漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 603

2024-12-09 05:54:22 | 貫之集

きえやすき ゆきはしばしも とまらなむ うきことなげく われにかはりて

消えやすき 雪はしばしも とまらなむ 憂きこと歎く われにかはりて

 

本来消えやすい雪もしばしの間消えずにとどまってほしい。憂いを嘆いて消えてしまいそうな私の代わりに。

 

 同時代の歌人の躬恒と忠岑に、

 

恋するに 消えかくる身と 春たちて 降りくる雪と いづれまされり (躬恒)

恋するに 消えかへるとも 身は失せじ 春くる雪の あとはとまるや (忠岑)

 

という問答があり、本歌はこれを踏まえたかのような作ですね。
 この歌は、玉葉和歌集(巻第十四「雑一」 第2042番)に入集しており、そちらでは第四句が「うきことしげき」とされています。

 



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