「みんな、頑張れ! もう少しで学校だ! 学校の壁の中に逃げ込めば、巨人は入れないからな!」
走りながら犬養が後ろの僕達を気にしてくれて叫ぶ。もう体力の限界だったけど、気合が入ったよ。
「巨人って何? あの、男達の事なの? 背は高かったけど……。あんた達って、病気ね」
「はぁ、はぁ。うるせぇー! 二人が接吻《キス》すれば良かったんだよ」
「何よ。何で、あんた達の為に接吻《キス》しなきゃならないのよ!」
「ははは」
猿田と由利が言い合いをしだした。余裕の現れだな。僕は、愛想《あいそ》笑いするだけだよ。
*****
校門前に到着した僕達は、門の横にある警備室の守衛に学生手帳を見せた。すると、門が開き、中に入った。結局、僕達は領土の大部分である通学路地区を失う事となった。
「ふぅー。もう、安心だな」
「ああ、門も閉まっただろう」
僕と犬養は、顔を見合わせて、微笑んでいた。
「お、おい。あれ」
何だ? 猿田のやつ、校門の方を指さして、怯えてるけど?
「ああっ!」
僕は、叫んでいた。目を疑った。校門の外側だ。門から数メートル先の仁王立ちの長身の男を見て! 今朝の奴らとは、姿が違う。
「犬養、あれは?」
僕の声は、少し震えていた。
「そうだ雉山。あれは、あの姿は……」
「進学の巨人のアメフト部! ヘルメット、鎧《プロテクター》装備!」
門は、閉まっているんだ。そう自分に言い聞かした。
「構えたぞ! 走りこんで、体当たりの構えだぁー!」
「きゃあー!」
犬養の叫び声と由利の悲鳴が校庭を木霊《こだま》する。
「こらー! 君ー!」
それは、一瞬の出来事だった。守衛が叫び、警備室から飛び出して、アメフト男の行動を阻止した。そして、アメフト鎧《プロテクター》男が、警備室へ連れて行かれるのを見た。恐らく、警備隊の葉居《はい》隊長、通称、葉居爺《はいじい》に質問を受けるだろう。
僕達は、安堵《あんど》して校舎へ向かった。