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映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

『デビルズ・パイレーツ』~奇跡の少年

2008-01-27 15:54:10 | クリスチャン・ベイル

まだ続いていた『宝島』ネタ。そう、邦題がアレだけど、これも『宝島』なんです。フレイザー・クラーク・ヘストン監督による1990年のTVムービー。苗字から推察される通り、監督はチャールトン・ヘストンの息子さん。スティーヴン・キング原作『ニードフル・シングス』なども観たことがあります。

で、ロング・ジョン・シルバーに扮するのは監督のおとっつぁん。そして、(一応)主役のジム・ホーキンスを演じているのが、我らのクリスチャン・ベイル少年です。
ヘストン旦那の他、オリヴァー・リード(ビリー・ボーンズ)、クリストファー・リー(ピュー)、ジュリアン・グローヴァー(リブシー先生)、ジェイムス・コスモ(レッドルース)、ピート・ポスルウェイト(ジョージ…らしい)等々、多士済々なオヤジ集団が周りをとり囲んでいます。

ここで、自分がこれを観るに到った経緯について触れておきましょう。
この作品、実は日本でも、そして海外でもDVD化されていなくて、VHSでしか観られません。
アマゾンにもこの通り在庫があるにはありますが、中古でも15000円以上と、非常に高いです。
そこで、米Amazon にて中古を購入したのですが、当然ながら字幕はありません。
更に中古だけあって(?)音声も映像もところどころ切れたり、あまり良品とは言えないものでした。初めは、うちのオンボロデッキがいけないのかと思っていましたが……
しかし、ごく最近ヤフオクを覗いてみたら、日本版が出品されているではありませんか!それも定価15000円のところ、なんと900円で!
幸い入札者が自分しかいなかったため、その価格で手に入れることができました。
こちらはレンタル落ちとは言え、音声も映像もまあまあ良好、もちろん日本語字幕も付いているので、ようやくストレスを感じずに鑑賞できたという次第です。
ちなみに日本版ジャケットはこちら。裏はこうです。
原題は『Devil's Treasure』になっていますね。IMDbによれば、オーストラリアでのタイトルがこれだということですが……

肝心の内容ですが、前述の通りキャスティングもなかなか豪華だし、原作に忠実に丁寧に作ってあります。ヒスパニオラ号はちゃんと原寸大の船を建造したそうで、3本マストに白い帆を張って海を行く姿が美しいです。
で、主要女性キャラクターは原作通りジム母しか出て来ず、ジムにもガールフレンドなどいないので、カワイコちゃんはクリスチャン一人だけです。歳の頃は十五、六歳くらいかな。声は変化しつつある途上だし、今ほど身長もなくて、少年らしい細っこい手足や、まだ薄い胸板がチャームポイント。
一方で「わー今と同じ!」な表情を見つけて笑ってしまう時もあって、「大きくなったねえ。いろんな意味で」と言いたくなります。

ヘストン旦那のシルバーも良かったですよ。アニメ版シルバーは、原作を脚色したりふくらませたりして「大人の男のモデル像」として確立した訳ですが、こちらは「原作に忠実かつ魅力的」なシルバーになっていました。食えない悪党で、タフでずる賢くて、でも愛嬌があってどこか憎めない、という……

そして、この作品のシルバーは、アニメ版とは違い、別にジムの崇拝の対象となったりはしていません。もちろん、シルバーがいきり立つ子分どもからジムを守るシーンなどもありますが、こっちのジムくん、初めからけっこう自立してるしクールです。別にヒネてる訳じゃなくて、ちゃんと「少年」なんだけど、まあそういう子なんですね。寧ろ、海賊側も味方側も合わせて、彼がいちばん冷静でマトモな人に見えます。そうでなかったらこの危険な旅を客観的に振り返ったりできないだろう、という解釈なんでしょうか。

シルバーとの訣別も、擦り寄ってくるオッサンに「助けてくれたことは感謝する。でも、もうあんたを信じない」と、ジムの方から言い放つんですね。似たような状況でも、『太陽の帝国』のベイシー(ジョン・マルコヴィッチ)との別れとは大違い。いま思うとベイシーって、ちょっとアニメ版シルバーっぽかったな……
シルバー退場の仕方は原作ともアニメともちょっと違って、あの状況でも、彼は図々しくも堂々と「船長」を名乗ってるんだろうな、と思いました。それでこそ「シルバー」なんですが。

ジムを取り巻くオジサンたちの中、ヘストン旦那、リー様、そしてリード氏は、思えば揃ってリチャード・レスター監督『三銃士』『四銃士』二部作の出演者でした。リシュリュー枢機卿とロシュフォールとアトスですね。
リー様とクリスチャンは、この作品が二度目の共演になります(もう一つは『ミオとミラミス』)。こちらでは、あの長身にすごいメイクでクリスチャン(ジム)を羽交い締めしたり、ベンボー亭襲撃の際には一人で十人分くらい暴れ回っていました。
また、IMDb作品ページからいろいろ辿ってみて驚いたのが、リブシー先生とトレローニさん(リチャード・ジョンソン)が揃って『タロットカード殺人事件』(ウディ・アレン監督、スカーレット・ヨハンソン&ヒュー・ジャックマン主演)に出演していたということ。
あちらを観ている時には全く気づきませんでしたが、グローヴァーさんはヒューの父上役だったようです。
あ、そうそう。この『宝島』にはグレイが登場しません(笑)。名前さえ出ません。どうも「ハンター」が彼の役も兼ねているような感じです。でも、それなりにカッコいい役どころではありました。

話を戻して、現在このジムくんを見ると、本当にしみじみ「ああ、この子は『クリスチャン・ベイル』なんだなあ」と感慨に耽ってしまいます。
敵味方入り乱れる大人たちの中、一人で戦い、潜り抜けて行こうとする少年、ということでは『太陽の帝国』に通じるものもあります。もちろん、多彩でクセの強い大人の俳優さんたちを向こうに回して演技できる少年俳優、としてのキャスティングだったのだと思いますが。
また、その位置のまま、作品の規模も話も役柄もご本人もスケールアップしたのが『バットマン ビギンズ』だったのかも知れません。ジムには、ブルース坊ちゃまに対するアルフレッドさんみたいな「絶対の守護者」はいなかったけれど。

そして、最近の(に限らず)この業界に於ける幾つかの心痛むニュースを見るにつけ、クリスチャン・ベイルという俳優が、この頃から持っていたものを何一つ害わず、奪われず、枉げることもなく、芯の部分を本当に綺麗なまま保ち続けて現在に到っているのは、奇跡に等しいことなのかも知れないと思わずにはいられないのです。

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