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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル2017 (8/27)

2017年09月01日 | pocknのコンサート感想録2017
1980年から毎年行われている草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバルを初めて訪れたのは1983年。この時は合唱クラスに参加して、バーダーの指揮の下、ヘフリガー氏や伊原直子さんらのソロと共にシューベルトのミサ曲を歌った。

あれから34年。合唱に参加したのは最初の2回だけだったが、大学時代の恩師の関先生の別荘に泊まらせて頂き、先生と共にコンサートやマスタークラス、ゲネプロを聴くのが毎年の恒例。今年も8/27と8/28の2日間、2回のコンサートの他、ホルンのヤヴールコヴァーのマスタークラスとピアノのヒンターフーバーの公開レッスンを聴いた。

今年の音楽祭のテーマは「モーツァルトの奇蹟~過ぎゆく時を超えて」。ウィーン時代のモーツァルトにスポットを当て、同時代の他の作曲家の音楽も交え、「立体的にモーツァルトの奇蹟(ミラクル)を見つける旅」がコンセプト。ウィーンとゆかりの深い演奏家が集まるこの音楽祭が最も得意とするプログラムが組まれた。

8月27日(日)カール=ハインツ・シュッツ フルート・リサイタル/モーツァルトから武満まで
草津音楽の森国際コンサートホール

【曲目】
1. C.P.E.バッハ/ソナタ 変ロ長調 Wq.161-2
2. M.ハイドン/ディヴェルティメント ハ長調 P.98/MH179
3.シューベルト/アルペッジョーネ・ソナタ イ短調 D.821(フルート版)
4. メシアン/黒つぐみ
5.武満 徹/雨の呪文
6.モーツァルト/フルート四重奏曲第3番ハ長調 K.Anh.171(285b)
7.モーツァルト/フルート四重奏曲第4番イ長調 K.298

【演 奏】
Fl:カール=ハインツ・シュッツ/Cl:四戸世紀/Harp:篠崎史子/Pf:高橋アキ/Vib:山口恭範/Vn:パオロ・フランチェスキーニ(1)、ウェルナー・ヒンク(6,7)/Vla:ロベルト・バウアーシュタッター/Vc:タマーシュ・ヴァルガ/Cem:クラウディオ・ブリツィ


今日のコンサートは天皇皇后ご臨席ということで厳重な警備体制が敷かれ、会場前の駐車場は閉鎖。離れた駐車場からシャトルバスで会場へ行き、入場の際は金属探知機での手荷物検査が行われた。両陛下は後半で入場。

コンサートは、主役にウィーン・フィルの首席フルート奏者のシュッツを迎え、エマヌエル・バッハから武満までのフルートがメインの多彩なプログラム。シュッツは2015年に草津のマスタークラスを聴講した際、「これまでに聴いた名手と呼ばれるフルーティストのなかでも、間違いなく屈指のフルーティスト」と賛辞を送っているが、ソロをじっくり聴くのは初めて。そして、なんとも言えない美しく品のある音色と滑らかな歌い回しに終始魅了され、一昨年の好印象に新たな感銘が加わった。

シュッツが使用しているフルートは金色に輝いているが、そこから発せられる音もまさに「黄金の輝き」を放っていた。ゴージャスというより雅やかな光が、アンサンブルのなかで浮き立ってくる。そして、細やかな表現から息の長い大きな表現まで、途切れることのないグラデーションで、無理なく自然な歌を生き生きと奏でる。余計な力がどこにもかからず、スッと音が立現れ、達筆の筆記体の文字が描かれるようにスラスラと音が紡がれて行き、それに合わせてキラキラした金の微粒子が振り撒かれる。天使とか女神が魔法のステッキを優雅に振り回す度にキラキラの軌跡が描かれて行くようだ。

エマヌエル・バッハでも、メシアンや武満でも、この存在感と魅力の質は変わらない。本来は専らチェロが4本の弦を駆使して様々な音色やテクスチュアで表現するシューベルトのアルペジョーネ・ソナタを、シュッツはフルート1本で縦横無尽に、たっぷりと深い情感を湛えて実に雄弁に、そして美しい様式を保ちつつ表現し、聴き手を幸福へと導いた。

アンサンブルとして最も印象に残ったのは最後のモーツァルトの2作品。ウィーン・フィルの仲間として活動してきた4人の、間の取り方やアゴーギクは本当に自然で、理屈抜きに要所が「ストン」と収まるべきところに収まって行く。ヒンクのヴァイオリンは少々危なっかしさもあるのだが、この息づかいで他の3人を導くことでは貢献し、これぞ「あうん」の呼吸でアンサンブル全体が楽しげに、嬉しそうに息づいていた。バウアーシュタッターのヴィオラとヴァルガのチェロは、この2曲に限らず名人芸の巧さ。「歌」や「語り」に長け、リズムはしっかりと締め、アンサンブルに色、香り、安定感を与えていた。

終演後は天皇皇后をお見送りしてから一般人は解放され、それからシャトルバスを待って実際に帰路につけたのは終演1時間もあと。お見送りのため出口で待っていてもお二人はなかなか出ていらっしゃらなかったが、ロビーでこのときとばかり両陛下に話しかけてくる来賓や関係者のお相手をしていたようだ。この辺りはもっと迅速に事を進めるか、先に聴衆を帰すなど、主催者(警察?)には一考を願いたい。

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