青い夜だった。
いつもよりも滲んだように青が広がる夜で、だから、いつもよりも月が黄色く見えていた。
星はなくて、そういう煌めいたものは滲んだ青の中に溶け込んでいて、だから、滲んだ黄色もいつもより輝いて見えたんだ。
今夜の空は閉じている。向こうへと続く道が閉じられている。
そのことが、何故かやけに僕には心地よくて、窓から背伸びをするように体を乗り出しても、今夜は怖くない。
湖も、その向こうの山も、みんな青く滲んできれいだった。
いつもよりも滲んだように青が広がる夜で、だから、いつもよりも月が黄色く見えていた。
星はなくて、そういう煌めいたものは滲んだ青の中に溶け込んでいて、だから、滲んだ黄色もいつもより輝いて見えたんだ。
今夜の空は閉じている。向こうへと続く道が閉じられている。
そのことが、何故かやけに僕には心地よくて、窓から背伸びをするように体を乗り出しても、今夜は怖くない。
湖も、その向こうの山も、みんな青く滲んできれいだった。
ぼんやりと輪郭のない僕と、夜の青が混ざって、僕も夜の一部になった。湖面の移ろいが僕の中に、森の雫が僕の中に。
まどろむ青に、パンを焼く匂いが朝のさえずりに運ばれてくる。
まだ手つかずの光がパンの匂いにほだされて、やわらかに笑った。
香ばしい匂いが夜の青を塗り替えていく。僕の滲んだ輪郭が、少しずつ光に晒され、やがて白い朝の中に立っていた。
行ってしまった夜の青を、僕は僕の胸に滲ませた。もう、あの夜は僕の一部だから。誰も知らない、僕の大切な青。
空の道が開く。景色が輪郭を取り戻していく。
僕はコーヒーを淹れに、窓を閉めた。
まどろむ青に、パンを焼く匂いが朝のさえずりに運ばれてくる。
まだ手つかずの光がパンの匂いにほだされて、やわらかに笑った。
香ばしい匂いが夜の青を塗り替えていく。僕の滲んだ輪郭が、少しずつ光に晒され、やがて白い朝の中に立っていた。
行ってしまった夜の青を、僕は僕の胸に滲ませた。もう、あの夜は僕の一部だから。誰も知らない、僕の大切な青。
空の道が開く。景色が輪郭を取り戻していく。
僕はコーヒーを淹れに、窓を閉めた。