インフルエンザワクチンの心血管イベントの二次予防効果を検討した多施設プラセボ対照ランダム化比較試験 (IMAI 試験)
Circulation 2021; 144: 1476-1484
疫学研究からはインフルエンザ罹患は心血管疾患の発症リスクと関連することが示されている。また、小規模な臨床試験では、心血管疾患の高リスク患者に対するインフルエンザワクチン接種は心血管イベントのリスクを減らすことが示されている。
そこで、著者らはより大規模なプラセボ対照ランダム化比較試験でインフルエンザワクチンによる心血管イベントの二次予防効果を確認することを目的とした。
対象は 18歳以上の心筋梗塞後 (99.7%)、経皮的冠動脈インターベンション後または75歳以上の安定狭心症患者 (0.3%) とした。12ヶ月以内にインフルエンザワクチンを接種した者は除外したが、試験中に被験者が自主的にインフルエンザワクチン接種を受けることは可とした。
被験者は 1:1 の割合でプラセボ接種群またはインフルエンザワクチン接種群に割り付けられ、心筋梗塞発症早期にインフルエンザワクチンまたは生理食塩水を接種された。
主要評価項目は 12か月後の複合心血管イベント (全死亡、心筋梗塞、ステント内血栓) とした。副次評価項目は、全死亡、心血管死、心筋梗塞、ステント内血栓とした。
COVID-19 のパンデミックのため、試験は予定せれていたサンプルサイズに達する前に終了した。2571名の被験者のうち、1290名がワクチン群に、1281名プラセボ群に割り付けられた。解析は修正 ITT で行い、ワクチン群 1272名、プラセボ群 1260名を解析対象とした。
複合心血管イベントはワクチン群で 67例 (5.3%)、プラセボ群で91例 (7.2%) 認めた (ハザード比 0.72, 95%信頼区間 0.52-0.99, P = 0.04) 。
また全死亡の有意な低下 (2.9% V.S. 4.9%, ハザード比 0.59, 95%信頼区間 0.39-0.89, P = 0.010) 、心血管死の有意な低下 (2.7% V.S. 4.5%, ハザード比 0.59, 95%信頼区間 0.39-0.90, P = 0.014) を認めた。心筋梗塞の発症頻度については有意差を認めなかった (2.0% V.S. 2.4%, ハザード比 0.86, 95%信頼区間 0.50-1.46, P = 0.57) 。
今回の試験では被験者が自発的にインフルエンザワクチンを接種することは可能としていた。結果的にはプラセボ群の 13.2%がワクチンを接種した。このことはワクチン群とプラセボ群の差を小さくする方向にはたらく。
全死亡と心血管死が絶対リスクでおよそ 2%低下するのはインパクトが大きい。50人に接種すれば 1人の命を救うことができる。
虚血性心疾患の既往がある患者には積極的にインフルエンザワクチンを接種したい。
元論文
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057042