内分泌代謝内科 備忘録

無症候 COVID-19 に左室血栓を認めた症例

COVID-19 発症後に左室血栓を認めた症例
Ann Intern Med 2023. https://doi.org/10.7326/aimcc.2022.1272

左室血栓は、重度の左室機能障害が基礎にあるのがふつうである。本症例報告では、もともと健康な人の機能的に正常な心臓で、無症状の COVID-19 によって引き起こされた孤立性左室血栓の最初の症例を示す。

腹痛を訴える 30 歳の生来健康な男性が、ウイルス感染による症状はなかったものの、PCR によって COVID-19 と診断された。

胸部および腹部の CT 検査で脾臓梗塞と左室充満欠損が認められた(図 1A)。経胸壁心エコーでは、心機能は正常であったが、左室に 2.3×2.3 cm の可動性の腫瘤が認められた(図 1B および C;ビデオ 1)。

図 1: CTA と経胸壁心臓エコー
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2022.1272#F1

致命的な塞栓を防ぐために緊急手術が行われ、2 cm の腫瘤が 2 本の異常な索を介して中隔海綿に付着していることが判明した。病理所見では腫瘍を伴わない炎症細胞と混在した組織化フィブリンが認められ、炎症により誘発された急性発症血栓と診断した(図2)。

図 2: 病理所見
https://www.acpjournals.org/na101/home/literatum/publisher/acp/journals/content/aimcc/2023/aimcc.2023.2.issue-9/aimcc.2022.1272/20230918/images/large/221272_ff2.jpeg

血栓の原因は、病理所見、臨床症状、凝固異常を認めないこと、他に病因となるものがないことから、COVID-19 が最も疑わしかった。一般的な左室血栓治療に関する限られたエビデンスとガイドラインに基づいてヘパリン投与を開始し、その後 6 ヵ月間アピキサバン内服を継続した。

6 ヵ月後の心エコー図(図 1E および F)およびCTスキャン(図1 D)では、血栓は消失していた。

大規模な集団調査において、COVID-19 は高い血栓症リスクと関連していることが報告されている。今回、著者らは基礎疾患がなく機能的に正常な心臓において、無症候 COVID-19 が左室血栓を来たした症例を報告した。この症例は COVID-19 が著しく血栓を促進することを示している。症候性 COVID-19 では,迅速かつ慎重な心臓のワークアップが不可欠であり,塞栓の有害な影響を防ぐために迅速な介入を行うべきである。

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2022.1272
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