友人に、「読む本が、時代娯楽小説ばかりでは・・、"親鸞"とか貸してあげるから読んでみたら」と言われた。最近、母を亡くした私としては、仏教は気になる所。しかし、"親鸞"では宗派が違う。どうせ読むなら、我が家先祖の宗派、曹洞宗の開祖・道元の事でも読んでみようか・・・。
【あらすじ】
道元は、鎌倉時代初期、藤原一門の摂政関白の家柄に生まれた。その時、陰陽師いわく、”この子は・・重瞳(じゅうどう)の子である。俗ならば天下人、聖なら大聖人、必ず大器となるであろう。ただ、・・・・この子は、八歳になる時までに、その母を失う”
道元(幼名・文殊丸)は、父の愛に恵まれず、母は予言どうり亡くなる。ただ母は、文殊丸に「泥のように醜いこの世から出家して、・・」「道に人になってもらいたい」と言い残す。文殊丸の祖父・藤原松殿基房は、文殊丸に将来摂政関白の地位を約束された藤原松殿家の継嗣にと望むが、13歳の時、元服直前に出家する。
物語は、平安末期から鎌倉時代への世の中の遷り変わりを描きながら進む。平家や源氏の没落、北条の台頭、藤原一門や朝廷の政権闘争、そういった事柄を描きながら、道元の生きた時代の諸行無常を描いている。道元は、比叡山にて天台宗を学ぶが教義に疑問を持つようになり、建仁寺に移り禅宗・臨済宗を修行する。
道元は、宋に渡り真の正師にめぐりあい、目出度く日本に戻る事になるのだが・・・
◇◇◇◇◇
道元の母、伊子が幼い道元(幼名・文殊丸)にお釈迦様の話を聞かせる所がある。
・・・・人は老いと病いと死からは免れることはできないのに、若さと健やかな肉体とをいつも求めているのですよ。結局は得られるはずのないものを、生涯かかって求めているのですね。正しいものを求めるためには、この誤りをまずさとらなければなりません。老いと病いと死を超えた、他人の苦悩から離れた境地を求めるべきなのです。・・・私のように、仏教の事を知らないものにとっては、すこし難しすぎるのかも知れない。