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2012年5月B定期(メルクル指揮)

2012年06月01日 | N響公演の感想(~2016)
5月31日(木)準・メルクル指揮 NHK交響楽団
《5月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.ドビュッシー/バレエ音楽「カンマ」
2. ドビュッシー/サクソフォンとオーケストラのための狂詩曲
Alt-Sax:須川展也
3. ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
4. ドビュッシー/C.マシューズ編/前奏曲集 第1巻から「パックの踊り」、「ミンストレル」第2巻から「水の精」、「花火」
5.ドビュッシー/アンセルメ編/古代のエピグラフ
6.ラヴェル/バレエ音楽「ラ・ヴァルス」

今月メルクルが担当するB定期のプログラムはドビュッシーとラヴェル。メルクルのドビュッシーといえば、彼がN響にデビューした当時聴いた「牧神」の透明でデリケートな演奏が今でも記憶に残り、自然と期待が膨らむ。

今夜プログラムに上がったドビュッシーの曲は、どれもが他の人によるオーケストレーションで、前奏曲集以外は普段あまり耳にすることのないマイナーな作品が多かったが、これらの曲でもメルクルは、N響から艶やかで眩い響きと、柔らかなニュアンスを引き出した。

最初の「カンマ」からそうしたいい音が全開で伝わってきた。透明で研ぎ澄まされた響きで、鮮やかな音像が明瞭に描かれる。音量が膨らむとき、ピュアな響きの鮮度は一層冴えて輝きを加える。こういう響きはN響ならではの魅力で、メルクルの指揮で過去に聴いた充実の名演をいろいろ思い出して嬉しくなった。

次の「サクソフォンの狂詩曲」でもそんないい音がした。サックスの須川さんもいい音で雄弁で活きのいい演奏を聴かせくれたが、この曲はサックスが主役のはずなのに活躍の場が少なくてもったいなかった。「亡き王女」でもオケからはいい音が聴けたし、今井さんのピュアなホルンは聴きものだったが、全体にもうひとつファンタジーが欲しい。

小品から構成される「前奏曲集」と「古代のエピグラフ」はどちらもピアノ曲の編曲だが、自然で柔らかな響きがした「古代のエピグラフ」が印象に残った。メルクル/N響は前半で聴かせた鮮やかな響きとはまた別の、空気のように軽くて柔らかな響きを聴かせてくれた。肌に感じるか感じないかといった程度の微風に綿毛がふわっと舞い上がるようなニュアンス。メルクルのセンスと、それを敏感にキャッチして応えるオケとの絶妙なやりとりを聴いていたら「遊戯」が聴きたくなった。

最後の「ラ・ヴァルス」では、それまでの演奏で聴かせた艶やかで輝かしい響きと、柔らかな響きがどちらも曲中に散りばめられ、更に甘く芳醇な香りを加えた絵巻物の世界を繰り広げた。アンサンブルも一段と冴えを見せ、オケのメンバーが演奏に乗っているのが目からも耳からも伝わってきた。巧いしいい演奏だったが、終盤では更にテンションを増幅して心を鷲づかみにするほどの興奮の渦中へ引き込んでもらいたかった。

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