下記の記事は日経グッディ様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。
生活習慣病を解消し、一生ものの体をつくるために知っておきたいことを解説する本連載。今回は「腎機能」について教えていただこう。腎臓は血管の塊であり、血管の老化ともいえる動脈硬化が進むと腎機能が低下することが分かっている。特定健診でも腎機能を調べるが、中でも特にチェックすべき検査項目は「クレアチニン」と「たんぱく尿」だ。また、将来、人工透析のお世話にならないためには、クレアチニン値から算出される自分の「eGFR(推算糸球体ろ過量)」を把握しておくことも大切だという。
(イラスト:つぼい ひろき)
こんにちは。大阪大学大学院で生活習慣病予防の研究をしている野口緑です。今回は「腎機能」についてお話ししたいと思います。
この連載の第3回でもお伝えしたように、メタボ(メタボリックシンドローム)や、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になって動脈硬化が進行すると、腎臓の機能が低下していきます。
おしっこをつくる腎臓は、血管の老化ともいえる動脈硬化とは一見関係なさそうに思えるかもしれませんが、実は腎臓は「血管の塊」とも呼べるほど、血管が集まる臓器。「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる毛糸玉のようになった0.1~0.2mmの毛細血管の玉が片方の腎臓におよそ100万個ずつ入っています。そこに血液を流して体に必要なものと要らないものをより分け、不要なものを一旦、血液からこし出しています。これが尿の元になります。
動脈硬化が進んで血管が傷んでいくと、この糸球体にも影響が出ます。糸球体はとてもデリケートな血管の塊で、一度壊れると再生しません。糸球体は老廃物などをこし出す仕事をし、普段から他の血管よりも強い圧力に耐えているので、それ以上の圧力がかかる状態が継続すると、その血管は傷んで壊れてしまうのです。
糸球体に血液を送る輸入細動脈や、複数の糸球体を通った後の血液が集まる輸出細動脈が動脈硬化になると、糸球体に流れ込む血液の圧力調整がうまくいかず、糸球体がより傷むことになります。また、高血糖状態があると糸球体の血管を束ねている部分を肥大化させ、結果として糸球体の血管を押しつぶして死滅に至らせてしまいます。健康な状態でも、年齢とともに腎機能は低下してきますが、このように高血圧や高血糖、さらには高LDLコレステロールがあるとそのスピードは速まってしまうのです。
私たちの命を守るためには、腎臓に、生涯にわたって体内の水分量や塩分量などの調整、老廃物の処理のために働き続けてもらわなければなりません。ですから、何らかの腎疾患がなくとも、高血圧や高血糖、脂質異常などの生活習慣病が腎臓にとても関係があることをぜひ知っておいてほしいと思います。また、腎臓の血管(腎動脈)は、脳血管や心臓の冠動脈と同じ構造を持つ「strain vessel」と呼ばれ、腎動脈の変化は同様に、脳血管や心血管の変化を表しているともいわれていることを心にとどめてください。
今のところ、腎機能を根本的に改善する薬はありません。したがって、一定以上腎機能が低下すると腎移植をするか人工透析をするしかありません。透析はとても大切な治療法ですが、一旦透析を受けるようになると、週2~3回、1回に数時間透析治療に時間を要することになります。長期の海外旅行はもちろん、国内旅行に行く場合も、旅先で透析治療を受けることができる医療機関を事前に確保しておく必要があるなど、QOL(生活の質)が大きく下がってしまうことは否めません。できればそうならないよう、早期から腎機能の数値に目を光らせながら、生活習慣を見直していくことが大切です。
腎機能の数値が高い場合は、血管障害が進んでいる可能性がある
腎機能は加齢とともにある程度は低下するが、高血圧や高血糖、高LDLコレステロールがあるとそのスピードは速まる。クレアチニンや尿たんぱくの数値が高い場合は、血圧や中性脂肪の数値が高い場合に比べ、血管障害がより進んでいる可能性が高い(Noguchi M, et al.J Epidemiol. 2020 Apr 5;30(4):194-199.から概念のみ示す)
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