴィオラスペースの使命感は伝わってきたが。