

ヒュー・ジャックマン強化週間という訳じゃありませんが、今日はこれについて。
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ストーリイ:アルコール依存の虐待親父から逃れ、家からも故郷の街からも離れていた主人公バーキイ(マーティ・デニス)。父の死の報を受けて二年ぶりに戻って来た彼と、家族や友人たちとの、その一日の出来事。
友人たちは歓迎してくれるが、家は既に売りに出され、兄ウェイス(ヒュー・ジャックマン)の態度もよそよそしい。父と、その最期を看取ったという兄との間に何があったのか。家族の真実はどこにあるのか……
感想:以上がおおよそのストーリイですが、例によって英語字幕さえないので、細かい所まではよくわかりません。その上「会話劇」として進行する映画なので、90分ほどの作品なのに観ていてとても疲れます。言葉がわからないというのが最大の理由ではありますが。
それでも、シドニー郊外にあるらしい街アースキンヴィルの、うら寂れ、陽光だけが明るいゴーストタウンのような雰囲気や、そこに住む人たちの閉塞感は伝わって来ます。
昼間から酒を飲みクスリに手を出し、ビリヤードに興じ(いったいお葬式の準備は誰がしているのか?)、或いはジャンクフードを抱えてビデオを見るくらいしかすることのない、現代社会に於いて「底辺」に位置する大都市周辺住民の有りようが、淡々と冷徹に描き出され、「家族の悲劇」の背景にあったものも、そのどんづまりの閉塞感であることを示すかのようです。
そこで思ったのが、オーストラリアで名のある映画で、politicalな視点を全く欠いたものなど無いのではないかということ。
「社会派」と言われる作品でもどこか寓意的なアメリカ映画や、とかく声高な告発調になりがちな日本映画のそれとも違った感じで、豪映画では、個人の背景には必ず社会が存在するということが(エンターテインメント映画でも)「当たり前のこと」として描かれています。
ここで言うのも何ですが、例のコノリー監督の "political" 発言に対して自分が覚えた違和感は、「そんな当たり前のことを、なんで今さら」だったのだと思い到りました。
コノリーの名前を出したついでに言うのではありませんが、デイヴィッド・ウェナムにとっての "The Boys" に相当するものが、ヒュー・ジャックマンに於いては、この "Erskineville Kings" なのではないでしょうか。
描写は "The Boys" の方が、構成ともどもより尖鋭的ですが、それでも全体の雰囲気や、閉塞状況の中で壊れて行く家族、というモチーフ、脚本・主演のマーティ・デニスが WAAPA 時代のヒューの友人であり、彼が長年温めて来た企画であるということも併せて、共通点は多いように思います。
そしてヒューの演技についてですが、これがまた一見の価値あるものです。
すべての単語に "fuckin'" を付けなくてはしゃべれないような男 Wace(というつづりですが、発音はどう聴いても「ワイス」)。
この時の演技やダークな雰囲気が、後にローガン=ウルヴァリンを演じる時にも役に立ったということですが、実のところは彼が演じたどの役とも違う感じです。まして、先日紹介した "Paperback Hero" のジャックと同じ人には全く見えません。
顔は確かにヒューなのですが、可愛げなどかけらもなく、甘さも「華」も削ぎ落とし、そもそもハンサムにさえ見えないところがすごいと思いました。外面の威圧感や粗暴な雰囲気と、内面に抱えたものの重さ、どちらも的確に演じています。
特典にはいっているオーディション(?)映像のヒューがまた、ルックスはキンキラ二枚目のまま、ワイスの「ファッキン」な台詞をまくしたてるのが何とも面白いです。そう言えば、X-MEN 特典でも、外見は『オクラホマ!』のカーリイのまま、ローガンの台詞をしゃべったりフィルム・テストを受けたりしていたなあ、と思い出されました。
バーキイの友人でインド映画専門ビデオ店店主(なのかな?)ウェインを演じたジョエル・エジャートンについては("The Brush-Off" のブルース・スペンスと同じく)、当ブログ7/19付けの「スター・ウォーズとオーストラリア俳優たち」でも触れました。
また、バーキイの恋人ラニーはインド系女性なんですね。デイヴィッド・ウェナム主演の "Stiff"、"The Brush-Off" を観ても、オーストラリアってインド系移民の人が多いのだろうかと思っていたら!
多いどころか同じ人だよ!
ラニー役リー(レア?)・ヴァンデンバーグって、"TBO" のクレア役の人じゃないですか。彼女、やはりウェナム氏主演の "Better Than Sex" にも出てましたよね。
ああ、やっぱり狭い豪業界…!と言うか、インド系の女優さんが少ないだけか…
なんて毎度同じ締めじゃ芸がありませんね。
何はともあれ、「演技派」ヒュー・ジャックマンを語る上でこの映画は外せないと思いますので、ご興味のあるかたは是非ご覧になって下さい。
好き嫌いで言えば "Paperback Hero" の方が好きですが、語ることはこちらの方が多いですね…
ほんと昼間から酒かっくらってなにしてるんでしょう、あの人たち…
兄貴、こわかったです。
演技の幅がすごいですよね。
でも、例の『ヒュー・ジャックマン自らを語る』のおかげで少しは理解できた部分もあります。
それにしても、オーストラリアでの出演作まで追ってみると、改めてヒューの演技の幅が広いことに驚かされますね。