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ピエール=ロラン・エマール ピアノリサイタル

2017年12月09日 | pocknのコンサート感想録2017
12月6日(水)ピエール=ロラン・エマール(Pf)
東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル

【曲目】
◎ メシアン/幼子イエスにそそぐ20のまなざし

これまでに何度もワクワクするリサイタルを体験させてくれたピアニストのピエール・ロラン・エマールが、たった一人で、想像を絶するほどの記念碑的な音によるパフォーマンスを成しとけた。メシアンの、というよりこの世に存在するピアノ作品のなかでも難曲中の難曲と言われる2時間を超える大曲を、スタミナも集中力も全く途切れることなく、聴き手の心を鷲掴みにし続けた。僕はこの曲をちゃんと聴いたことはなく、昨夜、ほんの一部分をYouTubeで予習しただけだったのだが、今夜のライブでは、音楽と演奏の神々しい光とパワーに圧倒され続けた。

敬虔なカトリック教徒だったメシアンは、創作の大半が信仰と深く結び付いていて、この作品ももちろんそれに属するが、メシアンの、幼子イエスに対する神聖な畏怖の念から、華々しい賛美まで、あらゆるシーンや思い、とりわけ「愛」が、あらゆる形でこの曲に込められていることを感じた。そして、エマールはこの重要なメッセージがぎっしりと詰まった音楽から、最大限の意味と魅力を引き出したと言える。

それは、見たこともないような大伽藍の空間が、オルガンの大音響とステンドグラスから降り注ぐ、彩り鮮やかな光で満たされたような超自然的な荘厳な世界から、粗末な飼い葉桶に寝かされた幼子イエスの、透明で瑞々しく柔らかな肌と、小さな寝息を思わせる極限のデリケートな精神世界まで、両極端を自由に行き交い、一つの世界を創り上げている。

エマールのピアノ演奏からは、テクニック的な凄さへの感嘆を跳び越えて、神の奇蹟をリアル体験させるような魔力が伝わってくる。宇宙が発する音と光のスペクタクルの中に身を置いているような気持にさせると同時に、慈悲深い、全てを温かく包み込む大きさが感じられ、「神様の手って、こんな風に大きく、柔らかく、温かいに違いない」と思うような、すべてを委ねたくなる大きな愛と包容力がある。これこそ、メシアンがこの作品に込めたメッセージではないだろうか。

エマールがインタビューで「東京オペラシティコンサートホールの持つカテドラルのような音響空間は、この作品の精神的な世界にあっているように思う」と述べていたが、このホールが、奇蹟が行われる神聖な場のようにも感じられた。

終演後は熱い拍手とブラボーがいつまでも続いた。前半の10曲を聴き終えて休憩に入った時点で完全に圧倒されてしまい、すぐに買っておいたCDのジャケットに、終演後、エマールからサインをもらった。これ以上は言葉にならない。


ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル ~2012.11.21 トッパンホール~
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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