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離婚「夫は妻より幸せになれない」経済学が導き出した衝撃の事実

2022-02-11 15:30:00 | 日記
下記の記事はプレジデントオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

どんな夫婦が離婚に至りやすいのか。拓殖大学准教授の佐藤一磨さんは「これまでの研究で、低学歴、低収入の家庭であるほど離婚しやすいことがわかっています。さらに、夫婦の幸福度に着目した研究では、妻より夫の幸福度が高い場合に離婚の確率が高まり、逆の場合は離婚の確率に変化がないことがわかりました」という――。

どのような夫婦が離婚しやすいのか
有名人の離婚にテレビやネットで多くの注目が集まります。
これは「離婚」という夫婦関係の終わりに多くの人が興味を持っていることを示していると考えられます。
経済学者も例外ではなく、これまで離婚に影響を及ぼす要因についてさまざまな分析が行われてきました。

中卒者は大卒者の2.8倍離婚しやすく、低所得層ほど離婚しやすい
これまでの研究成果を整理すると、経済状況や学歴が離婚と深い関連を持つことがわかっています。
まず、経済状況ですが、どのような経済状況の家庭だと離婚しやすいのでしょうか。
私が子供の頃見ていたお昼のテレビドラマから、「離婚=お金持ちの家庭でおきる」という印象が少しあります。経済的には恵まれているけれど、夫婦関係は冷え切っていて、そこで離婚が発生するという構図です。
これに対して、同じくテレビドラマの中で「離婚=貧しい家庭でおきる」というシーンもよく見かけます。ロクに働かず、酒浸りの夫に愛想をつかせて妻が出ていき、離婚するといった場面です。
はたして実態はどちらのほうに近いのでしょうか。結論から言えば、後者です。
離婚は経済的な基盤が不安定な家庭で発生しやすい傾向があります。具体的には、持ち家がなく、貯蓄が少なく、夫の所得が低いほど、離婚しやすくなるのです(※1)。
また、学歴についてですが、プリンストン大学のジェームズ・レイモ教授らの研究によれば、日本では大卒女性と比較して、高卒女性は1.6倍、中卒女性は2.8倍離婚しやすいことがわかっています(※2)。
中卒者の数は日本では限られているため、ある程度割り引いて考える必要がありますが、学歴によって離婚のしやすさに明確な違いがあると言えるでしょう。
(※1)佐藤一磨(2014)「夫の失業が離婚に及ぼす影響」『経済分析』第188号, pp. 119-141.
(※2)レイモ・ジェームズ、岩澤美帆、パンパス・ラリー「日本における離婚の現状:結婚コーホート別の趨勢と教育水準格差」『人口問題研究』2005, vol.61(3), pp. 50-67.
夫が失業した家庭ほど離婚しやすい
夫の失業と離婚にも深い関連があります。
夫の失業は世帯にとって大きなショックです。特に日本の場合、夫が収入面の大黒柱である場合が多いため、夫の失業による所得低下は免れず、家計のゆとりはすり減っていきます。これは家庭内でのストレスを増加させ、夫婦関係にも悪影響を及ぼすと考えられます。
この結果として、夫が失業した世帯ほど、その後の離婚確率が高まる傾向にあります(※3)。
図表1はこの関係をシンプルに示したものです。

この図は有配偶者における離婚率と世帯主の失業率の関係を見たものです。2つの値の動きは非常に似ており、世帯主の失業率が高いと離婚率も高くなっています。
この図からも離婚と失業に深い関連があることがわかります。
(※3)佐藤一磨(2014)「夫の失業が離婚に及ぼす影響」『経済分析』第188号, pp. 119~141、橘木俊詔・木村匡子(2008)『家族の経済学 お金と絆のせめぎあい』NTT出版株式会社、およびCharles, K.K., Stephens, M. (2004). Job Displacement, Disability, and Divorce. Journal of Labour Economics, 22 (2), 489-522.

