部室 は、パーティー会場としていた。僕達は、教育する場所とは、かけ離れた自由を謳歌《おうか》していた。
しかし、突然の部室のドアの開く音が、一瞬にして興醒めさせた。
部室に入ってくる修道女の格好をした一人の若い女性に皆の視線が集中していた。
「せ、先生!」
美樹が驚いたように叫んだ。僕も同じ気持ちだ。うちの学校は、普通の学校だぞ。
「先生、なんなんですか? その格好」
「これは、勿論コスプレよ。でも、この格好なら許されるはずよ」
僕の質問に先生は、ドヤ顔で答えた。ほんとに許されるのかよ? 僕は、呆れたが、同時に感謝した。この先生だから僕達の自由が許されるのだろう。
「校長に呼び出されたりして?」
猿田が、からかうように半笑いで言う。
「Liar!」
先生が狂気の表情で叫んだ。猿田は、しょんぼりとした。怖いな。
「先生、素敵」
「ありがとう」
空気を和《なご》まそうとするためだろうな。美樹の誉め言葉に先生は、満面の笑みを浮かべていた。気を良くしたのだろう。単純な性格だ。
「ねぇ、皆。あそこにトーテムポールが見えるでしょう? あそこの下の土は、カブトムシのお墓にしたの。そう、ミンミンゼミのなく頃に……」
先生は、校庭の隅に立てられたトーテムポールを指さした。それから、祈りをささげるように自分の両手を握ったのだ。
「カブトムシの魂よ、安らかに眠れ。トーテム」
先生は、目を閉じて、カブトムシの魂の鎮魂を願ったようだった。