「なごり」
油を注ぎライターの火 カチカチと光る
ライターも油きれ灯らない先程の火が
最後の煙草の灯火だった
寒いと煙を吐きながら
捜している記憶の其処に
引き出しにマッチ
見た記憶辿り捜している
何処だったのだろう
曖昧な記憶
確かに有る引き出し
かき混ぜ捜す何処
捜しあぐねて煙草の火も消えた
フイルターまで吸ってむせた
咽て思い出が脳裏に僅か浮かんだ
花火・・・・
あの子が呟いた言葉
花火にライターは似合わないからと
浴衣の袂から取り出したマッチ箱
おぼろげに思い出が蘇る僅かな覚醒
此処に置いて行くねと笑い言う言葉
此れ私の分身の一本と残した線香花火
私と思って寂しくなったら思い出して
の言葉だったかな・・・
あれから何処に逢わない逢えない
何処かに置き忘れていた心
棚の上に残った夏の残り模様
見つけた線香花火とマッチ
箱の中に一本のマッチ棒
身体を温めるか心を暖めるか
迷うのは何故だろう
ストーブに火を灯しその火で
線香花火に火を灯そうと思う
自然な法則であるベストな選択
誰でも考え行動するだろう
マッチと線香花火を持って
小雪舞う庭に出た寒くはないと思った
線香花火に一本のマッチ棒
箱に擦り灯る火で線香花火に
命を与えた夏の残された命に
パチ・・・パチ・・・と飛ぶ赤い火
雪舞う中で跳ねている綺麗だね
呟いていた・・・傍に誰かが居るように
暖かく感じていた僅かな時
雪舞う中で夏の君に逢った
綺麗ねと耳元で囁いている
何処からか声を聞いた
儚い輝き綺麗だね
吐息と共に呟いていた!