オペラ座の怪人 コレクターズ・エディション (初回限定生産)メディアファクトリーこのアイテムの詳細を見る |
……買っちゃいましたよ。
本編以外に特典ディスク2枚の3枚組。特典1は映画ファン向け、2は舞台ファン向けかも。
サラ・ブライトマンのプロモがはいっているのは1の方なんですが……えーと、なんとケン・ラッセル演出だったというステイーブ・ハーレイとの "The Phantom of The Opera" はともかく(でも、ファントムの仮面がダサイ…)、クリフ・リチャードとの "All I Ask of You" はCDで声だけ聴いていた方がいいんじゃないでしょうか……
私としては、マイケル・クロフォードのファントムが、その片鱗なりとも見られただけで満足ですが。
特典2は "Behind the mask"。舞台版が出来るまでを制作関係者へのインタビュー等で構成した1時間ちょっとのドキュメンタリーで、これは見応えありました。
ロイド=ウェバーがごく初期にはケン・ヒルとも一緒にやろうとしていたとか、スティーブ・ハーレイが降板してクロフォードが大抜擢されたのは、本当に直前のことだったんだなあとか。
あ、御大がヒューに言及しているのもこのディスクの中です。
さて、それでこの『オペラ座の怪人』という作品自体についてですが、ファントムとクリスティーヌの繋がりというのは、あくまでも「音楽」がその根底にあるべきだと、私は思っています。
そして、ファントムの「愛」とは、第一幕ラストの
「私が君に音楽を与えた。君の歌に翼をつけてやった。それなのに……呪ってやる!」
と、第二幕ラストの
「君だけが私の歌を羽ばたかせてくれる」
の振幅の間にあるものなのです。
こうしてメイキングまで見ると、この作品はロイド=ウェバー&サラ・ブライトマンの私小説ならぬ「私ミュージカル」であったという感を強く持たずにはいられません。
上記ドキュメンタリーでも、複数の人がそのことを指摘していました。
彼らは、その愛も別れも、現実にそういう道を選ぶ以前にステージの上で既に演じ、演じさせてしまっていたのですね。
更に特典の様々な映像を見て気づいたことですが、彼らは何と顔もよく似ているのですよ!兄妹と言っても通るくらいに。そのことにも、何か底知れぬ業(ごう)の深さを感じてしまいます。
夫婦と呼ぶにはあまりに凄絶なアーティスト同士の闘争がこの作品の根底にはあった訳で、それはまさに「これを愛と呼ぶなら愛などない方がまし」と言っていいほどの「愛のドラマ」であり、凡百の恋愛ものと同列には扱えないと思います。
それを多くの人が共有できる「エンターテインメント」として完成させるには、また別の業(ごう)やエネルギーを必要とする訳ですが、胸を打つのはそこに描かれた愛の普遍性ではなくて、歪んでいて特異な「愛」が、まさに特異であったがゆえに、強烈に何かを突きつけるからなのでしょう。