まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

松岡旅館の見学

2019-02-08 23:31:26 | ディテール
いったん連載が終わるとなかなか次のが書き出せない・・・(汗)
単発の記事を。。。

先日、大ナゴヤツアーズの「大門ツアー」に参加して、名古屋の中村遊廓跡に残る妓楼建築、旧松岡旅館を
見学してきた。ようやく。。。


中村遊廓エリアはこれまでにも数回は歩いているので特に珍しいものはなかったが、トンネル路地のような
大門小路という飲み屋街を通り抜けるルートは面白かったな。成人映画館になっている中村映劇は健在。
屋根まわりに施された装飾に、唐草に擬態した「旭」「座」の二文字が紛れているのを10年前に見つけたが、
今も意外と気づかれていないようだ。

しかし最近まで残っていた立派な妓楼建築がこの1年以内にバッタバッタと取り壊され巨大な更地になっているのが目立つ。。。
単体でちょっとした工場跡地ほど大きな敷地はファミリー向けのマンションを建てるのに申し分ないだろう。
しかも名古屋駅まで徒歩15分程度という便利な立地。遊廓があったという土地の記憶は地域の人からすれば
早く消し去りたいものかもしれず、これからもこの流れは止められないだろうが・・・
稲本のような風格があって独特の景色を作っていた建物が跡形もなく消え去り、茫々たる空間にはまもなく
ありふれた建物が建つのだろうと思うと、何とも寂しい気分になる。。。

そんな中で、往時の姿のまま、デイサービスセンター「松岡健遊館本館」として使われている元松岡旅館は、
理想的な活用とは言い難いがまだ幸運だろう。元は大門で最高格式の場所にあった4軒の妓楼だった。










大広間へ。ここは今も日常的に使っているのか、比較的新しくきれいに改修済みのようだ。


老松の描かれたふすまを開けると巨大な神棚が現れた。


舞台の方には変わった材の床柱や、一枚の板から彫りだした透かし彫りのらんまなど。そして上を見上げたところにも彫刻が!






男子トイレの床にあったクジャクのモザイク画も古いものだろうか。


客室は1室ごとにすべて違う意匠となっており、凝ったつくりとなっている。これらは売春防止法施行後に料理旅館「松岡西店」として
再出発した時に改修したものと想像する。しかし今はあまり使われている気配がなく物置のようになっている部屋も。。。








中村遊廓は1920(大正9)年から区画整理が始まり、1923(大正12)年から営業開始したとか。
湿地帯だった土地を埋め立てるのに土を取った場所が「遊里ヶ池」という人工の池となり、後に中村日赤病院が立地した。
廊下にはアールデコ調の手すり(?)は創建当初からのものだろう。




こちらのステンドグラス入り3連アーチ窓には驚いた!さっき通ってきた廊下には窓がなかったが・・・
聞くとあの内側はデッドスペースのようになっていて入れないとか。内側から見てみたいなぁ。。


窓枠にはふっくらとして味わいのある青色の工芸タイルが貼られている。


中庭を囲んでぐるりと北側の棟に回ってきた。こちらにもそれぞれ趣向を凝らした客室が並ぶ。


鯛と海老のおめでたい模様の欄間。


一部洋風の部分もあった。




象嵌の模様が施されたドアは何の部屋だろう。中を覗いてみると隠れ家のようなほんの小さな部屋だった。
寄せ木の床やひし形の窓の桟などおしゃれだが、今は例によって物置に。。。


ドアのガラスを内側から見ると、きらきら、宝石のよう。


ぐるっとひとまわり歩いてきた建物に囲まれた中庭を望む。庭も、人口の滝のような絶壁が作られていたりして
随分手の込んだものとなっている。青緑色の屋根瓦も美しいな。




デイサービスはこの階段の下、1階だけが使われているようだ。ま、年配の人にわざわざ階段を上らせることはないな。
元旅館である建物を生かして美しいお庭を眺めながら食事やお風呂などが楽しめる施設のようだ。




見学を終えてから最後に、向かいのピアゴの駐車場から松岡旅館を見下ろす。
大阪の飛田などとも共通する中庭を囲む妓楼建築の建物配置がよく分かる。
個人的にはこういう特色のある建物、特色のある「場所」の記憶は、土地の個性として魅力になると思うのだが・・・
外部からの勝手な見方かもしれない。この建物もこれからいつどうなるかわからない。
まぁとにかく、風前の灯のギリギリのタイミングで貴重な建物を見学できたことはとても幸運なことだ。
普通なら見せたくないような物置場所も含め自由にゆっくり見学させて頂いた松岡健遊館さんの好意には本当に感謝である。

→松岡旅館の物語について書かれたサイトがあった。こちら

続く

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