安倍総理の退任会見の際に「おまけ」のように語られた「敵基地攻撃能力の保有」。
退任会見を聞いてすぐに「安倍総理の退任などよりよっぽど問題じゃないか」とブログで書きました。
そのことが地味にですが問題として取り上げられ始めています。
※もうひとつおまけの様に語られた「コロナのワクチンを全国民分確保」も、治験中断などのニュースとともに問題提起されていますが、それはまた後ほど。
「ミサイル攻撃されることをただ待っていて、本当に国土を守れるのか」という主張が、敵基地攻撃能力の保有の根拠です。
聞く分には力強いし、日本を守るための必要な話にも聞こえますが、はたして本当にそうでしょうか?
本当に有事が迫っている時に、「攻撃されることを甘んじて待つ」というのは確かに馬鹿げているかもしれません。
でも実際に「敵基地を先に攻撃」することができるものでしょうか。
どんなに相手が攻撃準備を整えていたとしても、戦争というのは「先に攻撃した方が開戦」することになるのは歴史が証明しています(先に攻撃するには「宣戦布告」する必要があるから。しなければ真珠湾と同じただの奇襲攻撃)。
例えば北朝鮮がミサイル発射準備を整え、いつ発射するかわからない状況の時に
「撃たれる前に撃たないと間に合わない」
と言って先に北朝鮮基地に攻撃したら、間違いなく「日本が先制攻撃した」ことになりますよね?
※真珠湾も、日本との開戦に備えて太平洋艦隊を集結させていました。ABCD包囲網で行き場のない日本は「このままでは日本は破滅する」と言って真珠湾のアメリカ海軍基地を攻撃しました。まさしく「敵基地攻撃」です。
先制攻撃された北朝鮮は「攻撃を受けた」と大義名分を得ます。私が金正恩だったら複数箇所で攻撃準備を整えておいて、先に日本から攻撃を受けた後に大手を振って「防衛攻撃」として別基地からミサイル攻撃するでしょう。
そうすれば北朝鮮は他国から何も非難されることなく日本を攻撃できます。
※真珠湾を攻撃されたアメリカは、実は日本の攻撃を予想して空母艦隊は別基地に避難していました。その後温存していた空母艦隊が日本艦隊を壊滅させたのは歴史の通り。
そうなれば、明らかに悪いのは先に攻撃した日本です。
※もし開戦せずに相手基地を攻撃できる方法、根拠があれば、ぜひ教えて下さい。
その方法や根拠が明示できないなら、敵基地攻撃能力の保有はただの絵空事でしかありません。
その上、そもそも北朝鮮(あるいは中国)が「日本をミサイル攻撃」する理由が見当たりません。
もし北朝鮮などが日本をミサイル攻撃したら、アメリカに報復攻撃の根拠を与えてしまうことになります。
それを考えれば、北朝鮮などが直接ミサイル攻撃するとすれば「アメリカ各地のミサイル拠点を複数同時攻撃」してアメリカの反撃能力を最初の一撃で奪うしか方法はありません(その攻撃に日本も含まれる可能性はありますが)。
日本が敵基地攻撃能力を保有したとしても、そのような大規模攻撃を全て阻止できるほどの攻撃能力は持てないはずです。
※これは北朝鮮や中国にも言えることです。アメリカのミサイル拠点を全て同時撃破できない以上、先制攻撃は絶対にできません。これが「抑止力」という考え方のはずです。
「先に撃ったほうが負け」の世界で、なぜ「ウチは先に撃ちますよ」という敵基地攻撃能力という戦術をとるのでしょう?
※つまり日本の「敵基地攻撃能力」は抑止力ではなく、逆に抑止力を壊すものになる可能性が極めて高いと思います。
逆に言えばそれだけの大規模能力を備えなければ「敵基地攻撃能力」など意味ないわけで、それだけの大規模能力を保有したら「専守防衛」の範囲などはるかに超えてしまいます。
そして日本には戦略、戦術の以前に考えることがあるはずです。
どんなに正義を主張しても、自国の権利を守るためでも、攻撃地点を限定したとしても、
「先に攻撃する」
ことは日本には許されないと私は思います。
それが先の大戦で太平洋全域に多大な被害を与えた日本の決意だったはずです。
そしてその決意を守ることが日本人の誇りであり、消えることのない責任ではないでしょうか?
その決意を、一内閣が勝手に変えていいはずがありません。そもそも「憲法擁護義務」がある国会議員が「先制攻撃」を提案するなど憲法違反のはずです。
※先に書いたとおり、敵基地攻撃が「先制攻撃」にならない方法、根拠があるならその限りではありません。「敵基地攻撃能力保有」を支持する方はぜひその点ご教示下さい。
敵基地攻撃が先制攻撃であるならば、まず憲法9条を改正し「専守防衛」を破棄してからのはずです。
「敵基地攻撃」が先制攻撃にならない根拠があるか、もしくは憲法9条改正。これが「敵基地攻撃能力の保有」の最低条件であることは明白だと思います。