きえやすき ゆきはしばしも とまらなむ うきことなげく われにかはりて
消えやすき 雪はしばしも とまらなむ 憂きこと歎く われにかはりて
本来消えやすい雪もしばしの間消えずにとどまってほしい。憂いを嘆いて消えてしまいそうな私の代わりに。
同時代の歌人の躬恒と忠岑に、
恋するに 消えかくる身と 春たちて 降りくる雪と いづれまされり (躬恒)
恋するに 消えかへるとも 身は失せじ 春くる雪の あとはとまるや (忠岑)
という問答があり、本歌はこれを踏まえたかのような作ですね。
この歌は、玉葉和歌集(巻第十四「雑一」 第2042番)に入集しており、そちらでは第四句が「うきことしげき」とされています。