この物語は趣味が盛り込まれた作品です。個人的に楽しんでください……。
チュンチュンと鳥の鳴き声がする……。雀かな? 僕は、まだ眠いと思いながら、鳴き声に耳を傾けていた。
「わしは、やっていない!」
いきなり怒鳴り声がした。何だ? 声の感じからすると男性の老人のようだ。そう思いながら僕は、ベッドから飛び起きた。すると見慣れた自分の部屋のはずなのに、壁に見たことのないドアが並んで二つあった。
「何だこのドアは? ドアが二つ? ドアとドアか……」
僕は、小さく呟いた。開けたら何処かへ行けるのだろうか? 開けたら風呂場だったらどうしよう? そんな事を思いながらドアへと近づいて行く。恐怖よりも好奇心が勝っていた。
ドアの前まで行くと、まずは、左側のドアノブに手をかける。深呼吸をして、ノブを回し、ドアを開けた。すると目の前に、若い男性の姿が目に飛び込んだ。男性は、水色のスーツ姿だった。男性は、僕に歩み寄って来る。く、来るな。心は、焦る。
「ボス、おはようございます。私のことは、ヤ」
バタンと大きな音を響かせて、僕は、ドアを閉めた。自己紹介だったのだろうが、聞いてないよ。七三分けで真面目そうな人だったけどな。
「追って来るなよ……。開くな、ドア」
祈る様に呟いたお陰? ドアは、開かなかった。はずれだったのかな? 懲りずに右側の扉のノブに手を伸ばす。危なかったら、直ぐに閉めればいいだろうな。自分に言い聞かして、開けてみた。すると、ドアの向こうは、真っ暗な暗闇だった。
「少し、入ってみるか」
恐る恐る足を中に踏み入れて、二歩、三歩進んで、四歩めを踏み出した。
その時、バタンと音がした。ドアが閉まった音だと分かる。周りが真っ暗闇になった。
「し、しまった! 三歩の次は、さがるんだったか! それが人生ー!」
そう叫んだのもつかの間、僕の足元の床が抜けて、奈落の底へ落ちる感覚がした。
「ひゃっ! ひゃっ! ひゃっ!」
老婆のあざ笑うような声が暗闇に響いていた……。
*****
「ぐはっ! 痛い」
僕の体に落下した事による衝撃が走った。床だ? 僕の部屋の。何だベッドから落ちたのか。じゃあ、夢だったのか?
「うおおおおおお!」
そう叫んで立ち上がった。地獄の底から蘇ったような気持ちになったからだ。
「ひゃっ! ひゃっ! ひゃっ!」
頭の中で、あの老婆の声が聞こえた気がした。急いで頭を数回振って、かき消す。
窓の外を見るとチュンチュン雀が、僕を眺めているようだった。