蓮月銀也

小説、呟き等々……。

time goes on 物語 第8話 壁の内側へ

2024-08-03 19:38:25 | 小説

「みんな、頑張れ! もう少しで学校だ! 学校の壁の中に逃げ込めば、巨人は入れないからな!」

 走りながら犬養が後ろの僕達を気にしてくれて叫ぶ。もう体力の限界だったけど、気合が入ったよ。

「巨人って何? あの、男達の事なの? 背は高かったけど……。あんた達って、病気ね」

「はぁ、はぁ。うるせぇー! 二人が接吻《キス》すれば良かったんだよ」

「何よ。何で、あんた達の為に接吻《キス》しなきゃならないのよ!」

「ははは」

 猿田と由利が言い合いをしだした。余裕の現れだな。僕は、愛想《あいそ》笑いするだけだよ。


 *****

 校門前に到着した僕達は、門の横にある警備室の守衛に学生手帳を見せた。すると、門が開き、中に入った。結局、僕達は領土の大部分である通学路地区を失う事となった。

「ふぅー。もう、安心だな」

「ああ、門も閉まっただろう」

 僕と犬養は、顔を見合わせて、微笑んでいた。

「お、おい。あれ」

 何だ? 猿田のやつ、校門の方を指さして、怯えてるけど?
 
「ああっ!」

 僕は、叫んでいた。目を疑った。校門の外側だ。門から数メートル先の仁王立ちの長身の男を見て! 今朝の奴らとは、姿が違う。

「犬養、あれは?」

 僕の声は、少し震えていた。

「そうだ雉山。あれは、あの姿は……」

「進学の巨人のアメフト部! ヘルメット、鎧《プロテクター》装備!」

 門は、閉まっているんだ。そう自分に言い聞かした。

「構えたぞ! 走りこんで、体当たりの構えだぁー!」

「きゃあー!」

 犬養の叫び声と由利の悲鳴が校庭を木霊《こだま》する。

「こらー! 君ー!」

 それは、一瞬の出来事だった。守衛が叫び、警備室から飛び出して、アメフト男の行動を阻止した。そして、アメフト鎧《プロテクター》男が、警備室へ連れて行かれるのを見た。恐らく、警備隊の葉居《はい》隊長、通称、葉居爺《はいじい》に質問を受けるだろう。
 僕達は、安堵《あんど》して校舎へ向かった。



最新の画像もっと見る