貫之集 629
ゆふされば ひとまつむしの なくなへに ひとりあるみぞ こひまさりける夕されば 人まつ虫の 鳴くなへに ひとりある身ぞ 恋ひまさりける 夕方になると恋人を待つかのように鳴くまつ虫
貫之集 603
きえやすき ゆきはしばしも とまらなむ うきことなげく われにかはりて消えやすき 雪はしばしも とまらなむ 憂きこと歎く われにかはりて...
貫之集 595
あめやまぬ やまのあまくも たちゐつつ やすけくもなき きみをしぞおもふ雨やまぬ 山の天雲 立ちゐつつ やすけくもなき 君をしぞ思ふ...
貫之集 587
きみこふる なみだはあきに かよへばや そらもたもとも ともにしぐるる君恋ふる 涙はあきに かよへばや 空も袂も ともにしぐるる...
貫之集 567
あきかぜの いなばもそよに ふくなへに ほにいでてひとぞ こひしかりける秋風の 稲葉もそよに 吹くなへに ほに出でて人ぞ 恋しかりける...
貫之集 487
年のつごもりゆくつきひ かはのみづにも あらなくに ながるることも いぬるとしかな行く月日 川の水にも あらなくに 流るるごとも いぬる年かな...
貫之集 415
暮るる年ことしはや あすにあけなむ あしひきの やまにかすみは たてりとやみむ今年はや 明日に明けなむ あしひきの 山に霞は 立てりとや見む...
貫之集 403
おなじ御時の内裏の仰せ言にて元日けふあけて きのふににぬは みなひとの こころにはるぞ たちぬべらなる今日あけて 昨日に似ぬは みな人の 心に春ぞ 立ちぬべらなる...
貫之集 361
山里の家はべりけるに、水のうへに木の葉落ちて流るやまちかき ところならずは ゆくみづも...
貫之集 268
延長七年十月十四日、女八宮、陽成院の一の親王の四十賀つかうまつるときの屏風、調ぜさせた...
貫之集 266
しらゆきに ふりかくされて むめのはな ひとしれずこそ にほふべらなれ白雪に 降りかくされて 梅の花 人知れずこそ にほふべらなれ...