ラマダンに飛び入り参加
1995年1月30日
昼過ぎの便でジョグジャカルタに向かうことにした。
その前に、腹ごしらえ。 外に出るのもめんどうなのでホテルですますことにした。いつもは夕食時、飲み物はビール。インドネシアでは決して水は飲まないように気をつけていた。
ホテルでのLunch、まさか昼間からビールでもないので、おとなしくナシゴレン(インドネシア風焼き飯)を食べていた。ウェイターが水を置いていったが、無視して、昼からの観光プランを考えていた。食事が終わり、さてそろそろタクシーを呼ぼうかなと思いながら、無意識でテーブルの水を一口飲み、はっと気がついた時はもう遅かった。
飲んでしまったことは仕方がないので、とりあえず忘れることにして空港に向かった。
国内線のガルーダインドネシア航空は、案の定1時間遅れで出発した。
ジョグジャカルタ(Yogyakarta)の空港につくと、マイクロバスでツアーガイドが待ってくれていた。お客は一人だけの大名旅行、ガイドも親切で、2日前に予約したとは思えないほどスムーズに手配が進んでいた。やはり、観光客が多く手馴れているのだろう。ジョグジャは古い歴史のある町で、日本で言えば奈良のような所。まだ時間が早いので、ホテルに行く前にプランバナンを見物することにした。
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ここはヒンズー教の寺院群で、中央にシバの神が祭られている。向かい側の寺院の中には牛の石像が祭られており、ヒンズー教では牛を神聖なものとして食べない理由がわかる。モスリム(イスラム教徒)が豚を不浄なものとして食べないのと好対照だ。
ホテルは、ジャカルタの薄汚れた木賃宿と違い、立派な観光ホテル。ホテルのすぐ前にある旅行代理店で翌日の予定を確認し、”See you next morning.”(また明日。)と言って別れた。
夜は、ガムランの生演奏を聞きながら食事をし、一人旅とはいえ、ゆったりとした贅沢を味わっていた。ところが、その夜、腹の調子が悪くなり、ついに熱も出てきて、完全な食中毒状態になった。正露丸を飲んでみたが、まるっきり効き目なし。ホテルに連絡するほどでもないと、ただベッドでひとり苦しんでいたが、翌朝になっても治る気配なし。仕方なく、旅行代理店に出かけて当日の予定をキャンセルした。元気をつけるために、食事だけはとろうとレストランに行ったが、食欲はなく、食べた後はまた下痢して、とりあえず一日中ベッドの中で過ごした。
翌朝、外がうるさいので5時ごろに目がさめた。今日からラマダン(イスラム教の断食月)だ。この期間約1ヶ月、モスリムは、日が昇る前に食事をし、日中は一切食事も水もとらない。つばも飲みこまないと聞いた。よし、俺も付き合おう。幸い、熱は下がったので、食事さえしなければ下痢もしない。昼過ぎの飛行機には何とか乗れるだろう。
朝の8時ごろ、ホテルに旅行代理店の人が来て、「元気になったら、昨日の予定の所に行って見ませんか。せっかくですから、ボロブドール(Borobudur)は見て行ったほうがいいですよ。」と誘ってくれた。食事をしていないので、足はふらつくけれど少し元気は出てきたので、お言葉に甘えることにした。それにしても親切なガイドだ。今日は、初日のおじさんは別の予定が入り忙しいので、女性のガイドさんがついてくれることになった。今日もまたお客はひとりだけ、これで儲けになるのかな。
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ボロブドールは、カンボジアのアンコールワットと並び賞されるほどの仏教遺跡で、ジャングルの中に発見されて掘り起こされ、修復される様子を記録写真で後日見たときは、実物を見たときよりも感動した。なんてことだ。事前に十分勉強して行けば、もっと見る目も違っただろう。
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ガイドは、日本語を勉強しているとのことで、結構日本語が上手だ。各円壇の中央に立っているのはストーパ(日本で言うなら卒塔婆)で、実は男性のアソコを表しているのです、と説明してくれた。
(親切なガイドさん)
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朝もやのジャングルの中にそびえる遺跡は雄大で、人影も少なく、ゆっくりと見学することができた。
日が高くなるにつれ観光客が増え、その中に日本人も数人来ていた。日本人同士、こんな異国の地で顔をあわせたら、会釈ぐらいすればいいものを、なぜかよそよそしい。(これ以後、どこに旅行に行っても同じ印象を受けた。)
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ボロブドールから、マイクロバスでそのまま空港まで送ってくれた。更に、このガイドさん、「飛行機が出発するまで見送ります。」と言って、そのままジョグジャの空港で出発時間まで一緒に待っていてくれた。最後の最後まで、なんて親切なガイドさんだろう。今時こんな人いないよ。
(後日談)
下痢は、シンガポールに帰っても1週間治らず、いつもの杉野クリニックに言って事情を話すと、「それは、水にやられましたね。抗生物質を処方しておきます。」と Antibiotic をくれた。これを飲むと、あっという間に治ってしまった。こんなことなら早く来ればよかった。
その後、シンガポールでは、しょっちゅう下痢をしたが、あわてず騒がず、抗生剤一発で直していた。もちろん、正露丸は全く効き目なし。
あるとき、会社の診療所で ”Will you give me antibiotics?”(抗生物質もらえる?)とやったところ、ここは許可がないので処方できない、代わりにこれを試しなさいとくれたのが、真っ黒いタブレット。単なるカーボンのかたまり。整腸作用があると言う。活性炭が腸のVirusを吸着するのだろうか。これを試すと、1日で便秘になってしまった。中国人は加減を知らないのだろうか。少し効き目が強すぎたようだ。
(インドネシア おわり)
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