入院中にしっかり本が読めるかなと思っていましたが、
なかなか集中できず、やっと一冊読めただけ。
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明治時代、女性の職業といえば、
女中奉公・子守・産婆・髪結い・農業などが一般的で
教養ある女性は、教師か医師くらいしか選択肢がなかったが、
職を得たら得たで奇異な目で見られ、居場所がなかった。
ところが明治20年代ごろ、婦人記者という新たな職業が登場した。
これは女性読者の増加に伴い、女性向け記事が必要となったためだ。
といっても、非常に狭き門ではあるが、回ってくる仕事といえば、
アイロンのかけ方、シミの抜き方、ファッション関係の読み物、著名人のお宅訪問ばかり。
ところが、そんな婦人記者の仕事に、
邪道ながら風穴を開ける企画が誕生した。
それが「化け込み」である。
化け込むとは、「本来の素性を隠して、すっかり別人のさまを装う。別人になりすます」こと。
つまり変装してさまざまな場所に入り込み、内実を記事に書いてスッパ抜くという手法である。

(その頃は、プライバシーもへったくれもなく、スッパ抜かれた人は「やられた!」と臍を噛むのみ)
女性で最初に化け込みを行った「大阪時事新報」の下山京子はこの企画で大当たりし、
新聞の売り上げを倍増させ、他紙も揃って追随する事態になる。

空前の化け込みブームがやって来たのだ。
本書には他にも数人の女性記者が登場するが、彼女らは皆、類いまれな好奇心とバイタリティーに溢れている。
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文明開化の波に乗ろうとする明治の女性は、
強い差別に抗わないととても世間に受け入れられない時代でしたが、
それでもやろうと言う逞しい女性たちには感服するばかりです。
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