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書評 しょひょう : 津上俊哉『「米中経済戦争」の内実を読み解く』(PHP新書)

2017-07-19 09:18:21 | 政治

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 中国の地方債務が激増して政府債務残高を超えるだろう
   無造作に借金を重ねてきたため金融の大爆発は回避できまい

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津上俊哉『「米中経済戦争」の内実を読み解く』(PHP新書)
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 中国の財務が破綻していることは世界の経済専門家でしっかりした目を持っている人なら、公表されている数字からだけでも読み解ける。

 米国が恐れるのは「中国が保有する米国債を市場で売却されたらたいへんなことになる」という、まことしやかな恐怖論、

これを「経済核爆弾」と言うのだが、評者(宮崎)も、前々から「おそるに足りず」と発言してきた。

 

すでにこの資産を担保に中国は外貨を借りているからだ。

 著者の津上氏は、「中国で中央財政の赤字が急増」している実態に格段に留意し、次のように論を展開する。

 「短期の崩壊は考えられないが、長期の見通しは悲観的」である、と。

  実際に民間における経済活動で、新商売を発明し、実践し、その「消費、サービスの領域では新しいIT技術、シェアリングエコノミーといった新しいビジネスモデルを使った私営企業中心の『ニューエコノミー』が急速に成長している。

この分野では、既に日本は凌駕されている」という分析には賛成である。

 アリババの通信販売の躍進を身よ。バイクシェア、空車手配など、末端では急速にスマホが中国社会を変えており、庶民はじつに敏感。

だから架空通貨ビットコインが、中国で世界の九割も買われるのだ。

 ところが「一方、長厚重大、原料素材といった領域では、国有企業が中心の『オールドエコノミー』が投資バブルの産んだ過剰な設備や負債

を抱えて著しい苦境に陥っており、リストラは必須である」という。

この分析はチャイナウォッチャーの間にほぼ共通の認識である。

 深刻な、というより驚くべき数字が次にでてくる。
 過度の設備投資、不動産への投機、くわえて中国政府のインフラ投資のツケである。

「2009年から2016年までの八年間に行われた固定資産投資の累計額は320兆元。

これが2018年第一四半期までには400兆元に達するだろう。日本円に換算すれば約68OO兆円に相当する

気の遠くなるような数字だ」。

 無謀な不動産投資を拡大してきたのは地方政府である。しかもシャドーバンキングからカネを融資して貰って、気がつけば「サラ金多重債務者」となっていた。

 中央政府は省政府に対して、市ベル以下の債務を、省政府が保障する「地方債」の発行で補えとしたのだ。
 禁じ手だった地方政府債がバカスカ発行された。

 その結果、何が起きたかと言えば、「2015年は5-12月の八ケ月で3兆6000億元、2016年は五兆元、2017円前半には国債の発行残高を上回るだろう。そうなると、もはや『第二財政』のイメージ」という。

 中国の経済誌さえ、2015年末に地方債務は35兆元と算定している。邦貨換算で425兆円になる。

 数年前に楼偉継財務相(当時)自身が公式に290兆円と認めたことがあるが、評者らは地方債務の合計を340兆円以上と推計してきた。
いまやその最悪数字も超えているのだ。

 恐ろしい破綻が迫っている。

不動産場バルの崩壊は秒読みだが、その前後に中国発の金融恐慌の足音が聞こえてこないか。

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