『ろばや』のブログ

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田植えのお手伝いに行ってきました(栃木県上三川町・上野長一さん)

2016年06月11日 | 生産者

 栃木県南部の上三川町で25年以上にわたり、農薬や化学肥料をつかわずにお米を育てている生産者〈上野長一さん〉のところへお手伝いに行ってきました。

 この日は田植えの初日で、雲ひとつない青空の下、きれいに水の張られたまっさらな田んぼがいくつも広がっていました。ぼくたちが到着すると、すでに田植え機に乗って作業をしていた上野さんが笑顔で迎えてくださいました。

 ぼくたちの仕事は、田植え機が届かないところに手で苗を植えること・苗の収められた苗箱を準備して上野さんのサポートをすること・空になった苗箱を洗うことなど、シンプルな作業ですがなかなか大変。特に田んぼを歩くことはアスファルトの上を歩くのとはまったく別物で、なかなか前に進みません。うまく足の抜けないぼくたちとちがって、すいすい軽快に歩く上野さんは、ほとんど田んぼと一体になっているように見えました。

 また、上野さんはお米の品種保存をライフワークにされていて、その数は500種以上もあるそうです。今回その一部を見せていただきました。

 軽トラのうしろに乗せてもらって着いた場所には、手作業で種まきをして大切に育てられた苗がたくさん並んでいました。その中には、ろばやでもおなじみの『コシヒカリ』、そして、うるち米・もち米・黒米・赤米・香り米など40~50種類のお米を選んで種の段階から「混植」で育てる『いろいろ米』もあって、それぞれサイズや色のちがう個性的な苗たちが元気に太陽の光を浴びていました。

 上野さんが田植えをする田んぼは40枚以上あり、それぞれまわりの環境や水の張られる時期がすこしずつちがいます。どの田んぼに・どのタイミングで・どの品種を植えるのか、適切なプランは上野さんの頭にぜんぶ入っているそうです。ただ歩いている姿を見ても感じましたが、これは身体全体がお米づくりに適応して、比喩ではなく田んぼとひとつになるような感覚がないとできないことのように思えます。

 休憩時間、すこし曲がって植えられた苗の列を見ながら「あと2~3枚も植えりゃあ調子出てくっべな」と言って、頭に手をあてながら上野さんは笑いました。昨年はじめてお手伝いに行ったとき、ハクさんが「会った人はみんな上野さんのことが好きになるんだよ」と送り出してくれましたが、本当にそのとおり。

 上野さんのみつめている無農薬の田んぼには、カエル・メダカ・アメンボ・タガメ・ドジョウや鴨などが暮らしていて、冬には白鳥もやってくるそうです。この土地の天気や季節、足あとや足音、毎日の時間が練りこまれた土で育ったお米は、働く上野さんの手とつながっています。

 ぼくたちがいつも食卓でいただいている農作物の背景にも、それを育てている人たちの匿名ではない笑顔や手があって、生活があります。想像することしかできませんが、それは、ろばやで焙煎しているコーヒーにも共通していて、たとえばひとにぎりのコーヒー豆や一杯のコーヒーのおいしさも、生産者さんとつながっています。みじかい時間でしたが、田植えの仕事を体験させていただいたことで、そのつながりと感謝の気持ちをより強く実感することができました。上野さん、どうもありがとうございました。

 先日いただいたお手紙には、もうすこしで田植え作業がおわりますと書かれていました。また秋になったら田んぼにおじゃまさせていただきます。あのちいさな苗が成長して、ずっしりとした稲穂が力強く実った風景に出会えるのを、今からとてもたのしみにしています。(スー)

 

 


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