さやえんどう21

思いついたことを載せています。

小説「扉は閉ざされたまま」の碓氷優佳さん

2014年04月22日 | 本の感想


「扉は閉ざされたまま」石持浅海著を読んでみました。ラジオで面白いとの紹介があったので買ってみました。「古畑任三郎」のように、始めから密室殺人の犯人が分かっていてそれを理詰めで謎解きをしていくというストーリーです。犯人である伏見と優佳の頭脳戦が面白くベージをめくる手の勢いがとまりませんでした。

 


芥川龍之介 「カルメン」を読んでみました

2014年03月25日 | 本の感想


(話からイメージして描いてみました。)

「カルメン」芥川龍之介著 初出版 文藝春秋 1926

(話の内容)
主人公である「僕」と友人のTが帝国劇場で「カルメン」を観覧している場面から話が始まり、2人ともカルメン扮するロシア人女優イイナをお目当てにして帝劇に訪れていた。ところが舞台に現れたのはイイナではなく貧相な別の女優であった。イイナが舞台を休んでいる理由は、イイナを(講演が行なわれている東京まで)追いかけてきた某帝国の侯爵が、イイナが既に別の男(アメリカ人商人)の世話になっている事に絶望し、昨晩自殺をしてしまったからだと友人Tは話す。
ところが2人がしばらく観覧をしていると、客席に派手ないでたちのイイナが複数の連れと共に現れる。おそらくアメリカ人商人の旦那もその中におり、イイナは愉快そうにしていた。
それから2,3日後、「僕」は友人Tから、「イイナが、あの晩以来左手の薬指に包帯をしていたのに気付いたかい?」と訊かれる。イリナは皿を壁に投げつけ、その欠けらをカスタネットがわりにして血が出るのも構わずに踊ったと友人Tは云う。2人は表には出来ないイイナの深い哀しみを思う。

(心情変化について)
この話は心情変化に着目して読むと面白いと思いました。メリメの「カルメン」を読んでからだと尚更面白いと思います。
話の展開の中で2人のイイナへの気持ちは、「憧れ→失望と怒り→哀れみ 」へと変化していきます。最後の哀れみはイイナへのより一層の愛おしさに発展していくと思いますが。
これはメリメの「カルメン」も伍長であるドン-ホセのカルメンに対する気持ちの変化と同じ変遷を辿っています。最初カルメンに対する憧れから始まり、カルメンの心が闘牛士にいってからは絶望と怒りにかわり、カルメンを殺してしまったあと哀しみと愛おしさがホセの胸を激しく突き上げます。2作品とも最後は逆転的カタルシスをむかえます。
芥川作品の心情変化の手法については、彼の多くの短編作品の中に随所でうかがわれます。例えば「トロッコ」でもトロッコに乗り込んだ少年たちが、トロッコが遠くへ行くにつれて気持ちが、楽しい→不安に変化していく様子が情景描写とともに面白く書かれています。


小山田浩子著 「穴」 を読んでみました

2014年02月28日 | 本の感想

「穴」 小山田浩子 著 2014年、第150回芥川龍之介賞受賞作品

夫の転勤にともない、夫の実家のとなりにすむことになった妻がひと夏のあいだに体験した不思議な話です。

主人公のあさひが謎の黒い獣を追いかけるうちに穴に落ちて、それから彼女は奇妙な体験をします。

作者が女性ということもあり、女性ならではの視点で主人公のあさひの働くこと働かないことについての気持ちや考えや、女としての役割等がよく描写されていると思いました。

男の自分が読むと、作者の感性にただただ感心します。「ああ、女性はそのように考えるのかっ」て勉強になります。
また、文章が余計な修飾語を多用しない「~た。」で終る簡潔な短文の繰り返しなので、テンポよく読めるのも良いと思います。芥川龍之介の文調をよく意識しているのだと思います。 ただ芥川作品と比べてしまうと少し物足りなさを感じます。例えば1920年 大正9年の芥川作品「南京の基督」は極貧の春を売る梅毒に罹ってしまう少女の話であり、「羅生門」では死体の髪の毛を引き抜き、それを売ることによってギリギリ糊口を凌いでいる老婆が登場します。いずれも生きていく為にはそうせざるを得ない極限状況の中での人間性が生々しく書かれています。ジャンルは違えども、もう少し登場キャラに人間性や個性を感じられたらと思ってしまいました。

ところでドラマ化するなら個人的には竹内結子さん主演でやってほしいですね。

アニメ化するなら日常の細かなことや心理の微細を描かせたらこの人の右に出る人はいないジブリの高畑監督に作品をつくってほしいですね。

声優はこれまた竹内結子さんがいいと思っています。

竹内結子さんがいいと思う理由は この小説が黄泉返り的内容でもあるからです。「今、会いに行きます」「黄泉がえり」の映画では感動させていただきましたので。

細かい心理描写はそぎ落とさなければなりませんが、話の筋だけを抜き取って「世にも奇妙な物語」としてショートドラマをつくってみても面白いと思います。

この本にある別の作品、子どもがいない40代夫婦の話である「いたちなく」 こちらの作品も読んだあとなんとも言えない余韻が残りました。とてもいい作品でした。





 

3/3後記 カミさん(毒嫁さん)の感想です。

とても厳しい評価でした。 「つまらなすぎる。どうしてこれが芥川賞なのか理解出来ない。 本代と時間が勿体ない。内容に奥深さや読んだ後の余韻がまるでない。」 との事でした。ホント何に対しても評価が厳しい人です。他の作品についてもあまり褒めたところを見たことがありません。 しかし、妻は速読で読むタイプで例えるなら、特急列車で目的地に向うタイプの人です。 自分は鈍行列車でのんびり思索に耽りながら旅するタイプ。 自分は読みながら何度も立ち止まり、前記に記したような自分なりの仕立て、構成などをして楽しみました。例えば添付したイラストも「自分だったらこんな表紙にするのに」って想像したものです。 あの(実際の)表紙はミステリアス感があっていいかもしれませんが地味すぎると思います。「芥川賞受賞」っていう帯がついてなかったら、なかなか本を手にとってみる人はいないのでは?と思います。 ところで小山田さんの文章から自分の中に投影された情景はなぜか三丁目の夕日のような淡いセピア色のノスタルジックな世界でした。何処からともなく子供達がわさわさ出て来るシーンが心地よい余韻として自分の中に色濃く残っています。