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欧米から遅れること2カ月、国内でも新型コロナウイルスワクチンの接種が始まりました。接種の状況や、特例承認を取得したファイザーに続くワクチンの開発状況をまとめました。
INDEX
1. 高齢者は4月12日から
2. アストラゼネカとモデルナは春ごろ
3. フリーザー2万台確保
高齢者は4月12日から
2月17日、日本でもようやく新型コロナウイルスワクチンの接種が始まりました。政府は同月14日、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したmRNAワクチン「コミナティ」を特例承認。現在、▽国立病院機構▽地域医療機能推進機構▽労働者健康安全機構(労災病院)――の100医療機関に所属する医療従事者約4万人を対象とした先行接種が行われています。
新型コロナウイルスワクチンの接種は、16歳以上の人が対象。3週間間隔で2回接種する必要があり、接種は筋肉内注射によって行われます。
政府のまとめによると、2月25日午後5時時点での接種実績は、100医療機関で計2万1896回。副反応の疑いがあるとして報告された事例は3件で、報告のあった症状は、▽じんましん(1件)▽冷感・悪寒戦慄(1件)▽脱力(手足が上がらない)、発熱(1件)――です。死亡やアナフィラキシーの報告はありません。
3月中に最大266万回分あまりを確保
日本政府は1月20日、ファイザーと年内に約1億4400万回分(約7200万人分)の供給を受けることで正式に契約。昨年7月の基本合意では「21年上半期に1億2000万回分」でしたが、正式契約では供給量を2400万回分上乗せした一方、供給スケジュールは見えづらくなりました。
ワクチンの供給は順次行われることから、政府は(1)国立病院機構などの医療従事者への先行接種=4万人(2)それ以外の医療機関の医療従事者=約370万人(3)65歳以上の高齢者=約3600万人(4)基礎疾患のある人=約820万人・高齢者施設などの職員=約200万人――の順に接種を進める方針。16歳以上の一般の人が接種できるようになるのはその後です。
2月17日にスタートしたのは(1)で、3月中旬をめどに(2)の人たちへの接種が始まる見通し。(3)については、4月12日に一部地域で始まり、同月26日の週にはすべての市町村にワクチンを配送する計画です。
ワクチンの需給は世界的に逼迫しており、供給に遅れが出ているEU(欧州連合)では、域外へのワクチンの輸出に事前申告と許可の取得を義務付けました。国内の接種スケジュールも供給に大きく左右され、予断を許さない状況が続きます。政府は3月中に44万3625バイアル(1バイアル5回接種なら約222万回分、6回接種なら約266万回分)あまりの確保を見込んでおり、5月上旬からファイザーの生産力に応じて供給量が増加していくと見通しています。
優先接種の対象となる基礎疾患は、▽慢性の呼吸器疾患▽慢性の心臓病▽慢性の腎臓病▽糖尿病▽血液疾患▽免疫の機能が低下する疾患――など。妊婦については、ワクチンの安全性・有効性に関するデータが不足しているため、現時点では優先接種の対象に含まれていません。
アストラゼネカとモデルナは春ごろ
日本政府はファイザーのほか、米モデルナからmRNAワクチン5000万回分(2500万人分)、英アストラゼネカからウイルスベクターワクチン1億2000万回分(6000万人分)の供給を受ける契約を結んでいます。
アストラゼネカは2月5日、特例承認を求めて厚生労働省に承認申請を行いました。申請データは海外でのP3試験の中間解析結果が中心で、日本で行ったP1/2試験のデータは3月中には提出する予定といいます。順調にいけば、春ごろに承認される見込みです。
日本向けのワクチン原液は、海外からの輸入に加え、JCRファーマによる国内製造によって調達。国内での製剤化などは、第一三共、第一三共バイオテック、MeijiSeikaファルマ、KMバイオロジクスが担います。
モデルナのワクチンは、武田薬品工業が国内での開発と流通を担当することになっており、1月21日から国内でP1/2試験を実施中。武田薬品は、米ノババックスが開発した組換えタンパクワクチンも国内で生産・供給する予定で、2月24日にP1/2試験を始めました。モデルナのワクチンは今年前半に供給を始める予定で、ノババックスのワクチンは今年後半の供給開始を目指すとしています。
国内ではこのほか、アンジェスがP2/3試験を行っていて、ヤンセンファーマや塩野義製薬も初期の臨床試験を実施中。KMバイオロジクスや第一三共、IDファーマも、今春にかけて臨床試験を開始する予定です。
ワクチンの開発は感染状況にも左右され、有効なワクチンの接種が始まれば、特に遅れをとっている日本勢は臨床試験の実施が難しくなる可能性があります。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は昨年9月に発表した指針で、海外で発症予防効果が確認されたワクチンと比較することで有効性を評価できる可能性に言及。海外での大規模臨床試験の実施も視野に入れる必要があり、国産ワクチンの実用化はまだはっきりと見通すことはできません。
生産体制を整備
開発と並行して、生産体制の整備も進められています。政府は2020年度の第2次補正予算に、生産設備などの費用を補助する「ワクチン生産体制等緊急整備基金」として1377億円を計上。昨年の第1次公募では、▽アストラゼネカ▽アンジェス▽塩野義製薬▽KMバイオロジクス▽第一三共▽武田薬品工業――の6社に総額900億円あまりが助成されました。
日本勢で開発が先行するアンジェスは、タカラバイオなどの参画を得て生産体制を構築。塩野義は、アピとその子会社であるUNIGENと協力し、21年度末までに年間3500万人分の生産体制を整備することを目指しています。23年度の実用化を目指しているKMバイオロジクスも、21年度末までに半年で3500万回分を生産できる体制を整備中。武田薬品は、ノババックスから技術移転を受けて国内生産することになっており、年間2億5000万回分以上の生産能力を構築するとしています。
フリーザー2万台確保
新型コロナウイルワクチンの接種は、予防接種法に基づく「臨時接種」の特例として、国の指示の下、都道府県が協力し、市町村が主体となって実施。接種費用は国が全額負担し、接種は原則として住民票のある市町村で受けることになります。接種の期間は来年2月末まで。自治体では現在、高齢者への接種開始に向け、接種会場の確保や対象者への通知といった準備が急ピッチで進められています。
国はワクチンの保管に必要となるフリーザーを2万台(ファイザーのワクチンに使うマイナス75度のものを1万台、モデルナのワクチンに使うマイナス20度のものを1万台)確保。1月27日には川崎市で集合接種を想定した訓練を行いました。
解凍後5日で使い切る
ファイザーのワクチンはドライアイス入りの保冷ボックで保管することもできますが、10日程度が限界といいます。解凍後は5日で使い切らなければならず、綿密に計画しなければ限られたワクチンを無駄にすることになりかねません。
複数のワクチンが国内で使用できるようになれば、それぞれのワクチンの特性に応じた管理や接種体制が必要になります。国は、1つの接種会場で取り扱うワクチンは原則1種類とし、やむを得ず複数のワクチンを扱う場合も曜日によって明確に区分するなどの対応を要請しています。医療機関や接種対象者が混乱しないよう、入念な準備と周知が求められます。
(前田雄樹)
(公開:2021年1月14日/最終更新:2021年2月26日)
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