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『ヒューゴの不思議な発明』(2011)~夢の生まれるところ

2012-03-07 23:57:15 | 映画・DVDレビュー

本日マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』を観て来ました。
様々な所で「これこそ3Dで観るべき映画」との評を見たので、それに従うことにしての鑑賞。
観終えて、初めての3D体験がこの作品で本当に良かったと思いました。

この映画の情報が伝わり始めた頃、一部では「スコセッシが3D?それも絵本が原作?そんな時流に媚びたようなことして」との受け止め方もありました。しかし、実際に作品が公開されるや、その評価は大逆転、これこそまさに3Dで観ることに意義がある作品だとの声に変わりました。

ストーリー:1930年代のパリ。ターミナル駅の時計台に隠れ住むヒューゴ(エイサ・バターフィールド)。時計職人で博物館所蔵品の修理もしていた父(ジュード・ロウ)を博物館の火事で失い、駅の時計係だった伯父(レイ・ウィンストン)に引き取られるも、その伯父の行方もわからなくなって、駅の公安官(サーシャ・バロン=コーエン)の目を盗みつつ、時計のネジを調整しながら一人で暮らしていた。
或る日、ヒューゴは駅構内の玩具店で機械仕掛けのネズミの玩具を盗もうとしたところを、店主ジョルジュ(ベン・キングズレー)につかまり、亡き父のノートを没収されてしまう。
父が遺したもう一つのものは、壊れた自動機械人形。ノートにはその修理方法が記されていたのだ。ジョルジュの養女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)と親しくなったヒューゴは、彼女の協力の下、ノートを取り返し、機械人形を動かそうと試みる。
そして、その過程で、二人はジョルジュの隠された過去に触れることとなる──

どこまでネタバレしていいものか迷ったのですが、この「ジョルジュの過去」こそが物語の根幹であり、テーマにも深く関わり、彼こそがこの作品の真の主人公と言っても過言ではないので、書いてしまいます。
ジョルジュの正体は、映画創成期のフランスの映画製作者にして伝説の監督、ジョルジュ・メリエスです。
そして、機械人形が動きだし、またヒューゴとイザベルが知り合った映画史研究家ルネ・タバールの助力などもあって、メリエスにまつわる全てが明かされた後の展開が本当に素晴らしい!

リュミエール兄弟の「列車の到着」に始まる映画の歴史。当時の人々にとって、それはまさに3D体験以上の衝撃だったでしょう。
そこにストーリー性や様々なトリック撮影技術をもたらしたメリエスは、まさに「映像の魔術師」でした。

この作品内の時代までに作られた様々な名作、大作、話題作のフラッシュバック。全盛期のメリエスの撮影現場。そして『月世界旅行』の名高いシーン──
そのすべてが最新鋭の映像技術で甦り、目眩くようなシーンが展開します。
なんという豊穣!映画とはこんなにも豊かで美しいものだったのです。
ノスタルジーでもなくオマージュでもなく、ここにあるのは、映画とその歴史に対する大きく深い愛そのものです。
もちろん「現在の」映像も負けてはいられません。駅構内の作り込まれたセット。人物の配置や動き。縦横に動き回るカメラ。そして大小様々なゼンマイの動き。計算された美しい色彩──それらもまた素晴らしい映像体験でした。

実はスコセッシは映画史の講義が出来るほどの知識を持ち、『映画100年 アメリカ編』というすぐれたドキュメンタリーも作っているそうです。
「映画に愛をこめて」とのサブタイトルが付いていたのは、フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』でしたが、それはこの作品にこそ相応しい言葉だと思いました。
あなたが始めたことは、これほど美しい花を咲かせ、これほど豊かに実を実らせたのだと、メリエスその人に伝えたくなります。いえ、最もそう言いたかったのはスコセッシ監督自身だったでしょう。
パンフレットにもあるように、これはまさに「映画へのラブレター」です。

映画が好きだというのは、なんと幸福なことなのでしょう!
「映画」というものを好きになり、意識的に観るようになって数十年。その年月はまさにこの映画に巡り会うためにあったのだと言いたくなる。それほど素晴らしい作品でした。

『ヒューゴの不思議な発明』公式サイト

映画.com 特集ページ


ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)
ブライアン セルズニック
アスペクト


おまけ:クリストファー・リー様の出演と、ハワード・ショアの音楽も嬉しかったです。

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