占星術への道-誕生史、星見の作法

・占星術の基礎-星見の作法とは?
・今も多くの人を魅了する占星術
・いつ、どこで、どのように生まれたのか?

<5> 1章 メソポタミア /シュメール・アッカド (紀元前4000-2000年頃)

2021-03-07 21:41:28 | 占星術への道-西洋占星術の誕生史

図3.方解石の円筒印章(紀元前3000年) 図4.緑色岩の円筒印章(紀元前2300年頃)、アッカド出土。©大英博物館


 シュメール人は、紀元前4000年代の初め頃、東方から南メソポタミアに入った遊牧民だった。シュメールの主要都市がウル、ニップール、キシュ、ラーサ、ウルクに開かれ、紀元前3200年頃に繁栄していた。また、紀元前3300年頃に文字が発明された。紀元前3000年には、アッカド人という別のセム語を話す民族が、北部チグリス・ユーフラテス谷(図2)へ移ってきた。

 太陽と月と金星(最も容易に観察できる惑星)は古代シュメールでは神あるいは神の住み家と目されて、崇拝されていた。それを示す古い証拠が円筒印章に残されている。文字が発明される数世紀も前のことである。円筒印章は2~3インチの円筒状の石で、装飾を施し、人物を彫刻したもので、粘土などの上で回転させると模様が浮き出て、書類や財産に個人の権威の象徴である印を付けることができた。光り輝く太陽、三日月、そして金星が8尖頭星として描かれ、よく使われていた。

 図3の方解石の円筒印章は神殿の正面を描いており、門柱には金星の女神イナンナのシンボルが刻まれている。2頭のヤギと羊が控え、まわりには神殿献酒に使用された4つの注ぎ口がある壺があしらわれている。2匹のサソリに蛇もいるが、これらは多産のシンボルである。

 この宇宙は「天-地」(アンAn-キki)から成っているというのがシュメール人の宇宙観である。地は平らで静止した円盤(すなわち山)で、天はがっちりとした丸天井で囲まれた空間である。星は地にかかるアーチ状の道に釘づけにされていて、このアーチの道を通って太陽と月が行き来するとされた。天と地の間には、気、つまり風があり、天-地を無限で永遠の海が囲んでいた。シュメールの神々は擬人化され、人間の姿で、人間の特性を備えていたが、目に見えず超人的な存在だった。

宇宙の創造:


1. 初め、原初の海があった。この海は永遠の存在で、擬人化されて女神ナンムとされた。ナンムは水の神エンキを生み、さらに天アン(アンは男性の天の神)と地キ(キは地の女神)を結ぶ宇宙の山も生んだ。

2. 天アンと地キが結合して気の神エンリルが生まれた。この気の神により母なる地キと父なる天アンは離れ始めた。

3. まだこの世は完全な暗闇の中にあったから、気の神エンリル(Enlil)はシュメール人にとって重要で神聖な月の神ナンナ(Nanna)を生み出した。そして、今度は月の神が太陽神ウツと女神イナンナ(Inanna)(後には、金星と同一視される)を生んだ。


人間の創造


1. 気の神エンリルが今度は母神キと結ばれ、水の神エンキの助けを得て、植物と動物を造った。

2. 水の神エンキは母神ナンム、つまり、天、地および他のすべての神々を生んだ女神ナンム(Nammu)に人間を作る方法を教えた。人間は、女神ナンムと地の神キと水の神エンキが力を合わせて作り出した最後の創造物である。


 紀元前3000年代の中頃になると、何百もの神々(少なくとも神と言う名前がついているもの)が誕生していた。重複しているものも多かった。シュメールの神々で重視されたのはアン(天の神)、キ(もしくは、ニンフルサグ、ニンマ、ニントゥ。地の女神)、エンキ(水の神)、そしてエンリル(気の神)といった創造神であった。次に重要なのは、ナンナ(月神)、ウツ(太陽神)およびイナンナ(金星の女神)という天体神で、他に穀物や家畜の神のような余り位の高くない神々もいた。

 各都市国家はそれぞれの神を崇めていた。紀元前3000年、ウルク(エレクまたはワルカとも)では、アン(あるいはアヌ)がメソポタミアの神々の中の最高神だった。イナンナ(愛の女神)も崇拝されていた。その後、都市国家ニップールは、気の神(エンリル)の下でその地域の精神面での中心となった。ウルでは、ナンナあるいはシンという月の神が支配し、エリドゥではエンキが支配していた。ナーゲル(冥界の王。後に土星とされた)はクタKuthaで崇拝されていた。ラーサとシッパーではウツ(太陽神)が最高神だった。

 アッカド人はシュメールの神々を継承したが、アッカドでは別の名前が使われた。ウツ(太陽神)はシャマシュになり、水の神で知恵の神であるエンキはエアとなった。イナンナ(愛、豊穣そして戦争の女神)はイシュタルになり、ナンナ(月神)はシンとなった。ニップールのエンリル(あるいはベル)はバビロンの主神のマルデュックとなった。この神はアッカドおよびその後のバビロニアの神々の中での最高神となった。

 図4のアッカドの緑色岩円筒印章はアッダの書記が使ったものだ。弓を持った狩猟の神が左側にいる。その女神イシュタルは武装し、翼を背にし、日付の束を持っているのが見える。太陽神シャマシュは東の山々を切り開いている。雄牛が水の神エアに付き添い、一羽の鳥が表裏の顔のある従者の近くにいる。

 神々の名前や支配力はさまざまな要因、たとえば誰が誰を征服したかによって、時代と共に頻繁に変わった。

福島憲人・有吉かおり p.5



最新の画像もっと見る

コメントを投稿