Set me free!!!

storytellerです。本当に短い物語を書いたり、思い出話や日常の諸々について綴ります。

十人の男友達

2024-05-31 09:45:02 | 物語
友人に「あなたって恋愛体質ね」と言われた。そうなんだろうか。わたしはただ男の人にときめいて、一緒に濃密な時間を過ごしたいだけ。 若い頃から彼女はたくさん恋をした。傷つけたり傷つけられたり、危ない橋を渡ったり、沼に落ちそうになったり、つきまとわれる恐怖を味わったり。 それでも懲りずに恋をし続け、結婚後も夫に気づかれないように道ならぬ恋を楽しんだ。そして、離婚。 子ども達もそれぞれに自立し、一人 . . . 本文を読む

そして彼女は

2024-05-24 11:46:54 | 物語
★この物語は、それは一枚の名刺から始まった (5/17/2024) の続編である。★ 彼女が入社後最初に関わったのは、遥か遠くにある国の諜報機関から依頼を受けた業務であった。 その国のある作家の小説が何者かによって日本語に翻訳され、その翻訳本に暗号が隠されているという情報を、かの国の諜報部員が入手した。その内容が国家機密に関係する可能性が高いため、表向きは探偵事務所だが裏では諜報活動を行ってい . . . 本文を読む

それは一枚の名刺から始まった

2024-05-17 16:41:38 | 物語
読書が趣味の彼女は、週に一度近所の公共図書館に足を運ぶ。たいてい一度に数冊借りて、面白いと思えば最後まで読み、合わないと思った本は途中で止める。なにより無料というのが、節約を心がける彼女にとってありがたい。 唯一の難点は、すべての本には大勢の人の手垢がついている、というところ。コーヒーや紅茶の染みならまだいいが、ひどく汚らしい、ぎょっとするような染みもある。そういうときはそこのページを触るのが嫌 . . . 本文を読む

愛の逃避行

2024-04-29 12:10:24 | 物語
みなさんにご報告いたします。結婚することになりました! ここにたどり着くまで、長い道のりでした。 友人の紹介で何度かお見合いしたり、複数のマッチングアプリに登録するなどして、地道に出会いを求めてきましたが、どれも良い結果に繋がらず、わたしには縁がないのだろうか、と諦めかけていたところに現れたのが、彼です。 そうですね。まずは、その人との出会いについてお話いたしましょう。 その人とは、ネット . . . 本文を読む

深い森の中で

2024-04-18 06:03:13 | 物語
4日に一度、彼女はその深い森へと入っていく。地元の人々に「魔物が住む森」と恐れられているところだ。 その森から出てきた彼女の肌は一層輝き、瑞々しい美しさに溢れている。そんな彼女の姿を見て、人々は「あの森には若返り効果があるに違いない」と噂をするようになった。 魔物伝説を恐れない何人かの者が、彼女の後を追っていこうとしたが、みんな途中で彼女の姿を見失ってしまった。まるで大木に吸い込まれたかのよう . . . 本文を読む

落とす女と捕まえる男

2024-04-10 07:39:12 | 物語
自分が不器用でよくドジを踏むことは自覚しているが、20代の一時期に交際していた外国人男性にこう言われたことがある。 "You have butterfingers!" 「きみはよく物を落とすね。」 という意味だ。 バターのついた指で物を持てば、つるつるっと滑って落としてしまう。なるほど、言い得て妙だ、と感心しながらも、自分の不器用さを思い知らされてちょっと悲しくなった。 その男性と別れた . . . 本文を読む

たどり着けない

2024-04-08 09:41:19 | 物語
発車間際の電車に飛び乗った。その車両には乗客は彼女一人だけ。いくら平日の昼間だといっても、少なすぎやしないだろうか。いぶかしく思い、次の車両へと移る。ところが、その車両にも乗客は誰一人いない。その次の車両も、またその次の車両も、誰一人乗っていないのだ。不安になった彼女は車掌室へと向かう。ところが、そこにいるはずの車掌も、いない。 必死に走ってなんとか間に合った。汗をぬぐいながら窓の外を見ると、見 . . . 本文を読む

後ろ姿

2024-04-05 06:52:38 | 物語
わたしは外を歩くのが好きだ。思い立ったらぶらっといろんなところへ出かけて行く。 ある日気づいた。出かける先々で同じ人をよく見かけることに。その人はおそらくわたしの知り合いではないと思う。おそらく、というのは、その人の後ろ姿しか見たことがないからだ。 山道でも、海辺でも、遊歩道でも、川沿いのサイクリングロードでも、街中でも、ショッピングモールでも。いつも、その人はわたしの少し前を歩いている。 . . . 本文を読む