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東京藝術大学バッハカンタータクラブ 2025年定期演奏会

2025年02月24日 | pocknのコンサート感想録2025
2月20日(木)東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京藝術大学奏楽堂


【曲目】
1.バッハ/カンタータ第30番「喜べ、あがなわれた群れよ」BWV30
S:中村真子/A:伊原ももこ/T:山崎雄太/B:小河佑樹、佐藤匠馬
2.W.F.バッハ/シンフォニア ニ短調(アダージョとフーガ)
3.バッハ/カンタータ 第21番「この身は多くの憂いがあった」BWV21
S:安部一花/T:五郎丸裕大、山崎雄太/B:鈴木薫
【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ 第30番「喜べ、あがなわれた群れよ」BWV30~第1曲(W.F.バッハ編曲版)

【管弦楽&合唱】
酒井弦太郎 指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ


藝大バッハカンタータクラブを聴くのは去年の藝祭公演がなかったので一年ぶり。今回もバッハ愛に溢れる熱い演奏に出逢えた。2曲のカンタータはどちらも2部構成の大作で、それぞれ2019年と20年の定期演奏会でも取り上げられた名作だ。

第30番はオープニングに相応しい喜びに溢れた合唱で始まる。喜びがほとばしり、勢いよく躍動するオケと、嬉々とした瑞々しい歌声で唱和する合唱による第1曲からワクワク感を高め、全曲が喜ばしい気分で満ち満ちた。バハカンならではのこぼれる笑顔で歌う姿が少なかったような気がしたが、聴こえる歌からは笑顔を感じることができた。

次のフリーデマン・バッハのシンフォニアがまた良かった。初めて聴くこの曲は緻密でシビアな音楽で、深いところで悲愴な感情がうごめいているよう。第2楽章のフーガに入ると音楽はさらに深みにハマっていった。酒井弦太郎さん指揮のオケは、静かななかにも熱を秘めた演奏で、この音楽のデモーニッシュな空気を引き出していた。

プログラム後半はカンタータ第21番。厳かで沈鬱な空気が支配する第1部と、喜びと希望の光に溢れた第2部という2部構成のなかにも起伏が多く、複雑に揺れ動く音楽だが、酒井さん指揮のバハカンは音楽の陰と陽を大きく捉え、このカンタータが何を伝えようとしているかを、丁寧で熱のこもった演奏で聴かせてくれた。器楽も声楽も一つ一つのフレーズを大切にして、思いを注ぎ込んでいるのが目からも耳からも伝わってくる。

トランペットやティンパニも加わった華やかな終曲では「賛美、栄誉、称賛、パワー・・・」とたたみかけ、喜びと確信に溢れた演奏にワクワク感が高まりジーンときた。この「ジーン」を味わえるのがバハカンの最大の持ち味だ。学生達の音楽に対するひたむきな姿勢、バッハへの並々ならぬ愛あってのものだろう。今夜のメンバー総出によるアンコールでも、バハカンの愛のパワーに包まれる幸せを噛みしめた。音楽にじっくり向き合い、温め、丁寧に積み重ねて表現するバハカンの姿勢に終始共感した。

最後にソリストについて。どのソリストも、それぞれの個性も映える歌唱でバッハの難しいレチタティーヴォやアリアを立派に歌った。特に印象に残ったのは、30番で堅実な存在感を示し、メリスマもしっかり聴かせたバスの小河佑樹さん、清澄な声でくっきりとした瑞々しい歌を聴かせてくれたアルトの伊原ももこさんとソプラノの中村真子さん、そして、21番のデュオで包容力のあるイエス役を歌ったバスの鈴木薫さんとのデュオでのソプラノの安部一花さんの歌は、僕の心を最も捉えた。その決め手は、艶やかで美しい声を乗せた言葉に対する姿勢。安部さんは精霊の役になり切って、歌詞を心からのメッセージとして聴き手に語りかけ、歌いかけていた。ドイツ語の発音も美しく、子音もはっきり聞こえて言葉の意味が明確に伝わった。

歌い手が言葉に真剣に向き合って感じたことをどう伝えるかが大切なのと同様に、これはオーケストラにとっても大切であるということも今夜の演奏は伝えてくれた。なかでもチェロを演奏した谷川萌音さんは、21番の第1部では悲痛な表情を浮かべて心の奥底からの吐露を聴かせ、第2部では明るい表情で軽やかに踊るように演奏していた。バハカンには、こうしてバッハに心から共感して奏でる姿勢が伝統として息づいている。演奏会の随所で活躍したオーボエの倉沢唯子さんの演奏も、歌詞を伝えるかのように訴えて来た。

バッハを愛する若きアーティスト達によるハートがストレートに伝わる心に残る演奏会だった。

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