10月15日、栃木県上三川町の上野さんのお宅にお邪魔してきました。時季的には稲刈りや「いろいろ米」の種採りのお手伝いを予定し、どちらも初めての私は楽しみにしていたのですが当日はあいにくの雨。それでも「遊びにきてください」と言って下さる上野さんのお言葉に甘えて、ろばやスタッフ3名、本当に遊びに行ってしまいました。
今年はいろいろ米の稲が倒れたり、長雨が続いたりと収穫がスムーズに行かず苦労されている上野さん。田植えと違って、雨が降ってしまうと何もできないのが稲刈り、ということが私達も今回行ってみてよく分かりました。
上野さんのお宅には築90年以上の立派な古民家が母屋としてあり、敷地内には昔使っていた納屋の他、トラクターや大型の農業機械を収納する建物が二つあります。このうち、大谷石で建てられた米倉の周りには、収穫した穀物を乾燥させる乾燥機、選別機、計量機などの機械があります。こちらで稲刈り後の一連の作業を見せて頂くことになりました。
その前に!人数分渡されたのは靴下…。一瞬ハテナ?となったのですが、機械の周辺を濡らさないよう靴を脱がないといけないから、自分の靴下の上からコレを履いて上履き替わりにして、という意味でした。なるほど。上野さんの心遣いとともに、収穫から保管までの過程では「水は大敵」なのだと実感します。
以下はざっくりですが、収穫後の工程です。
・コンバインで稲刈り&脱穀 → 乾燥機 → モミ摺り・選別機「ぶんぶん丸」でモミを外す&異物・規格外米を除去 →石抜き機 「石取り君(セキトリクン)」で小石を除去 → 「パックメイト」で玄米を計量・袋詰め(30kg) → 「ラクダ君」でリフト→担いで米倉へ!
コンバインで稲の刈り取り・脱穀が終わったら、次は大きな乾燥機に投入して乾燥(この工程は今回見られず)。乾燥機は煙突のような配管で籾摺り機(商品名「ぶんぶん丸」)とつながっていて、この機械でモミ殻が外され、私たちが目にする「玄米」の状態になります。
こう書くと簡単ですが、籾摺り機は商品名のとおり始終ブンブン唸っていて、その中では選別版と呼ばれる板が細かく振動し、いわゆる「異物」や「クズ米」を選別、その様子を上野さんは細かくチェックしています。お手紙にも書かれていた通り、一部のモミには「稲こうじ病」によってできた暗緑色のカビの粒がゴロゴロ混ざっていて、放っておくとそのせいで他のモミが汚れてしまうのでした。他にも石の混入や規格外の米を取り除くのには機械まかせでなく見守りと調整をしながら、時には機械を修理しながらの作業が必要のようです。
3代目乾燥機 (写真↑)
籾摺り・選別機「ぶんぶん丸」(↑)。上野さんの足元に置かれた「箕(み)」に弾かれたモノがたまっています。
↑黒っぽい粒は稲穂についていたコウジカビの玉。
↑小石を除去する自動石抜き機「石取り君」。せきとりくん、と読みます。
天井の高さまである乾燥機は特に大きいのですが、現在のもので3代目だそう。一般の農家は刈り取った後は農協へ持っていくので乾燥機以降の機械は持っていないのが普通です。持っている場合でも、これらの機械を維持するのは大変なお金と労力がかかるため、跡継ぎのいない農家の場合は機械が古くなっても更新しないことが増えているとか。それでも農協に持っていくと他の農家のものとブレンドされてしまうため、自分の米を食べたいから乾燥機を貸してくれないか、と頼まれることもあるそうです。これ以外にも稲刈りそのものを頼まれたり、周辺農家の後継者不足の影響をひしひしと感じてらっしゃるそうです。
30kgの米袋は「ラクダ君」というリフトが肩の高さまで上げてくれます(感動)。それを担いでどんどん重ねていく上野さん。私達も試しに担いでみようと思ったのですが、ヨロヨロっと来てすぐに上野さんにバトンタッチ!する始末…。毎回思うのですが、仕事中の上野さんは一つ一つの動きが俊敏で効率的。アスリートと職人を兼ねている上、稲や田んぼを観察する科学者でもあり、お付き合いのある農家やお店などネットワークも広く、本当に「百姓」という文字が実感を伴っている存在が上野さんなのです。
(早川)
--------
おまけ
棕櫚(しゅろ)の葉でささっとバッタを作ってしまう上野さん。アーティストでもある…。