夫婦間の幸福度格差も離婚の原因となる
経済状況、学歴、夫の失業以外では、「夫婦間の幸福度格差」も離婚の原因になると指摘されています。
この点はディーキン大学のカヒット・グヴェン講師らによって検証されています。
その論文の題名はズバリ、「あなたは妻よりも幸せになれない」です(※4)。ここでの「あなた」とは、夫のことを指しています。
彼らの分析によれば、夫婦間で幸福度に格差が存在すると、離婚確率が高くなることが明らかにされています。
この結果は、イギリス・ドイツ・オーストラリアの3カ国の大規模データを用いて実証されており、高い説得力を持っています。
この論文の最も重要なポイントは、夫婦の「ある一方のみ」の幸福度が低いと離婚につながることを明らかにした点です。
その一方とは、「妻」です。
妻の幸福度が夫よりも低い場合のみにおいて離婚確率が上昇するのです。妻よりも夫の幸福度が小さくても、離婚確率は上昇しませんでした。
(※4)Guven, C., Senik, C., Stichnoth, H.(2012). You can’t be happier than your wife. Happiness gaps and divorce. Journal of economic behavior and organization, 82(1), 110-130.
離婚を切り出すのは妻からの場合が7割超
夫婦間の幸福度格差、特に妻の幸福度が低い場合にのみ離婚につながるという結果は、非常に興味深いものです。
妻の幸福度が離婚のカギとなる背景には、「離婚を切り出すのは主に妻」という現状が影響しています。カヒット・グヴェン講師らは論文の中で、オーストラリアやドイツでは主に女性の方から離婚を切り出すことが多いと指摘しています。
ちなみに日本でも女性の方から離婚を切り出すことが多い傾向にあります。最高裁判所の「司法統計年報」によれば、2019年の離婚の申し立ては妻からが約73%であり、この傾向は近年大きく変わっていません。
以上の点から、離婚の主導権は妻側にあると言えそうです。

妻の不幸が離婚につながる
これまでの結果から、夫と比較して妻が幸せではない結婚生活は、長続きしないと考えられます。
この結果はあくまでもイギリス・ドイツ・オーストラリアで得られたものであり、日本にも当てはまるかどうかという点が重要なポイントです。この点に関して、同じ先進国である日本でも離婚を切り出すのが主に女性であるという特徴を考慮すると、日本も近い状況にある可能性が高いと考えられます。
さて、もし日本でも同じような状況にある場合、「相対的に妻が幸せな家庭」ほど離婚しにくいことになります。
「妻の尻に敷かれる」は意外と良い戦略
このような家庭の特徴を考えると、思いつくのは「妻が家庭の主導権を握り、尊重される夫婦関係」にある場合です。これは自分の意見や意思決定が尊重される関係だとストレスが少なく、けんかも減って、幸福度の向上につながると考えられるためです(※5)。
これは言い方を変えれば、「妻が夫を尻に敷いている家庭」だと離婚しにくいということになるのではないでしょうか。
「妻が夫を尻に敷いている家庭」では妻が主導権を握っているため、妻が心地よくすごすことができるようになります。この結果、妻の幸福度が上昇し、離婚へのインセンティブも低下するというわけです。
「妻の尻に敷かれる夫」というのは一見するとポジティブなイメージをもたれない場合もありますが、夫婦間の幸福度格差のメカニズムを考えると、結婚生活を円滑に進めていくうえで合理的な方法になっている可能性があります。
日本の家庭のうち、夫が妻の尻に敷かれている割合がどの程度なのかはわかりませんが、意外と少なくないような気がします(個人的な感想です)。
そのような家庭における夫は、合理的、もしくは動物的な直感で、結婚生活を長続きさせる方法を理解しているのかもしれません。
(※5)西村和雄・八木匡(2020)「幸福感と自己決定―日本における実証研究(改訂版)」RIETI Discussion Paper Series 18-J-026では、進学や就職といった重要な場面において、自分で進路を決められるような自由度が高いほど、幸福度が高まることを指摘しています。このため、夫婦関係においても自分の意思が反映されやすいと幸福度が高まる可能性があると考えられます。
  • 佐藤 一磨(さとう・かずま)
  • 拓殖大学政経学部准教授
  • 1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。



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